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岩田明子氏の目を通すと「安倍外交」の貧困が礼賛にすり替わってしまう不思議 永田町の裏を読む
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/312759
2022/10/13 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
よもやトランプ前大統領もシンゾーが(金正恩委員長に)電話1本かけられるチャンネルを持っていないとは思っていなかったに違いない(C)JMPA
誰よりも安倍晋三元首相から信頼──という以上に寵愛と言っていいほどの親密な関係を築いた元NHK政治部の岩田明子記者が「安倍晋三秘録」と題して「文芸春秋」に連載を始めたので、一体どんな秘話が出てくるのかと期待して読んだが、早くも11月号の第2回で「もう勘弁してよ」という感じになってきた。
この回は、安倍がいかに「テタテ(通訳だけを交えた首脳同士の1対1の会談)」を最大活用して華麗なる外交を繰り広げたかの賛美に終始していて、その中の多くは安倍がいかにしてトランプ前大統領に食い入って米朝首脳会談を実現させ、それを通じて拉致問題の解決をトランプの口から金正恩に伝えてもらうよう腐心したかという話で占められている。
確かにトランプはハノイでの米朝首脳会談でそれを持ち出し、直後に安倍に電話をして「約束通り拉致問題に言及した。(後は)シンゾーから金正恩に電話をして(直接交渉して)くれ」と助言した。だが、その後、安倍がどのルートから連絡を試みても、金正恩にはつながらなかった、と岩田は書いている。
安倍は拉致被害者の方々の前に出ると「最終的には私が直接、条件をつけずに金正恩委員長と向き合って」と決まり文句のように繰り返したが、現実には、向き合うどころか電話1本かけられるチャンネルも持っておらず、それを糊塗するために、この問題に何の関心もないトランプに無理やり頼み込んで米朝間の議題に持ち出してもらった。
トランプはもちろん自分は補助的な役目だと思っているから、「言うだけは言っておいたから後は直接どうぞ」という態度で、まさかシンゾーが平壌に電話1本かけられない関係であるとはゆめゆめ思わなかったに違いない。
これははっきり言って国辱的な外交の貧困の逸話なのである。それが岩田にかかると、安倍がトランプに食い込むのがいかに巧みだったかという話にすり替わってしまうのだからビックリ仰天である。
テタテがお得意であるならば、安倍はもちろん菅も岸田もその表現を踏襲している「最重要課題」である拉致問題での日朝首脳会談でこそそれを実現しなければならなかったのに、そうならなかったのはなぜなのか。
そこから「安倍外交」の恐るべき貧困の総括は始まらなければならないのだが、岩田の頭はデングリ返ってしまっている。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
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