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ロシア軍事侵攻一年 プーチン対ゼレンスキー 戦争の行方は?/石川一洋・nhk
2023年02月23日 (木)
石川 一洋 専門解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/479940.html
ロシアのプーチン大統領がウクライナへの軍事侵攻を始めてから明日で一年となります。ロシアのプーチン大統領は何故この侵略戦争を始めたのでしょうか。ウクライナのゼレンスキー大統領は徹底抗戦を掲げ、領土の全面奪還を目指しています。この残酷な戦争の始まりから一年になるのを前に戦争とその行方について考えてみます。
この戦争の本質は何でしょうか。まさに「プーチンの戦争」 ロシアのプーチン政権による主権国家ウクライナへの侵略戦争です。
長い歴史の流れで見れば、ソビエト連邦という帝国の継承国ロシアと、新たに生まれた国民国家ウクライナとの戦争です。ソビエト連邦が崩壊して30年が過ぎてもプーチン大統領はいまだに帝国の復活という幻想を捨てきれません。ウクライナのゼレンスキー大統領にとっては、国民国家ウクライナの存亡をかけて、ヨーロッパへの合流という未来をかけた事実上の独立戦争ということができるでしょう
プーチン大統領は遅れていた年次教書演説を行いました。
「欧米はロシアに戦場で勝つことは不可能だと知るべきだ」
アメリカへの反発をあらわにして、ウクライナへの軍事支援を強くけん制しました。米ロの間で唯一残った戦略兵器を制限する条約、新STARTについて条約の義務の履行を停止しました。NATO加盟国の英仏の核兵器も条約の制限に含まれるべきだと主張しています。核実験についても国防省などに準備をするよう命じ、アメリカが核実験を行ったらロシアも行うと述べました。最後の米ロの核兵器の枠組みの崩壊に導きかねない危険な行動と言わざるを得ません。
ウクライナについては、今の政権がロシア系の住民を弾圧し、欧米はウクライナを反ロシアの前線としていると一方的な主張を繰り返しました。ロシアは欧米の厳しい制裁も経済面で克服したと成果を強調するプーチン大統領ですが、今もウクライナではロシア軍の砲弾が降り注ぎ、多大な血が流れています。その正当性はどこにあるでしょうか。ロシア軍にも多くの戦死者が出ている中で、空虚さも感じさせる演説でした。
ただウクライナの苦境は変わりません。侵攻前、ロシアが支配していたのはクリミアや親ロシア派の支配地域、侵攻後一年の今はその占領地を拡大しています。ウクライナとしてはこの現状は決して許容できるものではありません。
今、戦闘は東部ドネツク州で双方にとって正念場を迎えています。ロシアは要衝バフムトや南のブフレダルで攻勢を続けています。バフムト周辺ではロシア軍が支配地域を拡大していますが、ウクライナ軍の攻撃でロシア軍の精鋭の空挺部隊も大きな損害を出しています。
私は、2014年東部での親ロシア派の武装勢力との紛争が始まる直前、ドネツク州をまわりました。それぞれの街に中心となる工場があり、石炭と鉄でウクライナ経済を支えた工業地帯であるとともに、美しい田園風景が広がっていました。そこが血なまぐさい戦場となっていることに胸が痛みます。
気になる情報があります。
ロシアは公式には動員したのは30万人としています。しかしウクライナのレズニコフ国防相は、今月ロシアは実際に動員したのは50万人だと述べています。私も信頼できる情報筋から動員数は50万人という情報を得ています。もしもロシアが50万人を動員したのだとしたら、前線に新たな兵力を投入してもロシアの大きな予備兵力が残ることになります。ウクライナがロシア側の大攻勢を警戒するのも当然でしょう。
ドネツク州では、ウクライナ軍は頑強にロシア軍の攻撃を一年間にわたって耐え続けており、ウクライナ軍全体を支えています。
