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市民団体が国葬差し止め訴訟
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2022年8月 9日 植草一秀の『知られざる真実』
国葬実施が適正でない理由が三つある。
第一は、国葬に法的根拠がないこと。
岸田首相は内閣府設置法が国葬実施の根拠だと主張する。
しかし、内閣府設置法は国葬の根拠法でない。
内閣府設置法は「国の儀式」に関する事務を内閣府が所管することを定めているだけ。
安倍元首相の葬儀を「国葬儀」として実施することを岸田内閣が勝手に決めただけだ。
国葬を定める法的根拠は存在しない、
法的根拠のない国葬実施を、血税を投下して実施することは適正でない。
第二は、国葬実施が、憲法第19条が保障する「思想および良心の自由」を侵害すること。
国葬実施が安倍元首相に対する特定の評価や安倍元首相に対する弔意を強要する側面を有することを否定できない。
このことは憲法が保障する「思想及び良心の自由」を侵害するもの。
国葬実施強行は憲法に抵触することになる。
第三は、安倍元首相銃殺事件発生以来、大きな論議になっている自民党や安倍元首相一族と旧統一協会=現世界平和家庭連合や国際勝共連合との関りについて国民が十分に納得できる説明がなされていないこと。
この問題が安倍晋三氏銃殺事件に深く関わっていると見られている。
この問題に対する明確な対応が示されぬまま、国葬実施を強行することは許されない。
国葬中止を求める法的措置も提起されている。
8月9日に市民団体による訴訟が提起され、記者会見も開かれた。
私も原告の一人として記者会見に参加した。
各種世論調査でも国葬実施に反対する意見が過半数や多数を占めている。
岸田首相は日本が法治国家であることを踏まえて国葬実施方針を撤回するべきだ。
「過ちて改むるに憚るなかれ」
である。
また、岸田内閣は国葬にかかる費用を予算の予備費から拠出する方針を示しているが、これも財政民主主義の根幹を損ねる誤りだ。
岸田文雄首相が国葬実施方針を決めた理由は自分自身の政治的基盤を強化することにあると考えられる。
岸田氏は自民党第4派閥の代表者でしかない。
最大派閥である安倍派の歓心を買うために拙速な方針決定に走ったと見られる。
岸田内閣発足後、岸田氏は高い支持率を享受してきたが、実績に基づくものではない。
前任者、前々任者の印象が極めて悪かったため、普通に振る舞うだけで好感度が上がったことが高支持率の最大の理由だった。
コロナ感染状況がたまたま改善した恩恵を受けたことも大きい。
ウクライナ戦乱が発生して米国の命令に服従してロシアを非難したことをメディアが礼賛したことも影響している。
しかし、コロナ対応の無策が第7波で顕在化した。
ウクライナ戦乱も時間が経過するに連れて、米国とウクライナの責任を問う声が強まりつつある。
人の話に耳を傾けるだけで首相は務まらない。
経済政策も成長から分配に重心を移すかのような言辞を示したのに、結局元のアベノミクス路線への回帰を鮮明にして失望が広がっている。
何を提言されても「検討する」としか答えず、実行を伴わないために
「検討使」
と揶揄する声も聞かれる。
統一協会問題が浮上しているなかで、事実関係の把握と抜本的な対応が求められているが、現状では強いリーダーシップが発揮されていると言えない。
国葬について、最低でも国会での審議と決議が必要だった。
ところが、この最低限のプロセスを踏まずに実施強行を閣議で決定した。
日本は法治国家である。
同時に国民主権国家である。
憲法前文は「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」の言葉で始まる。
国権の最高機関として国会を位置づけ、国会を国の唯一の立法機関と定めている。
その国会での手続きを踏まずに国葬実施を強行しようとしている点が致命的に問題だ。
9月27日に向けて国葬反対の国民運動が拡大する可能性が高い。
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ウクライナ戦乱と資源価格インフレ
修羅場を迎える国際金融市場』
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