http://www.asyura2.com/22/kokusai32/msg/408.html
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対米離反と対露接近を加速するイスラエル
イスラエルのネタニヤフ新政権が、米国からの離反とロシアへの接近を加速する
外交姿勢をとっている。ネタニヤフは昨年11月の選挙に勝って1年半ぶりに政権
に返り咲いた。年末に組閣して新政権が発足した直後の1月4日、新任のコーヘン
外相がロシアのラブロフ外相と電話会談した。イスラエルとロシアの外相が話し
合ったのは、昨年2月のウクライナ開戦後初めてのことだった。昨秋のイスラエ
ル選挙直後の11月中旬には、国連のロシア制裁決議案の票決で、イスラエルは米
国側諸国の中で唯一、棄権した。イスラエルは、その前からロシアと親しくして
いたが、ウクライナ開戦後はウクライナを支持・支援する姿勢も見せていた。イ
スラエルはネタニヤフ新政権になって、それまでの中立姿勢を捨て、ウクライナ
や米国との関係が疎遠になっても構わずにロシア寄りの姿勢を強めている。
https://www.al-monitor.com/originals/2022/11/israel-abstains-un-vote-against-russia-over-ukraine-war
Israel abstains on UN vote against Russia over Ukraine war
https://www.timesofisrael.com/ukraine-alleges-israeli-fms-call-with-lavrov-proves-israel-changed-stance-on-war/
Ukraine alleges Israeli FM's call with Lavrov proves Israel changed stance on war
コーヘン外相は1月3日には外相就任時の省内向け演説で、イスラエル政府は今後
ウクライナ戦争について以前より何も語らない傾向を強めると表明している。コ
ーヘンは、ウクライナに対する人道支援は今後も積極的に続けるとも表明したが、
これは裏を返すと、ウクライナに対する軍事支援はもうやらない・減らすという
意味だ。イスラエルは独自開発した迎撃ミサイルシステム「アイアンドーム」を
持っている。ウクライナは以前から、対露戦争用にそれを一揃え譲ってくれと
イスラエルに求めたが、色よい返事をもらえていない。ネタニヤフ新政権は、
前政権よりさらに、アイアンドームをウクライナに渡さない姿勢を強めている。
ウクライナ政府はイスラエルに対して怒りを表明している。
https://www.rt.com/news/569311-cohen-ukraine-policy-israel/
Israel signals Ukraine policy shift
https://www.timesofisrael.com/liveblog-january-3-2023/
Ukraine's envoy criticizes new Israeli FM for phone call with Russia's Lavrov
12月30日には、首相に就任した直後のネタニヤフに対してゼレンスキーが電話を
かけ、アイアンドームを譲ってくれと頼んだが断られた。その報復にウクライナ
は、同日に国連総会で票決・可決されたパレスチナ問題のイスラエル非難決議に
賛成票を投じた。イスラエルとウクライナの関係は悪化する一方だ。
https://www.palestinechronicle.com/report-ukraine-exacts-revenge-on-israel-at-un/
Ukraine Exacts Revenge on Israel at UN
https://www.zerohedge.com/geopolitical/incoming-israeli-foreign-minister-shocks-previewing-pro-russian-policies
Incoming Israeli Foreign Minister Shocks By Previewing Pro-Russian Policies
ネタニヤフは1月4日、今後は国際社会からの圧力に従うことよりもイスラエルの
国益を優先する外交政策をとる、と表明した。その意味するところは「パレスチ
ナ問題で欧米から批判されても無視して、イスラエルの国益のためにパレスチナ
に対する弾圧を続ける」という話のほかに「欧米からロシアを敵視しろと加圧さ
れても拒否し、イスラエルはロシアと仲良くする。ロシアは、イスラエルの安全
にとって重要なシリアの制空権を握っているから」という話でもある。
https://www.rt.com/news/569403-israeli-netanyahu-foreign-policy-change/
Netanyahu announces foreign policy change
https://responsiblestatecraft.org/2023/01/03/new-israeli-government-challenges-us-on-ukraine-palestinians/
New Israeli government challenges US on Ukraine, Palestinians
