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ヤクザ、右翼、統一教会。反社勢力を利用し続けてきた自民党の自業自得
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2022.08.05 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』 まぐまぐニュース
旧統一教会と所属議員との浅からぬ関係が次々と明らかになり、国民から大きな批判を浴びている自民党。しかし党本部からも関係が取り沙汰されている代議士からも、悪びれる様子は微塵も伝わってこないのが現状です。なぜ自民党と国民の感情との間にここまでの乖離があるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、自民党の「裏面史」を紐解きつつその理由を解説。さらに岸田首相の当問題を巡る一連の対応を批判するとともに、今こそ党総裁として強いリーダーシップを示すべきとの率直な意見を記しています。
反社会的集団を利用してきた自民党の裏面史
次々と、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と関わり合った政治家の具体事例が明るみに出ている。関連団体のイベントに出席したり祝電を送った国会議員がこれだけいますと先手を打って発表した日本維新の会や立憲民主党のケースもあるが、教会との深い関係を漂わせるのは、圧倒的に自民党だ。
平井卓也衆院議員は昨夏、地元・香川で開催されたUPF(天宙平和連合)のイベント「ピースロード」で、実行委員長をつとめた。武田良太衆院議員と山本朋広衆院議員は17年2月、UPFが開いた「世界平和国会議員連合」の総会に出席、韓鶴子総裁から「それぞれ自分の国の氏族メシアになってください」とご託宣を受けた。
ほかにも、細田博之衆院議長、逢沢一郎衆院議員、萩生田光一衆院議員、江島潔参院議員、岸信夫防衛相、二之湯智国家公安委員長、末松信介文部科学相…と数え上げればきりがない。
それでも「統一教会と自民党には、組織的関係はない。個別の調査はしない」と茂木幹事長は言う。
党執行部の決定や承認を経て統一教会となんらかの関係を取り結ぶことを「組織的関係」というのなら、むろんないだろう。自民党の政治には昔からオモテとウラがあり、統一教会はウラの担当だ。統一教会の組織票を自民党が割り振っていたとしたら、それはウラの動きといえよう。
統一教会票といっても、せいぜい10万票ていどとみられる。だが、この票の強みは教会本部の号令一下、確実に決められた候補者に流すことができるところだ。その割り振りを安倍元首相がしていたという疑惑があるが、ここへきて重大な証言が飛び出した。
統一教会のイベントに2020年から3度参加した伊達忠一前参院議長は、HTB北海道テレビの取材に対し「選挙でお世話になったお礼」と、参加の目的を明かしたうえで、安倍元首相と統一教会の関係について次のように語ったのだ。
「宮島喜文。長野から出てる。これを前回(2016年の参院選)で『どうだろう?』と安倍さんが(聞いて)、『統一教会に頼んでちょっと(票が)足りないんだウチが』と言ったら、『わかりました、そしたらちょっと頼んでアレ(支援)しましょう』ということで」
「今回(今年7月の参院選)は安倍さんは『悪いけど勘弁してくれ』と。『井上(義行氏)をアレ(支援)するんだ』という話になって、宮島は辞退したんですよ」
伊達氏が同じ臨床検査技師出身であることから肩入れした全国比例候補、宮島喜文氏(前参院議員)への統一教会票の割り振りをめぐる、安倍元首相との生々しいやり取りである。どうやら、安倍氏に頼めば教会票を動かせると伊達氏は認識していたようだ。
16年の参院選では、安倍氏が教会票を回してくれたので宮島氏が当選、今年の選挙ではその分を井上義行氏に割り振ることになったため、宮島氏は出馬を断念したということらしい。
安倍氏の意向しだいで票の行き先を変えられるというのは、どうみても尋常な関係ではない。安倍事務所には、統一教会の関係者が出入りしていたとも聞く。
自民党の元総裁や参院議長が教会票のやりくりに関わっていてもなお、茂木幹事長は自民党と統一教会の組織的関係はないとシラを切り通す。統一教会もまた「組織的に特定の候補者様を応援することはない」と、個人のせいにしている。
統一教会について、公明党の北側一雄中央幹事会長は「反社会的な団体」と記者会見で断じた。創価学会を棚に上げた発言ではあるが、間違いなく、統一教会は反社会的な活動を行ってきた。
自民党の政治家がそのような団体となぜ付き合ってきたのか。1950年代にまでさかのぼれば、ヤクザ、右翼勢力を利用してきた自民党の戦後裏面史と繋がる。
日本の戦後は闇市を仕切るヤクザの勃興とともに始まった。非合法組織を当局は大目に見た。日本敗戦でがぜん強気になった不良三国人の暴動を鎮圧する目的もあった。
