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市民の抗議運動には、価値付けられるものとそうでないものがある
<記事原文 寺島先生推薦>
Worthy and Unworthy Protest
https://libya360.wordpress.com/2022/11/30/worthy-and-unworthy-protest/
筆者:マーガレット・キムバレー(Margaret Kimberley)
出典:INTERNATIONALIST 360°
2022年11月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年12月8日
2021年、ロンドンでの「法案を潰せ」抗議活動に参加中の市民たち (Photo: Extinction Rebellion)
抗議活動が祝福される国々もあれば、抗議活動が無視される国々もある。抗議活動は、人権として尊重されるべきものだが、政権転覆といったよこしまな動機のために利用されることもある。
英国と北アイルランドは抗議活動を不法行為にする法律が成立する瀬戸際に置かれている。「治安秩序法」案が下院を通過し、貴族院で承認され、法律になる見通しだからだ。この法案は、「国の生活基盤施設を妨害」したり、建築や交通を遮る、いかなる抗議活動も禁じている。この法案により、警察権力は、「合理的な理由」なしで、捜査が可能になる。この法律では、「治安維持に対する深刻な行為を防止する命令 (SDPO) 」が認められている。この規則は意図的に曖昧に作られているので、違反する可能性さえあれば、警察は対象者を逮捕する権利が与えられ、最長2年間は次の抗議行動に参加できなくなる。この禁止に伴い、警察は、この法律に違反していると思われるものは誰に対しても、電子的に監視する権利が与えられる。これらの措置により、市民によるいかなる大規模な抗議活動を事実上阻止することができる。これらの条項に違反した者は、有罪が確定すれば、最大51週間、刑務所に収容される可能性がある。
保守のトーリー党政権は、この治安秩序法を通過させる構えで、「野党」の労働党は、この件や、この件に類似する別の件に反対する様子はほとんど見せていない。もとは左翼だった労働党は、万一政権を奪還したとしても、この法案を廃案にするどころか、 それを厳しく批判することすらしないという様相を呈している。
このことを念頭に置いた上で、英国は常に、イランや中国の抗議活動を支持する姿勢を示していることを見ることが肝要だ。英国の外務大臣は、イラン政府を.厳しく非難して、こう語っていた。「我が国の今のイラン政府に対する見方ははっきりしています。外国の関係者を非難するのはやめて、自国民が持つ懸念に責任を持ち、耳を傾けなさい、ということです」と。英国民が、自国政府が国民からの声に聞く耳を持たないと感じても、集団行動を起こすことで、そんな声を伝えることはもはや不可能になるのだ。刑務所に放り込まれる覚悟があれば別だが。
明らかに、ある抗議活動は、他の抗議活動よりも価値があると見られているのだ。そしてそれらの抗議活動にどう対応するかは、完全に政治的な判断だ。
ハイチでの大規模な抗議活動は、米国や新興財閥たちが、国民に押し付けた傀儡指導者たちに対するものだった。その米国や新興財閥たちは、カリブ海の石油を、自分たちの利益のために盗んでいた。それなのに、これらの抗議活動は、無視されるか、無法者による運動だと誤った捉えられ方をされている。ハイチ国民による抗議活動は常に、注意を払うべき価値のあるものだとしては扱われていない。
欧州各国市民たちも、自国政府に対する抗議活動を行っている。ライプツィヒでは、ドイツ国民が「米国は国に帰れ」と叫び、77年間駐留している米軍に出ていくよう求めていた。フランスやチェコ共和国では、何千もの人々が集まり、自国がNATO加盟国から抜けるよう要求していた。これらの抗議活動は、EUの各国政府が、米国とともに、ロシアに制裁を加えていることに繋がるものだ。この制裁により、何百万もの人々に、インフレとエネルギー不足が引き起こされているからだ。しかしこれらの抗議活動も、無視されるか、「極右勢力」だと決めつけられ、主張の正しさが否定されている。
