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日本は「米軍のカモ」にされた…日豪「連携強化」のウラにある“米国の思惑” また「タブー」が増えるのではないか?
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91242
2022.01.09 半田 滋 現代ビジネス
オーストラリアと結んだ「円滑化協定」
岸田文雄首相とオーストラリア(豪州)のモリソン首相は6日、自衛隊と豪軍が相互に訪問する際の手続きを簡略化する「円滑化協定」に署名した。米国との間で締結している日米地位協定に準じるもので、豪州との連携を深め、日米豪印4カ国、いわゆる「クアッド」で取り組む対中国戦略をさらに進める形になった。
モリソン豪首相とのオンライン会談で署名を掲げる岸田文雄首相(首相官邸のホームページより)
豪州との間では昨年11月、海上自衛隊の護衛艦が米軍に対する防護を除いては初となる豪海軍のフリゲート艦を守る武器防護を実施した。2017年には弾薬や役務を融通する物品役務相互提供協定(ACSA)も締結している。
海上自衛隊の護衛艦「いなずま」に防護される豪軍フリゲート艦「ワラマンガ」(手前、海上自衛隊のホームページより)
急速に進む日豪防衛協力の延長線上にある円滑化協定ついて、岸田首相は署名式で「安全保障協力を新たな段階に引き上げる画期的な協定だ」と述べ、モリソン首相は「日本はアジアで最も近いパートナーだ」と持ち上げた。
この協定を一番歓迎しているのは、米国のバイデン大統領ではないだろうか。
豪軍が自衛隊基地など日本の施設を簡単に利用できるようになれば、米軍と同様に日本列島を出撃基地兼補給基地として使えるからだ。対中包囲網を強化するうえで便利なことこの上ない。
昨年夏、「クイーン・エリザベス」を旗艦とする英国の空母打撃群が自衛隊基地に寄港した際、空き岸壁が足りず、代わりに横須賀や佐世保といった米軍基地が受け入れたのを見ても、米国は対中戦略で足並みを揃える国は大歓迎なのだ。
米国に貢ぎ続ける日本
折しも、円滑化協定が署名された翌日の7日には日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開かれ、中国について「地域や世界に対する政治的、経済的、軍事的および技術的な課題を提起する」と一致して懸念を表明した。
共同文書には「日本は国家の防衛を強固なものとし、地域の平和と安定に貢献するため、防衛力を抜本的に強化する決意を改めて表明した」と書き込んだ。
「防衛力を抜本的に強化」とは、2021年度補正予算と22年度当初予算案を合わせて「防衛力強化加速パッケージ」と名付け、初めて6兆円の大台に乗った合計6兆1744億円の防衛費を指すとみられる。
対国内総生産(GDP)比は、目安としてきた1%を上回り、米国が北大西洋条約機構(NATO)など同盟国に求める「対GDP比2%以上」に近づいた。
それだけではない。共同声明には「同盟の即応性と抗たん性を高めるために日本の米軍への支援を拡大し、再編成する」との言葉も盛り込まれた。
これは、2022年度以降の5年間の在日米軍駐留経費負担(通称「思いやり予算」)について、年度平均額を本年度の2017億円より100億円高い約2110億円とすることで米政府と合意したことを指す。
「拡大し、再編成」されたのは、米軍と自衛隊が共同使用する訓練機材の購入費を日本側が負担する「訓練資機材調達費」を新設したことだ。5年間で最大200億円を負担する。
本来、米政府が購入すべき米軍の訓練機材まで日本政府が負担することで在日米軍駐留経費との名目が立ちにくくなり、同盟の即応性と抗たん性の強化を意味する「同盟強靱化予算」に改名した。提供施設整備費も増額され、日本側の費用で米軍施設をさらに充実させる。
防衛費や「思いやり予算」を変質させてまで米国に貢ぎ、豪州との間では円滑化協定を署名するに至った日本政府。ここまでお膳立てしてもなお、日米首脳会談の開催は見通せない。岸田首相は3日のテレビ番組で「難航している。コロナの状況も見ながら日程は考えていきたい」と述べた。オンライン会議さえ、実現のめどは立っていないのだ。
