http://www.asyura2.com/22/kokusai32/msg/797.html
Tweet |
※2023年5月6日 日刊ゲンダイ2・3面 紙面クリック拡大
・
天敵サウジとイランの国交正常化を中国が仲介の衝撃…米国の威信低下をみせつけた 特別寄稿
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/322516
2023/05/06 日刊ゲンダイ
世界に驚きが(サウジアラビア・イランが国交回復、中国含め3カ国の外相会談=北京、4月) (C)ロイター/人民日報
3月10日、サウジアラビアは米国が敵視するイランと中国の仲介により、7年ぶりに国交正常化で合意したと発表した。
サウジアラビアは従来、強固な親米国で、イラン・イラク戦争では米国が育てた猛犬のようなイラクのサダム・フセイン大統領に莫大な援助を与え、次に米国が彼を始末した湾岸戦争とイラク戦争でも最大の戦費供出国だったし、米国の武器輸出の最大の顧客だった。
宗教でもサウジアラビアはイスラム教スンニ派の発祥の聖地であり、その分派シーア派はイランで現れ、両派は長く対立してきた。1979年のイラン革命でイランでの権益を失った米国は怒り、サウジとの軍事関係を深めた。
ところが今回、サウジは突如、宿敵イランとの国交正常化を発表、それも米国と対立している中国の仲介だから米国は仰天した。関ケ原の戦いで石田三成側に布陣していた小早川秀秋の軍勢1万5000が徳川家康に寝返ったのに似ている。
中東諸国の離反はそれだけではすまず、4月12日には米国、サウジなどが支援する反徒と12年間、内戦をつづけてきたシリアはサウジと「領事業務を再開」と声明を出した。
同日にはシリアとチュニジアが大使館再開で合意。米国第5艦隊の司令部があるバーレーンも同日、「イランと接近している」として断交していたカタールとの外交関係回復を発表した。
イエメンでは2015年からイランが支援するシーア派の「フーシ派」とサウジが支援する「暫定政府軍」が、激しい内戦をつづけてきたが、双方のパトロンが和解したから4月14日に約900人の捕虜を交換し、内戦は終結に向かっている。
この将棋倒しのような情勢の転換は、ソ連がアフガニスタンでゲリラに負けて撤退した後、東欧諸国が離反した状況に小型ながら似ている。米国もアフガニスタンでタリバンと20年戦った後、撤退した。米軍はイラクも占領したが混乱を起こして撤退し、結局、人口の多い反米のシーア派が政権を握った。
シリアの内戦では米国、サウジなどがアサド政権の打倒を目標に、外国人傭兵主体の反政府軍をつくったが、シリア軍は10万人の民兵の協力を得て、反政府軍をトルコ国境の一角に追い込んだ。今回、サウジがシリアと和解したことで、アサド政権の勝利が確定した。
「今回の将棋倒しで米国は威信喪失」といわれるが、米国がすでにアフガニスタン、イラク、シリアで威信を失っていたため中東諸国が背を向けたのだろう。
イスラエルは1967年の第3次中東戦争で占領したヨルダン川西岸、ゴラン高原などを国連安保理は決議242号で返還を求めたのに応じず、ネタニヤフ首相はヨルダン川西岸に3000戸の新規入植を計画するなど、横暴で、トランプ前米大統領は米大使館をイスラム教の聖地でもあるエルサレムに移したり、「ゴラン高原はイスラエル領」と言明し、アラブ諸国を憤慨させた。
親米国の指導者も「イスラエルの一味」と言われては地位が危うい。日本の鎌倉時代のように支配者の親族間の闘争も起こりかねない国では変わり身の早さが必要なのかもしれない。
田岡俊次 軍事評論家、ジャーナリスト
1941年生まれ。早大卒業後、朝日新聞社。米ジョージタウン大戦略国際問題研究所(CSIS)主任研究員兼同大学外交学部講師、朝日新聞編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)客員研究員、「AERA」副編集長兼シニアスタッフライターなどを歴任。著書に「戦略の条件」など。
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。