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※紙面抜粋
※2022年6月24日 日刊ゲンダイ2面
【止まらない物価高、底なしの円安】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) June 24, 2022
あと16日 投票日まで自民はどれだけ票を減らすのか
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/xDIAtyTxbe
※文字起こし
岸田首相は今回の参院選を完全にナメ切っている。選挙期間中に自民候補の応援そっちのけで、26日から30日まで「軍拡」外遊三昧ときたもんだ。
26日からドイツで開催されるG7サミットに続き、29日からスペインで開かれるNATO首脳会議にも、日本の首相として初めて出席。先月下旬に来日したバイデン米大統領との首脳会談に続き、改めて防衛費の「相当な増額」を国際公約するのだろう。総理総裁が公示後初の選挙ホリデーを含め、国政選挙の期間中に5日間も日本を離れるのは異例中の異例だ。
「ニュースになりやすい外遊を重ねることで、参院選向けに岸田さんの露出を増やす」(自民党関係者)という魂胆も聞こえてくるが、それとて有権者をみくびっている証拠。22日の福島市での第一声でも、岸田は有権者の神経を逆撫でするような発言が目立った。
物価高対策の無為無策を棚に上げ、「物価高はロシアのウクライナ侵略によって世界規模で引き起こされている。いわば有事の価格高騰だ」と強調。庶民生活を苦しめる物価の高騰は「プーチン大統領のせい」と言わんばかりだが、責任逃れもいいところだ。
日銀によると、5月の輸入物価(円ベース)の上昇率は前年同月比43.4%。うち円安の影響は約4割に達した。日本は資源の輸入依存度が高く、円安は原材料コストの上昇に拍車をかけ、物価に跳ね返る。
円相場は一時1ドル=136円台と約24年ぶりの水準に下落。年初の115円前後から20円超も円安が急速に進み、過熱する物価高騰の元凶は、岸田政権のアベノミクス維持に伴う大規模な金融緩和の継続である。
争点は企業優先か、庶民に恩恵か
23日付の東京新聞は1面トップに〈節約、節約、痛み耐え〉との見出しを掲げ、電気、ガソリン、ガス、食品など、あらゆる生活必需品の値上げに苦しむ有権者の声を伝えていた。
「夫の晩酌を毎晩から2日に1回にしてもらった」「教育費をためたいから、独身時代に使っていたバッグなどをフリマサイトで売って生活費に充てている」「物価は上がるのに年金は下がる」──。拾い上げた市井の人々のコメントには日々の苦悩がにじんでいた。
それでも、岸田は「底なし円安」を放置。野党から日銀の金融緩和策の見直しを求める声が上がっても、ゼロ回答だ。この判断だって庶民の暮らしより、党内融和を優先させた結果だろう。
緩和見直しはアベノミクスの否定を意味し、安倍元首相とその一味が猛反発しかねない。だから自民党内を二分しかねない議論はたなざらし。参院選終了まで安全運転に徹する「何もしない首相」の本領発揮である。
そのクセ、公示前日の21日には急きょ設置を決めた「物価・賃金・生活総合対策本部」の初会合を開催し、“やってる感”をアピール。節電した消費者へのポイント還元策などを打ち出したが、猛暑予想の今夏に「エアコンの温度設定を下げ、“ポイ活”に励め」とは酷な話だ。
止まらない物価高に打つ手なしのゴマカシ政治はとことん有権者を愚弄している。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。
「自公与党が打ち出す物価高対策は、消費者である国民に目を向けていません。ガソリン高対策も石油元売り会社に補助金を出す企業支援にとどまる。その原資である税金を高騰に苦しむ納税者に再分配せず、『企業を救えば、いずれ消費者にも』というトリクルダウン理論にしがみつき、国民生活を置き去り。米国ではイエレン財務長官が検討を支持するガソリン税の一時停止だけでは国民に恩恵が行き渡らず、相対的に高い州の燃料税を引き下げるべきだと訴えています。まさに日本とは雲泥の差。トリガー条項の凍結解除でガソリン税を減税したり、野党全党が掲げる消費税の減税、もしくは廃棄の方が、国民生活は確実に救われます」