朝鮮戦争の勃発を機に、日本の「赤化」を恐れるようになった米国は対日占領政策を転換し、米国への協力者として利用すべくA級戦犯を巣鴨プリズンから釈放した。その代表的人物が、のちに首相になる岸信介氏であり、「児玉機関」で知られる児玉誉士夫氏であり、右翼団体「国粋大衆党」の総裁だった笹川良一氏だ。
この間、国内では木村篤太郎法務総裁(自民党)が、政財界人脈とヤクザ組織からなる「反共抜刀隊」の結成を画策するなど、右翼勢力の再編を進める動きが出て、ソ連、中国の影響を受けた左翼勢力とのイデオロギー対決が強まっていた。1955年の保守合同による自民党結成は、そうした時代背景の産物といえる。
統一教会の開祖、文鮮明氏を岸信介氏に紹介し、反共主義の政治団体「勝共連合」の結成につなげたのは笹川良一氏だ。統一教会と自民党の間を取り持った人物といっていい。
裏社会ルートの資金提供で自民党を支えたのは児玉氏だったが、その親分格である笹川氏は政官財のオモテとウラを縦横無尽に行き来し、自民党に多大な影響を与えた。巣鴨プリズンを出所するや、各政党、関係省庁に働きかけ、モーターボート競走法を制定。全国モーターボート競走会連合会を設立して会長におさまり、市町村が主催する競艇の収益金の3.3%を受け取る儲けの仕組みをつくった。
競艇収益の国庫納入を画策する運輸省を抑え込むため、収益を社会貢献に充てるとの名目で日本船舶振興会を設立し、天下りポストを用意した。さらには、空港周辺対策を表看板に航空公害防止協会をつくって空港駐車場の運営を一手に引き受け、国への安い“賃料”支払いと、高い駐車料金収入の差による、大きな利ざやで荒稼ぎした。
競艇から得られる莫大なテラ銭を武器に、政界人脈を築き、運輸省官僚を抱きこんで、公営ギャンブルから空港利権まで手中にしたのである。
一方で、笹川氏は青少年の道徳教育や慈善活動に情熱を注ぎ、勲一等旭日大綬章を受章している。
振り返ってみれば、笹川氏と同じように、自民党もまたオモテとウラを巧みに使い分け、揺るぎない権力基盤をこの国に作り上げてきた。
安倍元首相が凶弾に倒れた奈良の街頭演説には、統一教会の信者が多数動員されていたと聞く。左翼勢力を排除するため、文鮮明氏と手を握った岸氏と笹川氏らの“遺伝子”は、今の自民党にも受け継がれている。
7月30日に放映されたTBS「報道特集」で、興味深い証言をした米統一教会元幹部がいる。アレン・ウッド氏だ。
1970年に日本武道館でおこなわれた統一教会と国際勝共連合のイベントで、司会をウッド氏が務めていた。笹川氏のスピーチをこう振り返る。
「彼(笹川)は胸をたたきながら『私は文(鮮明)氏の犬だ』と言いました。驚くべき発言でした。日本で最強の人物が自分を文氏の下に位置づけたのです。あの時、『我々は世界を支配できる』と思いました」
この証言を聞いて思い浮かんだのが、安倍元首相による「UPF」イベント(2021
年9月12日)へのビデオメッセージだ。
「盟友のトランプ大統領とともに演説する機会を頂いたことを、光栄に思います」
「今日に至るまでUPFと共に世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁ら、皆様に敬意を表します」
統一教会がどこの紛争の解決に努力したのか知らないが、大仰に教会を持ち上げる安倍氏の姿勢は笹川氏とダブって見える。
UPFの梶栗正義会長が信者向けに配信した映像も「報道特集」で放映された。安倍氏からビデオメッセージの約束をとりつけるまでの交渉経過を明かしている。
「先生、もしトランプがやるということになったら、やっていただかなくちゃいけないけどどうかと。“ああ、それなら自分も出なくちゃいけない”という話を実は2021年の春にやりとりをしてたんですよ。先方から『やりましょう』という答えが返ってきて私の耳に入ったのが、8月24日。この8年弱の政権下にあって、6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものも、ちゃんと本人が記憶していた」
UPF側のビデオ出演要請に対し、当初渋っていた安倍氏は、トランプ米大統領の出演決定を聞いて態度を変えた。それは、安倍政権下での全ての国政選挙で統一教会が協力してきたことをちゃんと記憶していてくれたからだ、と梶栗氏は言っているのだ。
教会員の力で総理大臣をも動かせることへの自負がにじむ発言である。しかしそれは、日本の政権がいかに甘く見られてきたかという証左でもある。それなのに、いまだ自民党から統一教会との関係を解消する動きはほとんど出ていない。
安倍元首相の実弟、岸信夫防衛相は「統一教会とはお付き合いもありましたし、選挙の際もお手伝いをしていただいております」と述べ、問題はないとの認識を示していたが、厳しい批判の声を受けてようやく「関係を見直す」と姿勢を転じた。本気かどうかは甚だ疑わしい。
岸田首相は「社会的に問題になっている団体との関係については、丁寧な説明を行っていくことは大事であると思います」と、相も変わらず他所事のようなコメントである。こういう時こそ、決別宣言をするなり、強いリーダーシップを示すべきではないだろうか。
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