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「安倍さんの後継」覚悟を決めた高市早苗が仕掛けるポスト岸田闘争
https://friday.kodansha.co.jp/article/267357
2022年10月05日 FRIDAYデジタル
ついに覚悟を決めた…!?(AFLO)
10月3日(月)、臨時国会が始まった。12月10日まで69日間の予定で、物価高騰や円安対策の第2次補正予算案と、衆院選での「10増10減」を導入する公選法改正案などが審議される予定だ。しかし永田町の焦点は、9月27日に行われた安倍晋三元総理の国葬によって「いよいよ政局が動き出した」点に向けられている。
「国葬で最も株を上げたのが、会場から拍手が沸き起こるほど感動的な弔辞を読んだ菅義偉元総理です。一時は自らの勉強会を立ち上げる意欲を示し、菅グループ、二階派、森山派等を糾合した「菅派」を将来的に結成する観測も出ていた菅氏ですが、安倍元総理銃撃事件を受けて先送りにしていました。
しかし、国葬の弔辞で「安倍後継」が強く印象づけられました。山縣有朋の句は、5月25日に亡くなった故・葛西敬之JR東海名誉会長に対して安倍元総理本人がフェイスブックに投稿したものと同じ内容で、そのインパクトは強く、非主流派を中心に自民党内で菅氏の復権待望論が高まっています」(永田町に詳しい政治ジャーナリスト)
岸田政権の主流をなすのは、岸田派(宏池会)、麻生派(志公会)、谷垣グループ(有隣会)に加えて茂木派(平成研)で、二階派(志帥会)、菅グループ、石破グループ(水月会)は冷や飯を食らってきた。これに対して、安倍元総理が率いた清和会は微妙な立ち位置。8月の内閣改造人事で岸田総理と緊張関係に立つ局面もあったが、安倍元総理の存在感と自民党最大となる97人という数の大きさで一定の影響力を保ってきた。
その清和会が領袖を失い、混迷を深めている。現時点では、塩谷立会長代理(元文科大臣)が会長に昇格して「塩谷派」に衣替えし、集団合議体制にする方向で調整が進んでいる。しかし、塩谷会長の「鼎の軽重」を問う動きが出てくると、清和会お家芸とも言える分裂劇が繰り返され、いずれは他派閥による草刈場になるのではないかという憶測も飛び交っている。
「塩谷氏は2021年秋の総選挙で、小選挙区(静岡8区)で落選し比例復活しており、求心力は強くありません。旧統一教会問題で幹部の下村博文元文科大臣や萩生田光一政調会長の動きが封じられる一方で、西村康稔経産大臣では派がまとまらないという声も強い。
そこで注目されているのが、世耕弘成参院幹事長と松野博一官房長官です。この二人がどう動くか。特に松野官房長官は岸田政権の黒子に撤して地味なイメージをキープしていますが、実は『能ある鷹は爪を隠す』の典型で、清和会の将来を占う上で要注目の存在です」(前出・政治ジャーナリスト)
もう一人の注目株が、高市早苗経済安保担当大臣(無派閥)だ。9月28日のBSプライムニュースで、大臣就任日に岸田総理から「中国という言葉を出さないでくれ。来年の通常国会にセキュリティ・クリアランス(機密情報を取り扱う適格性審査)を入れた経済安全保障推進法を提出するとは口が裂けても言わないでくれ」と釘を差されたことを唐突に暴露し、永田町は騒然となった。
「高市大臣は、かねてより経済安保政策に心血を注いできたので、岸田文雄総理からの中途半端な指示が気に入らないということもありますが、岸田政権の「中国配慮」姿勢に公然と反旗を翻したのは、国葬を機に「安倍元総理を継承するのは自分だ」と肝が座ったからでしょう。岸田総理、林芳正外務大臣、浜田靖一防衛大臣を「親中弱腰3人組」と揶揄する声も上がる中での今回の発言は、高市流のいわば「宣戦布告」と言えるかも知れません」(前出・政治ジャーナリスト)
「旧統一教会問題」と「国葬実施」で国民の不興を買った岸田政権。毎日新聞9月調査で29%に下落する等、内閣支持率が危険水域に突入しつつある中、臨時国会で日本政治の大きな流れが変わろうとしている。来春の統一地方選を前に連合との関係を修復すべく、日本維新の会が国会対策で立憲民主党と共同歩調を取る姿勢に転じたのも一つだが、日本を取り巻く国際政治と地政学リスクの激変も大きな影響を及ぼしている。
国際情勢に詳しい前デンマーク大使館上席戦略担当官の北島純教授(社会構想大学院大学)はこう指摘する。
「10月16日に開幕する第20回共産党大会で習近平総書記(国家主席)が続投することは確実視されています。ロシアによるウクライナ侵攻は、核保有国による武力侵攻に対して他国が直接軍事介入することがどれだけ困難であるかという現実を見せつけました。ロシアに対する経済制裁の実効性とプーチン政権の帰趨を睨みつつ、習近平総書記が3期目の任期である2027年までに台湾に侵攻するという「台湾有事」の発生可能性はかなり高まっていると言えます」
プーチン大統領は9月30日、ウクライナ東南部の占領地域4州をロシア連邦に併合することを一方的に宣言した。2014年のクリミア併合に次ぐ勝手な行為で到底許されるものではないが、これが国際政治の過酷な現実でもある。
「台湾有事が発生した場合、我が国のサプライチェーンが崩壊の危機に立たされ、原油等の輸入コストが跳ね上がって国民経済が奈落の底に叩き落とされる可能性があります。岸田総理は国民の厳しい声に「真摯に、謙虚に、丁寧に」向き合う姿勢を見せようとしていますが、冷徹な国際政治の現実と、脆弱な日本の安全保障の実態に対しても、毅然かつ断固として対峙していく必要があります」(前出・北島教授)
プーチン大統領は「小型戦術核」の使用をほのめかす脅しもかけている。そのロシアと中国、それに弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の隣国として位置する唯一の国が日本だ。内外で危機に直面する日本の舵取りを岸田総理は行うことができるか。
ポスト岸田には、再登板を期待する声が高まる菅氏や女性初の宰相を目指す高市氏の他に、旧統一教会の被害者救済問題で存在感を見せた河野太郎消費者担当大臣や、自民党幹事長として岸田総理、麻生太郎副総裁等と良好な関係を保つ茂木敏充氏を押す声も挙がっている。この秋の臨時国会では、日本の行く末についての根本的な論戦が期待される。
写真:AFLO
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