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外交における信義と公正さの重要性
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2022年5月25日 植草一秀の『知られざる真実』
日本の国民として日本の外交について責任を持たなければならない。
国と国との間で交わした約束は守らなければならない。
日本国憲法前文に次のように記述した。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」
「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」
「平和を愛する諸国民の構成と審議に信頼する」
「政治道徳の法則は普遍的なものである」
「この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務である」
「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成する」
「普遍的な政治道徳の法則に従うことは各国の責務」
と記述している。
国と国との間で交わした約束はしっかりと守らなければならない。
日本は韓国との関係で韓国が約束を守らないと主張するが、その場合、韓国が具体的にどのような約束をして、どのように約束を守っていないのかを明確にする必要がある。
2015年12月28に日韓両国の外相が従軍慰安婦問題の解決のために共同発表を行った際、私は2015年12月29日付ブログ記事
「日韓合意、日本政府謝罪明記でも玉虫決着」
https://bit.ly/3ao2kip
メルマガ記事「日韓合意あいまい決着が問題を再燃させる懸念」
http://foomii.com/00050
と題する記事を掲載した。
2016年1月9日には、
「問題根源は2015/12の日韓玉虫合意文言にある」
https://bit.ly/3NyNG5X
を掲載した。
日本政府は韓国の日本大使館前に設置されている従軍慰安婦少女像の撤去を韓国政府に求めてきた。
このことに関して外相共同発表を行ったが、この共同発表は少女像撤去を確約するものにはなっていなかった。
日本の岸田文雄外相は
「日韓間の慰安婦問題については、これまで両国局長協議等において集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、日本政府として以下を申し述べる。
一、慰安婦問題は当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍首相は日本国首相として、改めて慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。
二、日本政府はこれまでも本問題に真摯(しんし)に取り組んできたところ、その経験に立って、今般日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。
三、日本政府は以上を表明するとともに、以上申し上げた措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表によりこの問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。併せて、日本政府は韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難、批判することを控える。
なお、先ほど申し上げた予算措置については、規模としておおむね10億円程度となった。以上のことについては、日韓両首脳の指示に基づいて行ってきた協議の結果であり、これをもって日韓関係が新時代に入ることを確信している。」
と述べた。
これに対して韓国の尹炳世外相は、
「韓国政府として以下を表明する。
一、韓国政府は日本政府の表明とこのたびの発表に至るまでの取り組みを評価し、日本政府が先に表明した措置を着実に実施されるとの前提で、このたびの発表を通じて、日本政府と共にこの問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は日本政府が実施する措置に協力する。
二、韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、空間の安寧、威厳の維持といった観点から懸念しているという点を認知し、韓国政府としても可能な対応方法に対し、関連団体との協議等を通じて適切に解決されるよう努力する。
三、韓国政府はこのたびの日本政府が表明した措置が着実に実施されるとの前提で、日本政府と共に今後、国連など国際社会において本問題に対する相互非難、批判を自制する。」
と述べた。
日本政府の最大の関心事である少女像について韓国の尹炳世外相が表明した言葉は、
「韓国政府としても可能な対応方法に対し、関連団体との協議等を通じて適切に解決されるよう努力する」
というものであって、韓国政府の責任において少女像を撤去することを確約するものではなかった。
したがって、日本が10億円の資金を拠出したとしても、慰安婦像が撤去されることは保証されないということになる。
外交文書の細目を十分に精査して自国の主張を展開しなければならない。
この意味において日本外交には欠陥が多い。
日本政府がその欠陥を棚の上にあげて、他国を根拠なく誹謗中傷することを日本国民は許すべきでない。
日本の国民の尊厳にかかわる問題である。
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