米豪関係がさらに深まっている事情
米国と豪州との関係をみると、昨年9月、バイデン大統領が米英豪3カ国の新たな安全保障協力の枠組み「AUKUS」の創設を公表した。最初の取り組みとして豪州への原子力潜水艦の建造技術を供与し、豪州は原潜8隻を建造する。
実現すれば、核兵器を保有する米、英、中国、ロシア、フランス(仏)、インドに次ぐ7番目の原潜保有国となり、核兵器を保有しない国としては世界初だ。原潜は、通常動力型の潜水艦と比べて、潜水時間が圧倒的に長く、隠密行動に最適な構造となっている。
米海軍の原潜「バージニア」級(米海軍のホームページより)
バイデン大統領は「豪州の潜水艦がより長期にわたって展開できるようになる。より静かで、より能力が高い。これにより、インド太平洋における抑止力を維持、向上させることができる」と述べ、豪州に海洋進出を急ぐ中国を牽制する役割を求めた。
伝えられる通り、原潜建造は仏の犠牲の上に成り立った。豪州は2016年、老朽化した潜水艦の代替として新たに通常動力型潜水艦の新規建造を決め、総額500億豪ドル(約4兆円)で仏企業と契約した。
ところが、価格の高騰や建造開始の遅れなどの問題が続出。そのタイミングを見計らうように米国が原潜技術の供与を決めたことで、仏との契約は破棄された。駐米仏大使が本国に召還されるほど米仏関係は一時、悪化した。
もともと豪州と米国との関係は深い。第1次世界大戦以降、常に米国の側に立ち、アフガニスタン攻撃やイラク戦争にも参戦してきた古い同盟国だ。情報機関が傍受した他国の通信情報を共有する「ファイブ・アイズ」(米英豪、カナダ、ニュージーランド)の一員でもある。
とはいえ、原潜の建造技術は秘中の秘。1958年に米国が英国にその技術を供与して以来となる。そんな虎の子を提供するのは、米国が単独で行っている南シナ海の海南島にある中国軍基地を出入りする中国潜水艦の監視と追尾の役割を豪州にも担わせるためだ。
すべては「米国の利益」につながる
一国主義のトランプ大統領から代わったバイデン大統領が打ち出した国際協調主義とは結局、同盟国の力を利用して米国の国益を最大化することにほかならない。そして日本や豪州は自国の国益につながるとみて、懸命になって忠誠心を示し続ける。
バイデン米大統領[Photo by gettyimages]
米国防総省は昨年11月、世界規模の米軍態勢見直し「グローバル・ポスチャー・レビュー」の概要を発表した。この中で豪州に米軍の戦闘機や爆撃機をローテーションで配備することを盛り込んだ。
まずは豪州を米軍の踏み台として利用する枠組みが作られたことになる。今回、署名された日豪円滑化協定により、日本列島が米軍と同じく豪軍にとっても使い勝手のよい「外国軍の楽園」になれば、米国の負担をいっそう軽減できることになる。
円滑化協定の交渉は2014年7月に始まったが、豪州が日本の死刑制度に懸念を示し、難航。ここへ来て中国に共同対処するため議論を加速した。
中身をみると、共同訓練などで相手国に滞在する際、入国審査や携行品の関税を免除し、武器や弾薬の持ち込み手続きを簡素化することが柱だ。日米地位協定に準じ、日米合同委員会と同じような「日豪合同委員会」も設置する。
円滑化協定の概要(外務省の資料より)
政府は英国との間でも円滑化協定について交渉を開始、仏も意欲を示している。
それにしてもなぜ、このタイミングでと思う。日米地位協定が米軍に特権を与え、その結果、米軍由来とみられるオミクロン株による国内感染が広がっている。その対策として沖縄、山口、広島の3県に「まん延防止等重点措置」の適用が検討され、7日には正式決定したからだ。
豪軍の兵士も入国審査や検疫を免除されることで、米軍が大穴を開けた日本の感染症対策にふたつ目の穴を開けることになりかねない。
国民の健康管理と安全保障政策は相容れない概念ではない。だが、米軍に対する政府の感染防止策は米兵の外出制限などの「お願いベース」にとどまり、入国禁止や外出禁止といった強い措置は求めていない。円滑化協定は、タブーを増やすことにつながらないだろうか。
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