ネタニヤフは就任早々、イスラエル軍にシリアのダマスカス空港を空爆させてい
る。シリアの空港などには、イスラエルの仇敵であるイランの民兵団が拠点を作
って軍事物資を置いている。イランは、シリア内戦でずっとアサド政権を支援し、
シーア派の民兵団をシリアに派兵してシリア政府軍を助けてきた。イランはアサ
ド政権を守るためだけでなく、イスラエルと隣接するシリアに派兵することで、
シリアからイスラエルを攻撃することも試みている。これはイスラエルにとって
大きな脅威なので、イスラエル軍はシリア国内のイラン民兵団の拠点を探して
空爆する先制攻撃をやり続けてきた。
https://www.zerohedge.com/geopolitical/fresh-israeli-strikes-shut-down-damascus-international-airport
Israeli Strikes Shut Down Damascus Airport Days After Netanyahu Govt Sworn In
シリアの制空権はロシア軍が握っており、イスラエルはロシアの黙認を得ない限
りシリアを空爆し続けられない。ロシアがその気になれば、シリア領空内に飛ん
できたイスラエルの爆撃機やミサイルを迎撃できる。だが、ロシアはそれをやっ
ていない。ロシアは、イスラエルのシリア空爆を黙認することで、イスラエルが
親露的な姿勢を強めるように仕向けている。シリア内戦は、米国がシリア国内の
イスラム過激派(アルカイダIS同胞団)を軍事支援してけしかけてアサド政権を
転覆しようとして2011年に始まったが、アサドを転覆するとシリアは永久に混乱
した(リビアやアフガニスタンのような)失敗国家になってしまうので、混乱拡
大を嫌った米オバマ政権が2015年、アサドへの軍事的なテコ入れをロシアに任せ、
米国側(ISカイダ)の敗北を容認した(それ以前からイランはアサドを軍事支援
していた)。
https://tanakanews.com/151221syria.htm
シリアをロシアに任せる米国
https://tanakanews.com/200111israel.htm
イスラエルが対立構造から解放される日
それ以来、シリアはロシアとイランの協力を得たアサド政権が内戦を平定してい
き、今ではアラブ諸国や国際社会がいつアサドを正当なシリアの政権として認め
るかという外交的な時間の問題になっている(この状態がかなり長引いている)。
以前は米国の下請けとしてアサドを敵視し、ISカイダを支援していたエルドアン
のトルコも、今ではアサドの勝利を認めざるを得なくなり、先日はロシアの仲裁
で、トルコとシリアの国防相どうしがモスクワで会談するところまできた。ロシ
アは、今年中にエルドアンとアサドの首脳会談をやろうとしている。わずかに
残っている米軍のシリア撤退も時間の問題だ。
https://tanakanews.com/211013syria.php
許されていくアサドのシリア
アサド政権を支えるロシアの中東覇権は強まる一方だ。アラブ諸国やトルコがア
サドと仲直りすると、イスラエルはアサドを敵視できなくなる。イランとの敵対
も緩和せざるを得なくなる。その前にシリア国内のイラン民兵団の拠点をできる
だけ空爆しておきたいイスラエルは、ロシアと良い関係を崩さないことが重要な
国益になっている。
https://tanakanews.com/210731iran.php
イランが初めてイスラエルに反撃。米の衰退を象徴
中東ではロシアとともに中国の覇権も拡大している。12月に習近平がサウジアラ
ビアを訪問してペトロダラーからペトロ元への転換を呼びかけたのが象徴だ。ウ
クライナ開戦後、中国とロシアは結束を強め、非米側の中心になっている。サウ
ジやトルコ、インドなども非米側に入る傾向だし、イランも中露に支えられてい
る。露中など非米側の中東覇権が拡大するほど、米国の覇権が小さくなる。イス
ラエルはかつて米国の覇権運営を牛耳って自国の強さにしていたが、米国の覇権
低下とともに、その策略は意味がなくなっている。米国でなく露中との関係を親
密にしないと、もうイスラエルを守れない。
https://tanakanews.com/221230china.htm
中国が非米諸国を代表して人民元でアラブの石油を買い占める
https://tanakanews.com/221221Saudi.htm
中露が誘う中東の非米化
米国とイスラエルの関係は、オバマの時に悪化し、トランプの時に親密になった
が、バイデンになって再び疎遠になった。バイデン政権はイスラエルの西岸占領
を非難し、西岸に東エルサレムを首都とするパレスチナ国家を作る「2国式」に
こだわっている(トランプは逆にパレスチナ問題の矮小化と、2国式の換骨奪胎
につとめ、イスラエルを喜ばせた)。新任のネタニヤフ政権は、過激なユダヤ教
右派の2つの政党との連立で、イスラエル史上最も極右な政権と言われている。
ネタニヤフは連立政権を作るに際し、ユダヤ教右派を取り込むために、右派2党
の党首を国家安全保障や西岸運営の担当閣僚に据え、右派が西岸に入植地をすき
なだけ増設できる状況を作った。これに対し、バイデン政権の米国からは批判の
声が出続けている。
https://tanakanews.com/170513palestin.htm
よみがえる中東和平