このような抗議活動者たちが、米国でほとんど注目されていない理由は単純だ。これらの抗議活動が、ワシントンの政策と相容れないものだからだ。
市民に抗議する権利があることは、国際法で認められている。しかし米国や米国の友好諸国から出される声明は、政府の干渉により常に毒されている。イラン国民は、警察に留置された一人の若い女性の死亡に対して政府に抗議活動を起こしたが、米国は、警察が年間1000人の市民を殺害することを許可している。さらに米国には、イランの内政に干渉してきた長い歴史がある。多くの政治家や世論形成者は、そのことはイラン政府の政権転覆を狙ったものであったと公言している。この同じ手口が、中国でも繰り返された。中国で起こったゼロコロナ政策に対する抗議活動は、中国共産党や中国の政治体制全般に対する抗議活動であるとされたのだ。
米国市民や欧州市民がすべき最善の行為は、まず自国の政策や政治を見直すことだ。衝動に駆られて、人権問題複合体*を後追いし、間違った結論を出してはいけない。そんなことをすれば、自国政府の邪悪な目的に手を貸すことになるだけだ。
*「軍産複合体」をまねた造語。様々な人権の擁護のために活動している組織の集合体。
我が国(米国)の市民たちは、世界最大の刑務所体制のもとで生活している。さらに健康福祉体制も先進国と見られている国の中で最悪だ。賃金は低く、セーフティ・ネット(困窮者緊急救済保証)は意図的にビリビリの穴だらけにされている。学生の学費の借金や、医療費の借金が何千ドルにもなる危険がある国に住む国民が、自分たちと同様の酷い状況下で生活していない他国民よりも自由であると、どうして言えるのだろうか?
米国の例外主義は、強力な麻薬であり、他のことでは分別のあるふるまいができる人でも、この件に関しては、自分たちはよい暮らしをしていると思わされ、世界各国の人々は、自分たちが守ってあげないといけない存在である、と思わされてしまうのだ。米国の大統領が選挙に勝ち、大統領府に入れるのは、国民が何を必要としているかについて、嘘をついているからだ。米国大統領は大統領府に入るやいなや突然、自分の手は縛られているから、選挙運動のときにした公約はどれもを果たせなくなった、と宣言し出すのだ。
こんな二枚舌を通用させるのに必要なことは、他の国々を悪い国であると描くことだ。 そうすることで、政府は意図的に人々の意志に障害を与え、人々は残りの人類に対して強力な権利を有する陣営に与するよう説得される。もちろん、政府は人々に自分たちが政権転覆という夢にほだされている事実や、世界中の人々の意志を弱体化させる方策を模索し続けているとは伝えない。その一方で、自分たちは、慈悲深いという印象を与えようとする。
米国民も欧州市民も、人権問題が心配なら、まずは自国の人権問題を見つめることから始めないといけないことを悟るべきだ。そうすれば、他の国々の人々の苦境について、いつ意見を述べればいいかが分かるだろうし、自分たちが他国にしか存在しないと思っている権威主義的な政権のもとで自分たちも暮らしている事実におそらく気がつくはずだ。
このような政治的判断が下されるのは、抗議活動の件だけではない。英国メディアは今、一体となって怒りを示している。それはBBCの記者が逮捕され、短期間拘束されたからだ。中国の上海で、抗議活動を取材中のことだった。もちろん、記者が罰を受けることを恐れることなく、仕事ができるというのは当然のことだが、その英国自身は、米国の要請を受けて、記者のジュリアン・アサンジを未だに投獄している。
米国・EU・NATOが、世界全体を支配しようとし続ける限り、世の中の風潮は、「偽善」であり続けるだろう。ハイチやフランスやドイツやイランの人々は皆、抗議活動が可能であるべきだし、主権を求める要求は尊重されるべきだ。 彼らが、自分たちが求めるような暮らしを送れていないとしたら、それは米国のせいだ。彼らから権利を奪った張本人として最もありえそうなのは米国だからだ。
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