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秋葉復興相の政党支部が「義兄のナゾ団体」に600万寄付していた
https://friday.kodansha.co.jp/article/262234
2022年09月02日 FRIDAYデジタル
統一教会との関係も報じられている秋葉復興相(撮影:共同通信社)
かみ合わない質疑応答は、回答者が混乱していることを表していたのかもしれない。
8月26日、東京・霞が関の復興庁で行われた秋葉賢也復興相(60)の会見。記者から「旧統一教会との関係性について、一部週刊誌で報道されたので真偽のほどを」と聞かれた秋葉氏はこう口にした。
「週刊誌、いろいろ書かれておりますんで、どれのことをおっしゃっているのか」
この時点で、秋葉氏と旧統一教会との関係を報じたのは、8月24日発売の『週刊文春』のみ。旧統一教会に限っては「いろいろ書かれて」はいないのだ。「一部週刊誌」と言われて秋葉氏の頭をよぎったのはおそらく、秋葉氏が政治資金から事務所家賃を親族に支払っていたと指摘した本誌記事(8月19日発売)だったと思われる。
「『FRIDAY』が報じた内容は、地元ではよく知られた話でした。ただ、同じ自民党の仲間ということではっきりと口にすることはできなかった。1年ほど前も、あるパーティーの懇談で、県連会長を務めた国会議員が『いかにもあれはまずいよな』と苦笑いすると、周囲もうなずいていた」(自民党宮城県連関係者)
被災地・宮城県から起用された初の復興相をめぐる親族とカネ≠フ疑惑。本誌は前回、秋葉氏の事務所家賃が、秋葉氏の妻や実母に支払われてきた実態を報じた。しかし、秋葉氏にはまだ別の疑惑≠ェある。
「600万円が、17年に実態のない政治団体に支払われている」
端緒は、前出とは別の県連関係者の証言だった。この県連関係者は、秋葉氏が代表を務める政党支部『自民党宮城県第2選挙区支部』の政治資金収支報告書を見ていて、この支出に気づいたという。
収支報告書を確認すると、実際に、同支部が17年2月20日付で、東京・品川区に事務所を置く「政治経済研究所」という団体に対して600万円を寄付した記載があった。一方、東京都選挙管理委員会(都選管)によると、政治経済研究所は政治団体としての届出はあり、「H」という男性が代表を務めているという。
ただ、都選管によれば、この政治団体が設立されたのは17年12月18日。つまり寄付を受けたときには存在していなかったことになる。さらに同団体はわずか2年後の19年12月31日付で解散。約2年間の活動期間中、収入はこの600万円のみだった。実態をつかみかねるこの政治団体に関連し、次のような情報も聞こえてきた。
「秋葉さんの夫人は品川区の出身だったと記憶している」(秋葉氏の元秘書)
同団体の事務所が置かれているのも品川区。そのうえ、同団体代表のH氏の姓と、秋葉氏の妻の旧姓が同じであるということもわかった。同団体は、秋葉氏の妻と関係があるのではないか――。こうした仮説を検証するため、品川区の住所を訪ねた。住宅地にたたずむ築50年の2階建て一軒家からは、高齢の男性が出てきた。
――『FRIDAY』です。
はい。
――失礼ですが、お名前はHさんですか。
私? いや、Kです。
――Hさんとあなたのご関係は?
