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カタールとアメリカのガスはヨーロッパを救わない
2022年10月11日
ウラジーミル・ダニーロフ
New Eastern Outlook
ワシントンが解き放ったエネルギー崩壊を緩和して、GDPの壊滅的下落と経済不況が長期化するリスクを避けるために、ヨーロッパ諸国にる総計1兆ユーロ以上の公共支出を専門家たちは予想している! これほどの規模の危機は更なる破産と金融部門でのドミノ効果や、企業の投資計画規模の縮小や消費者需要の減少をもたらす。主要な悪影響はガス不足と上昇するエネルギー・コストのために多数の大半のエネルギー集約的産業が競争力を失うことだ。どんなシナリオが展開するか次第で、そうした産業は2021年と比較し60%も生産を落とすよう強いられるはずだ。更に企業閉鎖は雇用削減を招き、最大150万人が影響を受ける。
こうした状況の下、ヨーロッパにとって一番の目標はエネルギー危機からできるだけ早急に脱出することと、ヨーロッパ人自身が課した対ロシア制裁に影響されないEU市場へのガス供給者を見つけ出すことだ。
ワシントンからの圧力で、ヨーロッパはノルドストリーム1と2で送られる安価で保証されているガスを放棄した。ヨーロッパはアメリカと共犯者によるバルト海の二つのパイプラインへのテロ攻撃まで受けた。こうした状況で、EUは彼らとの協力を強化し悲惨なエネルギー供給状況を良くしようと望んで世界のLNG供給者に注目するよう強いられている。
カタールは総出荷の26.5%を占め世界LNG市場を率いていることで有名だ。オーストラリアは26%で第二位で、アメリカ (14.7%)とロシア(10%)は、それぞれ第三位と第四位だ。
ところが、アメリカはロシアとガス戦争を始める際にヨーロッパにガスを供給すると偉そうに宣言しておきながら、ヨーロッパ人が実際にロシアを市場から追放した後、既に実際はEUにガスを提供できないと宣言した。アメリカのシェール燃料投資家はこれまでの生産量が最善だと認めている。それゆえ、既にアメリカのシェール石油とガス生産者はヨーロッパがこの冬のエネルギー危機に対処するのを支援すべく生産を増やせないと警告したとフィナンシャル・タイムズは報じている。
中近東のこの小国カタールは様々な理由からヨーロッパとよりもアジアとガス取り引きをするのを好んでいる。第一に、輸送距離がより短いのだ。そして第二に、カタール指導部はEUエネルギー輸出に関する政治的要求に極めて敏感なのだ。更にカタール・ガスの主要消費者中国が、LNGの1,000立方メートルごとに割増料金を払ってくれることも重要だ。
この背景と、対ロシア制裁やロシアの燃料供給大規模削減で, ヨーロッパにおけるガスのコストは急速に上昇し続けている。価格上昇に何かすべく、EUは2022年8月1日から2023年3月末までガス消費を15%削減するというユートピア風決定をした。多くのヨーロッパ人はそうするのを拒否したが。更に欧州委員会委員長は減らす。何よりも世界で機能している経済法則から遥か隔絶したウルズラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエンはエネルギー危機のさなかにEUは輸入ロシア・ガスに上限価格導入を考えていると宣言した。ところが予想通り、商品のどんな供給者に対しても, 実際WTOの規則にも矛盾するこの措置にEU加盟諸国はこれまでのところ合意できていない。
こうした状況の下, ヨーロッパ指導者たちは 少なくとも個別国家レベルで、カタールとの追加ガス供給で合意に達しようとする取り組みを強化している。この理由で、様々な地位の多くのヨーロッパ政治家たちが過去六カ月カタール訪問を繰り返している。
