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国葬実施は論理的に無理
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2022年9月 9日 植草一秀の『知られざる真実』
岸田首相は
「敬意と弔意を国全体として表す国の公式行事」
として国葬を実施すると言う。
しかし、国民に弔意の表明を求めないという。
むろん弔意を求めても弔意を示さない国民が多数存在する。
国家が国民に対して敬意や弔意を強制することは日本国憲法第19条
「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」
に反する行為。
敬意の表明、弔意の表明を強要することはできない。
憲法違反である。
強要しなくても、すべての国民が自発的に敬意と弔意を表明するなら、
「敬意と弔意を国全体として表す国葬」
実現も夢ではないかも知れない。
しかし、自発的に敬意と弔意を表明する国民がどれだけいるか。
国民が国葬に反対している最大の理由は安倍晋三氏が旧統一協会と極めて深い関わりを有していたことにある。
事件直後、テレビ朝日「報道ステーション」司会者大越健介氏はこう述べた。
「宗教団体への積年の恨みということを供述していますが、なぜその恨みの矛先が一足飛びに安倍元総理に向かったのか。
その理由として、祖父の岸元総理大臣、安倍元総理大臣と宗教団体との関係性を挙げていますけれども、これは全く、到底理解できない中身となっています。
徹底した動機の解明を待ちたいと思います。」
歴史に残る頓珍漢と言ってよいだろう。
山上容疑者は旧統一協会に強い憎しみと恨みを抱いていた。
そして、安倍晋三氏はその旧統一協会と極めて深い関係を有していた。
その関係は安倍晋三氏一人にとどまらない。
祖父の岸信介氏の代から脈々と引き継いだもの。
したがって、旧統一協会に対する恨みと憎しみの感情の矛先が安倍晋三氏に向けられたとしても決して不自然ではない。
「全く、到底理解できない中身」とのコメントの頓珍漢ぶりは突出している。
旧統一協会が日本で宗教法人の認可を受けたとき、その本部は岸信介氏宅隣接地に所在した。
岸信介氏、笹川良一氏、児玉誉士夫氏らが協力して旧統一協会による「国際勝共連合」が創設された。
旧統一協会の1982年の合同結婚式では、
「天を中心とした理想と信念のもとに指導し教育しておられる文鮮明先生を私が心より尊敬する所以であります」
と旧統一協会教祖・文鮮明氏を礼賛する岸信介氏が発したメッセージが読み上げられた。
その旧統一協会とはどのような団体であるか。
自民党は今後、すべての議員と旧統一協会ならびに関連団体との関係を断ち切るとした。
すべての関係を断ち切らなければならない団体。
それが旧統一協会なのだ。
理由は旧統一協会の反社会的活動があまりにも深刻であること。
自民党は旧統一協会を一種の反社会的勢力と認定したと言ってよいだろう。
その問題のある旧統一協会と、自民党のなかでももっとも深い関係を有してきたのが安倍晋三氏だと見られている。
岸田首相は安倍氏と旧統一協会との関係を調査しないとしている。
調査すれば、たちどころに深い癒着関係が明らかになるから忌避するということなのだと思われる。
極めて問題が深刻な旧統一協会ともっとも深い関わりを有すると見られるのが安倍晋三氏。
その安倍晋三氏に対して敬意と弔意を求めても、圧倒的多数が応じないだろう。
そうであるなら、「敬意と弔意を国全体として表すこと」は不可能。
したがって国葬の実施は不可能である。
国葬の定義が「敬意と弔意を国全体として表す国の公式行事」である限り国葬実施は論理的に不可能だ。
弔意を示さない国民を「国全体」から除外するのか。
弔意を示さない国民を除外するなら「国全体」にはならない。
「国民抜きの国」を想定することは憲法の国民主権の原理に反する。
岸田首相は頭を冷やして論理の破綻を見つめるべきだ。
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