https://tanakanews.com/200606mideast.php
トランプの覇権放棄としての中東和平の終わり
米国からの批判や2国式の強要に対し、ネタニヤフらイスラエルの右派は「外国
人は余計なことを言わないでくれ」という態度をとっている。ネタニヤフの連立
政権の中には、同性愛や性転換を敵視する宗教政党も入っており、同性愛や性転
換が好きな米国の民主党勢力との対立が強まる要素になっている(プーチンのロ
シアは、同性愛や性転換に批判的で、その点でイスラエル右派と気が合う)。米
国の覇権が今後も強いなら、ネタニヤフは米国に対してここまで強い態度をとら
ないだろう。米国の覇権が今後、中東でも経済でも不可逆的に弱まっていくと予
測されるので、イスラエルは米国からの離反を強めている。
https://www.ynetnews.com/article/bkxgw1lho
Netanyahu says 'won't bow his head' to U.S. in wake of election comeback
https://www.zerohedge.com/geopolitical/sullivan-dispatched-israel-over-concerns-democratic-backsliding
Sullivan To Visit Israel, Meet With Netanyahu, On Concerns Of Democratic Backsliding
パレスチナ問題はイスラエルにとって、米国だけでなくアラブやイスラム世界と
の関係改善の際にも大きな問題になってきた。だが最近は、サウジなどアラブ諸
国が、パレスチナ問題の完璧な(2国式)解決をイスラエルとの和解に不可欠な
条件にしない傾向になっている。米国のトランプ前大統領はイスラエルとアラブ
諸国を和解させる「アブラハム協定」を提案し、これに沿って2020年にUAEやバ
ーレーンなどがイスラエルと国交正常化した。アラブとイスラムの盟主であるサ
ウジは、パレスチナ問題の未解決を理由に、アブラハム協定の話に乗ってイスラ
エル側と接触しつつも合意していない。だが、最近のサウジは態度を緩めている。
https://tanakanews.com/200817UAE.php
イスラエルUAE外交樹立:中東和解の現実路線
https://tanakanews.com/210428mideast.php
イランとサウジが和解。イスラエルは?
イスラエルのメディアによると、サウジ王政は米政府との話し合いの中で、パレ
スチナ問題と無関係な3つの要求を米国が呑んだら、アブラハム協定をイスラエ
ルと結んで国交正常化しても良いと言ったという。3つの要求とは、1.米サウジ
同盟の公式化。 2.NATO諸国と同量の兵器を米国から輸入できるようにすること
。 3.サウジが民生用原発を作ることを米国が了承すること、だという。
https://sputniknews.com/20221206/saudi-leaders-gave-us-three-demands-for-joining-abraham-accords-israeli-media-says-1105116440.html
Saudi Leaders Gave US Three Demands for Joining Abraham Accords, Israeli Media Says
サウジとの和解をめぐってイスラエルのメディアはガセネタを流すことで有名な
ので、この話は怪しい感じもする。だがその一方で、ネタニヤフと連立政権を組
んでいるイスラエルの極右勢力は、サウジとイスラエルが和解・国交正常化する
ことに賛成している。なぜなら、サウジがイスラエルと和解するなら、それはサ
ウジがパレスチナ問題の2国式解決を放棄する(またはトランプ式の換骨奪胎を
容認する)ことであり、イスラエルの極右がこれまで西岸のパレスチナ人の土地
を奪って作った広大な入植地が国際的にイスラエルの一部として認められる(代
わりに同じ広さの砂漠の荒れ地をパレスチナ人に与える)ことを意味するからだ。
これはイスラエル右派の勝利を意味する。その実現のためにも、イスラエルは多
極化とともに頼る先を米国から露中に替えて、国際政治力を維持する必要がある。
https://thecradle.co/Article/News/19834
Israeli far-right officials ‘would not stand in way' of Saudi normalization
https://libertarianinstitute.org/news/netanyahu-says-us-must-reaffirm-alliance-with-saudi-arabia/
Israel's Netanyahu Vows To Seek Normalization With Saudi Arabia
完璧な2国式でパレスチナ問題を解決しようとすると、イスラエルに入植地を放
棄させて土地をパレスチナ人に返還することが必要だ。今後の中東和平の仲裁者
(=中東の覇権国)が米国なのか露中なのかに関わらず、完璧な2国式を実現す
るのはほぼ不可能だ。可能だとしても、途方もない年月がかかる。すでにパレス
チナ問題は80年間続いており、米国が中東和平を仲裁してからでも30年経って
いる。年月をかけても解決しない。これまでの覇権国である米英は、もともとパ
