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急速にまとまりつつある中東はアメリカ離れも加速させている
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305220000/
2023.05.22 櫻井ジャーナル
アラブ連盟の首脳会議が5月19日にサウジアラビアのジッダで開かれた。22カ国が参加、ウクライナもゲストとして参加しているのだが、最も注目されたのはシリアの復帰だ。
シリアが参加できなくなったのは2011年。中東の完全支配を目論んでいたアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟のほか、フランスとイギリスのサイクス-ピコ協定コンビ、パイプラインの建設でシリアと対立したカタール、オスマントルコの復活を目論んでいたと言われるトルコなどがムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を使い、この年の3月からシリアに対する軍事侵略を始めたのだ。
当時のアメリカ大統領はバラク・オバマ。彼も大多数のアメリカ大統領と同じように、国際問題についてはネオコンの戦略に従っていた。ネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン政権を倒して新イスラエル体制を築き、シリアとイランを分断しようとしていた。
当時、アメリカの支配層内にはフセイン政権をペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤と位置付ける勢力が存在、ネオコンと対立する。その勢力にはジョージ・H・W・ブッシュも含まれていた。この当時、イラン・コントラ事件やイラクゲート事件が浮上したが、その理由は支配層内部の対立にあった。ネオコンが実権を握ったのは2001年9月11日以降である。
ジョージ・H・W・ブッシュの息子、ジョージ・W・ブッシュはネオコンに担がれていた人物で、2003年3月にイラクを先制攻撃してフセイン政権を倒したが、新イスラエル体制を築くことには失敗した。
そこでブッシュ・ジュニア政権は戦術を変更する。フセインの残党を含むスンニ派の戦闘集団を編成し、手先として使い始めたのだ。シーモア・ハーシュが2007年3月にニューヨーカー誌で書いた記事によると、ブッシュ政権はイスラエルやサウジアラビアと手を組み、シリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラを叩き潰そうと考えた。そこでアル・カイダ系の武装集団、あるいはダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)が生み出されるわけである。
これはズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に始めた戦術。2009年にアメリカ大統領となったオバマの師はそのブレジンスキーだ。オバマ政権は2011年3月からアル・カイダ系の武装集団を傭兵として使ってシリアに対する侵略戦争をはじめたのである。なお、その前月にはリビアに対しても同じように侵略戦争を開始した。
オバマ政権は公然とアル・カイダ系武装集団を支援。それに対し、マイケル・フリンが局長を務めていたDIA(国防情報局)は2012年8月、オバマ政権が支援している武装勢力の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。
その警告が2014年にダーイッシュという形で現実になるとオバマ政権ないで対立が激しくなったようで、フリンは2014年8月に退役を強いられている。
しかし、シリア軍は潰れない。そこでリビアと同じようにアメリカ/NATO軍を投入しようと考えたようで、2015年2月に国防長官をチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、9月には統合参謀本部議長をマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代させる。
ヘーゲル国防長官やデンプシー統合参謀本部議長は上院軍事委員会で直接的な軍事介入に慎重な姿勢を示し、好戦派のヒラリー・クリントン国務長官らと対立していた。
デンプシーが退任した数日後にロシア軍がシリア政府の要請で介入、ダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団を敗走させた。軍事介入した直後にロシア軍はカスピ海に浮かべた艦船から26基の巡航ミサイルを発射、全てのミサイルが約1500キロメートル離れた場所にあるターゲットに2.5メートル以内の誤差で命中したとされている。保有する兵器の優秀さを世界に示したのだ。
ドナルド・トランプは大統領に就任して間もない2017年4月、地中海に配備されていたアメリカ海軍の2隻の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したものの、6割が無力化されてしまう。ロシア軍の防空システムはアメリカ軍より優秀だということだ。
そのためか、2017年10月5日にサウジアラビアのサルマン・ビン・アブドル・アジズ国王はロシアを訪問、ロシアの防空システムS-400を含む兵器/武器の購入を持ちかけたようだ。これはアメリカ政府の圧力で実現しなかったが、これは始まりにすぎなかった。
トランプ大統領は翌年、リベンジを図る。2018年4月にイギリスやフランスを巻き込み、100機以上の巡航ミサイルをシリアに対して発射したのだ。ところが今度は7割が無力化されてしまう。前年には配備されていなかった短距離用の防空システムのパーンツィリ-S1が効果的だったと言われている。
シリアでの戦闘で世界はロシア軍の強さを認識したが、それはウクライナでの戦闘でも再確認されている。各国政府は西側有力メディアの宣伝に騙されない。
今年3月10日、中国、サウジアラビア、イランは共同声明を発表、中国の仲介でサウジアラビアとイランが国交を正常化させ、それぞれ大使館を再開させることを明らかにした。そしてシリアがアラブ連盟首脳会議へ復帰した。中東はひとつにまとまり、アメリカ離れを始めた。
アメリカ/NATOがウクライナへ供給した武器弾薬の相当部分は闇市場を通じて中東へ流れていると言われている。イスラム世界がまとまらないよう戦乱を引き起こそうとしているのかもしれない。
ウクライナにしろ中東にしろ東アジアにしろ、アメリカは戦争を引き起こそうとしている。そのアメリカに従属している国が「平和国家」であるはずがない。
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