うん、あれは息子。
――では復興相に起用された秋葉さんの夫人は、あなたの娘さんではないですか。
うん。娘から何度か電話があってね。「いま忙しいから(実家に)行ってらんないよ」なんて(言われた)。
Kさんによると、H氏は秋葉氏の妻の兄なのだという。つまり、H氏は秋葉氏の義兄にあたり、H氏が実家を所在地にして「政治経済研究所」を立ち上げたとみられるのだ。
――H氏は実家を事務所にして、政治経済研究所という政治団体をつくっている。
ふーん、なんだか知らんけど。前に政治のあれを貼っていたけど、はがしたんだよね。
――以前、ここに政治経済研究所の看板を掲げていたのか。
そう。
――H氏がここで活動していたのですか。
Hは別に関係ないんだよね。あまり(実家に)来ないしね。
――H氏が政治団体をつくっていたことを知りませんか。
やっているのかね。俺には関係ねえぜ、全然。
――その政治団体に、秋葉さん側が600万円を寄付している。そのことを知っていますか。
そんなこと、全然わかんないな。気づかなかったな。
活動実態が不透明な義兄の政治団体に、秋葉氏は政治資金から600万円を支払っていたのである。
「政治経済研究所」の住所には、秋葉氏の妻の実家があった
「政治経済研究所」の17年の収支報告書(要旨)によると、確かに、秋葉氏の政党支部から寄付された600万円が収入として計上されていた。一方、18年と19年の収支報告書を見ると、それぞれ約179万円と約108万円が支出されている(17年の支出は0円)。支出の内訳は、人件費、備品・消耗品費、事務所費、組織活動費だが、光熱水費はいずれも0円だった。
支出項目は多岐にわたるが、事務所費ならば大家≠ナあるKさんが事情を知っていてもおかしくはない。
――政治経済研究所は、ここを事務所として使っていた?
事務所なんて使っていないよ、1回も。
――実家を事務所として使ったH氏から事務所代が支払われ、Kさんから領収書を渡していないですか。
事務所なんて使っていないね。(H氏は実家に)正月に来るだけだもん。
――領収書は渡していませんか。
渡していない。
――H氏は選挙活動などをしていましたか。
いや、しない、しない、全然。(秋葉氏は)Hとはあまり気が合わないみたいだね。仲良くなかったよね。
――秋葉さんのために、H氏が選挙活動をしていたことはない?
ないないないない。
――たとえば、秋葉さんの選挙になると、H氏が(秋葉氏の選挙区の)仙台に行くことは。
Hは本当、秋葉のことはあんまり言わないもんね。全然、関係ないですよ。
――秋葉さんのポスターを貼るなどの活動は?
そういうのはないね。(秋葉氏の選挙区とは異なる)東京だから。東京でもって「秋葉をお願いします」なんて言ったことない。言ったって効果ないからさ。
――H氏は、秋葉さん以外の政治家に関わる政治活動もしていなかったですか。
いや、やんないね。(H氏は)政治のことは一切やんないね。
Kさんへの取材のかぎりでは、秋葉氏側が寄付した600万円が適切に使われたようには思えない。そこで、8月26日朝、秋葉氏本人を東京の自宅前で直撃したが、「(質問は)文書でお願いします」と言うのみ。あらためて文書で事実関係を問うと、秋葉事務所から次のような回答があった。
〈ご指摘を受けて選挙区支部(政党支部、引用注)の収支報告書及び領収書を確認したところ、2017年12月20日付の政治経済研究所発行の領収書を確認しました。従いまして、選挙区支部の2017年収支報告書寄附の「H29/2/20」とあるのは「H29/12/20」の誤記でした〉
「当時存在していなかった政治団体に寄付をしたのではないか」という疑問に対する答えが、「事務処理のミスだった」というのだ。本誌は追加で「その領収書のコピーを提供してほしい」と秋葉事務所に申し込んだが、応じることはなかった。
また、義兄が代表を務める政治団体については〈別の政治団体ですので、当該団体にお尋ねください〉と回答している。
義兄の政治団体は、前述したように19年末に解散している。その際、活動に使われなかった約312万円が翌年繰越金として計上されているが、このカネがその後どこに消えたのかもわからない。
政治資金に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授はこう指摘する。
「現在の政治資金規制法では、政治団体が解散したときに、繰越金など資産の処理に関する明確なルールはなく、実質的なブラックボックスになっている。秋葉氏のように親類の政治団体に流した政治資金に関しては、実質的に政治家本人のカネと見なされても不自然ではなく、説明責任を果たすべきです」
政党支部などの活動を支える政治資金は非課税の寄付などで賄われ、公金としての性格が強いとされる。一方、秋葉氏が妻らに支払った事務所家賃を含めれば、秋葉氏の政治資金から親族に流れたのは少なくとも2000万円に上る。
取材・文:宮下直之(ノンフィクションライター)
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