ゼレンスキー大統領もドネツク州の戦いについて「ロシア軍に損害を与えれば与えるほど、ウクライナ軍の勝利は近づく」と述べています。ウクライナが抵抗できているのは、2014年以来、ここに頑強な防衛ラインを築いてきたからです。バフムトでは、工場の地下施設や地下道を利用して部隊を移動してロシア軍に抵抗しているといわれています。プーチン大統領は来月末までにドネツク州全域を掌握するように命令しているといわれていますが、要衝バフムトがたとえロシア側に陥落したとしても、全域の掌握は難しいでしょう。
この戦争の別の側面は、アメリカ議会でのゼレンスキー大統領の演説の一節に表れています。
「私たちはウクライナで我々の代わりにアメリカ兵に戦ってくれとは求めない。あなた方の戦車や戦闘機をウクライナ兵はうまく扱うことができる」
欧米は攻撃的な兵器など支援を強めていますが、命をかけて戦うのはウクライナ兵です。
ロシア軍は今、ドネツクで兵員の犠牲を厭わない残酷な消耗戦にウクライナ側を引き込もうとしています。人口や国力でロシアに劣るウクライナとしては、それに応じるべきではありません。できる限り兵力を温存して、反転攻勢に備えなければなりません。
ウクライナがロシアの攻勢に耐えられるのか、欧米の軍事支援を得て春以降反転攻勢に移れるのかどうか、この春のドネツクでの戦いが戦局を大きく左右するでしょう。
さてゼレンスキー大統領にとって挙国一致を維持し、戦時であるからこそ経済を動かすことが重要な課題です。ウクライナは、戦争前は、人口4千万人の大国です。外国からの財政支援だけでは国民生活を支えることはできません。勤勉な国民、豊かな大地、そして重工業を中心とした産業、ウクライナは、旧ソビエト諸国の中でもっとも発展の可能性があるといわれました。しかし政治経済の財閥支配、汚職体質の中で、国民一人一人の所得は低いままでした。戦争で去年のGDPは30%以上のマイナスであり、苦しい状況です。しかしだからこそ経済を動かし、戦後の復興に向けて、汚職体質からの脱却をはじめ、新たなウクライナの基礎を築くことが大切です。軍事支援はできない日本は技術や人道支援などでウクライナ経済を動かし、国民の暮らしを支える支援に傾注すべきでしょう。
さてこの戦争はどこまで続くのでしょうか。900キロにも及ぶ前線で砲弾が降り注ぎ、双方の若い命が失われています。双方とも戦場での決着が優先しています。ウクライナにとって占領地の全面奪還は正義です。しかしあまりに大きな犠牲を伴うことにもなりかねません。あるいは先行きの見通しのなさからプーチン体制の内部から停戦を求める動きが出るかもしれません。去年3月トルコの仲介で停戦交渉がほぼまとまりかけたことがあります。どこかで停戦交渉を再開するときが来るかもしれません。アメリカもロシアとの水面下の接触は続けていますし、今後中国、インドというロシアの友好国を通じてのプーチン大統領への圧力も含めた働きかけが重要になるかもしれません。
ロシア国内の世論は、最新の世論調査で軍事侵攻支持が75%にものぼり、戦争反対の声はかき消されているようにみえます。
しかしロシアでもっとも人気なロック歌手の一人ユーリー・シェフチュークが、戦争開始一年を前に「祖国よ、家に帰れ」という反戦歌をYouTube上に発表しました。
祖国ロシアに「これはお前の戦争ではない、正気を取り戻そう、家に帰ろう」と呼び掛けています。発表4日ですでに100万回視聴されています。反戦の立場を明確にした彼は会場を借りることができずコンサートは事実上禁止されています。
ただ厳しい弾圧にもかかわらず反戦の声がロシア国内にあることを忘れてはいけません。ロシア国内の声に耳を傾け、反戦の動きを励まし、粘り強いロシアとの対話の努力が必要です。
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