レスチナ問題を作った勢力だ(戦前の英国の二枚舌外交)。歴史的な責任を負わ
され、最初からの話にこだわらざるを得ない。それに比べると、今後の中東覇権
国である露中は、もともと中東を支配しておらず「米英が崩壊するので覇権を引
き継いただけ」なので、引き継いだ時点での状況に立脚して現実的に問題を解決
できる。
https://tanakanews.com/220622israel.php
覇権の暗闘とイスラエル
https://tanakanews.com/211015iran.htm
解体していく中東の敵対関係
習近平は12月のサウジ訪問時、2国式のパレスチナ問題の解決を支持すると表明
した。米英と同様、中国も2国式に拘泥して泥沼にはまるのか??。多分違う。
「2国式」は建前としての合言葉だ。中共の姿勢は「アラブ諸国が2国式の解決
を望むなら、それを支持する」だ。トランプ・オルメルト案など、完璧から遠い
「なんちゃって2国式」で解決をはかるのが、中国にとっても現実的だ。
https://www.palestinechronicle.com/chinese-president-xi-affirms-support-for-palestines-full-un-membership/
Chinese President Xi Affirms Support for Palestine's Full UN Membership
https://tanakanews.com/211230israel.php
米覇権衰退で総和解があり得る中東
サウジもイスラエルも中露もトランプも、2国式は「なんちゃって」の方が好み
だ。完璧な2国式に拘泥する感じを演出してイスラエルに圧力をかけているのは
民主党の米国だけだ。左傾化した米民主党は、米諜報界(隠れ多極派)に牛耳ら
れ、非現実的でイスラエルを苛立たせるだけの2国式の加圧を続け、イスラエル
を米国から離反させてロシア非米側に押しやる動きにうっかり拍車をかけている。
https://original.antiwar.com/ramzy-baroud/2023/01/05/criticizing-or-whitewashing-israel-netanyahus-new-government-accentuates-wests-hypocrisy/
Criticizing or Whitewashing Israel: Netanyahu's New Government Accentuates West's Hypocrisy
https://responsiblestatecraft.org/2022/12/07/bibi-is-back-and-providing-fresh-political-land-mines-for-us/
Bibi is back and providing fresh political land mines for US
極右たちの連立であるネタニヤフ政権は、イスラエルを、オルバンのハンガリー
みたいな右派ポピュリズムの国にしていくと予測されている。オルバンのハンガ
リーは、エリート覇権主義の米英EUから敵視され、プーチンのロシアや、右派ポ
ピュリズムのトランプの米共和党と相性が良い。エリート覇権主義の米英EUは、
ウクライナ戦争やコロナ愚策やインチキ温暖化対策で自滅していく。極右連立は、
多極化に呼応したイスラエルの生き残り戦略なのかもしれない。
https://responsiblestatecraft.org/2022/11/03/will-biden-stand-up-to-israels-new-far-right-government/
Will Biden stand up to Israel's new far right government?
https://www.al-monitor.com/originals/2022/11/netanyahus-right-wing-coalition-could-upend-israeli-democracy
Netanyahu's right-wing coalition could upend Israeli democracy @BenCaspit
イスラエルの対米離反・対露接近は、ドルの基軸性を含む米国の覇権低下が決定
的であることを示している。金融筋のプロパガンダを軽信して「ドルや米国中心
の債券金融システムは今後もずっと強い」と思っている人がけっこういて、そう
いう人々から私の分析に対する「違和感表明」のメールがときどき届く。だが、
国際金融やマスコミ(情報操作力)を握るユダヤ人たちが作った国であるイスラ
エルが、国家存続のために米国との親密性を放棄して露中にすり寄っている。そ
れを見ると、もうドルや米覇権が再び隆々と世界を席巻することはなく、米覇権
がまだまだ強そうに見えるのは作られた幻影なのだと感じられる。
https://tanakanews.com/230106oil.php
多極化の決定打になる中国とサウジの結託
https://tanakanews.com/221117credit.php
債券金融システムの終わり
この記事はウェブサイトにも載せました。
https://tanakanews.com/230108israel.htm
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