企業を潤わせるだけの補助金か、国民全般に恩恵が行き渡る減税か。物価高対策の根本的な相違も、参院選の重大な争点である。
物価高で「何もしない首相」は評価一変
円の下落だけではない。昨年10月の岸田政権の発足以降、日経平均株価は2000円以上も下げている。先週末の17日は終値で前週末比1861円も急落するなど、最近は「日本株売り」の勢いが増している。
少し前なら「円安は輸出企業には追い風」とされ、記録的な円安は株価上昇につながっても、おかしくなかったはずだ。
「投資は『通貨の強い国へ』が鉄則。日本の株式市場は海外ファンド頼みですが、彼らの投資実績は最終的にはドル換算で評価されます。急激な円安進行による為替差損を嫌気し、加速する日本株離れが株価急落の最大要因。日本市場の外国人依存度の高さが、裏目に出ている格好です」(斎藤満氏=前出)
今の「悪い円安」は百害あって一利なし。今年の干支の「寅」にちなんだ「寅、千里を走る」という相場格言とは裏腹に、過去8回の寅年のうち、年末の株価が前年末を上回ったのは、たったの2回。十二支の中でワーストの記録だ。
株価は「景気を映す鏡」。下落局面で国政選挙に突入すれば政権与党が苦戦する傾向にある。本来なら岸田首相もウカウカしている場合じゃないのに、なぜか余裕をかまして外遊三昧とは恐ろしい神経である。
直近のどの世論調査でも、岸田政権の物価高対策に有権者の7割近くが「ノー」を突き付け、内閣支持率も軒並みダウンだ。とはいえ、支持率はまだ高水準をキープし、政党支持率も自民が断トツ。この状況にあぐらをかいているからこその岸田の余裕なのだろうが、有権者の怒りは広がる一方である。
寅年は過去2回とも油断した与党の大敗
自民は参院選の公約に、防衛費を対GDP比で2倍以上とすることも念頭に、5年以内に防衛力を抜本的に強化すると明記。現在の経済規模で約11兆円という世界有数の防衛予算に膨らみかねないのに、具体的な財源を示していない。有権者をおちょくるのも、いい加減にした方がいい。
「軍拡のための予算編成か、われわれの生活を重視する予算編成かも今回の参院選の一大争点。19日投開票の東京・杉並区長選では、立憲・共産・れいわ・社民が推薦した政治経験のない無名の女性候補が『命と暮らしを守る』と訴えて無党派層を動かし、自公系現職に勝利しました。国民生活の苦しさに目もくれず、軍拡路線をひた走る政権与党に有権者が怒りをぶつけた結果で、明らかに潮目は変わりつつある。野党はこの好機を生かし、政権批判を強めるべきです」(政治評論家・本澤二郎氏)
寅年実施の参院選は、過去2回とも政権与党が苦汁をなめた。1998年は、選挙期間中に「恒久減税」をめぐり、橋本龍太郎首相(当時)の発言が迷走。自民大勝ムードが一転し、惨敗した。2010年は、菅直人首相(同)が公示7日前、いきなり消費税増税に言及したのが響き、過半数割れの大敗。民主党政権の終わりの始まりとなった。前出の本澤二郎氏はこう言った。
「どちらも時の政権の油断が招いた敗北で、同じことは今の岸田政権にも当てはまる。岸田首相が据える勝敗ラインは『非改選を含めて与党で過半数』という56議席。公明が改選前14議席を維持すれば、自民は13議席減でも達成可能な低い目標ですが、政権への評価は『何もしないからこその高支持率』から『物価高に何もしないから不支持』へと逆風が吹き始めている。庶民の暮らしを軽視し過ぎると手痛いシッペ返しが待っています」
7月10日の投票日まで、あと16日。岸田自民はどれだけ票を減らすのか。それを決めるのは有権者の怒り次第だ。
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