アジアにガス供給する誓約さえ犠牲にすることを含め、ヨーロッパにもっと多くのガスを供給するようにというカタール説得にアメリカも加わっている。“ワシントンの戦略家たちによれば”中東全体で最大の米軍基地がカタールにあることを考えれば、アメリカがカタールに圧力をかけるのは難しいことではない。つまりノルドストリーム1と2に対するテロ攻撃に似たことのために“破壊工作者”を忍び込ませたり爆薬や組織的な作戦をしたりするのは不要なのだ。更にカタールをアメリカにしっかり縛りつける狙いで、今年二月早々カタール首長タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニーのホワイトハウス訪問時にアメリカ大統領ジョー・バイデンはカタールは“主要な非NATO同盟国”で、首長は“良き友人で、信頼できる有能なパートナー”だと言った。更にアメリカ大統領は間もなくカタールに“主要な非NATO同盟国”地位を与えると約束した。
現在カタールは約5-1000万トンのLNGをヨーロッパに売っている。今後5年から10年は、カタール・エネルギー大臣サード・アルカービがロンドンでのエネルギー・インテリジェンス・フォーラム会議で、状況がこのままで、ヨーロッパ諸国が他のエネルギー源で苦闘し続けている限り12-1500万トンのカタール天然ガスがヨーロッパに絶えず流れると約束した。だが、最近アメリカからのLNG供給でドイツが署名した15年契約でドーハが強気になりLNG供給でEUが長期契約に署名するようカタールは要求している。ドーハは生産を強化するため今後五年間で何百億ドルも投資する計画のカタールがその中で主要な解決策になり得るロシア・ガス代替品を見つけるヨーロッパ計画にも後押しされている。同時にカタールはアメリカとの契約と違って買い手には供給者を変える余地がほとんどない厳しい条件を課している。ところがEU指導者はデマゴギー的に公害を減らすという狙いの自分たちの立場を説明してより短期の契約を要求しているが、このため既に三月以来輸入期限交渉は止まっている。ヨーロッパ指導者によるEUの“公害低減の動き”というデマゴギーは益々多くのEU諸国が積極的に石炭に切り換えていることを考えればお笑いに他ならない。
10月5日ヨーロッパとのガス取り引きに合意する狙いでのミロシ・ゼマン大統領の公式招待でカタール首長タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニーがチェコ共和国を訪問した。交渉が成功すれば、エネルギー危機のさなかにガス供給の代替手段を確立できるとEUが願っていたのでこのカタール首長との会談はチェコとヨーロッパ当局全般にとって重要だった。つまりロシア・ガスに対する代替だ。この点、カタール指導者10月7日にEU加盟国指導者との非公式会談で話す予定で、訪問自体数日続くと予想されていた。ところが、会談は大変なスキャンダルと化した。10月5日、首長にはチェコ到着直後にミロシ・ゼマン大統領と、彼の飛行機がプラハを発つ前にペトル・フィアラ首相と会う時間しかなかった。チェコ外交筋の説明では“カタール側はチェコ側が受け入れられない提案要をした。”
状況をより明らかにするには、カタールの地理的位置がガス供給チャンネルという点で自由裁量があることを想起すべきだ。現在カタールLNG生産の68%がアジア向けで、27%がヨーロッパ向けだ。ヨーロッパは年間約4500億立方メートルのガスを消費し、ロシアはその量の約半分を供給していた。それゆえヨーロッパ市場でガス戦争を始めた時に結ばれたロシア・ガスの代替品としてのアメリカの150億立方メートルLNG提案 (パイプラインのロシア・ガスよりも高い価格) は見せかけだけのごまかしで、ヨーロッパ・ガス市場への明らかな非競争闘争にしか見えない。だから、ロシア・ガスを完全に放棄するよう強いてアメリカがしっかりEUを危険にさらした際それは、ウルズラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエンやシャルル・ミシェル欧州理事会議長やジョセップ・ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表など明らかにアメリカに買収されている一部のEU指導者を除いて、既に昔から誰にとっても明らかだった。
ロシアがLNGタンカーで、まさにリトアニアのクライペダに供給しているのは秘密ではなく、リトアニアはカタール・ガスを受け入れていると主張する。ところが現実にはロシアとカタール間には実に簡単な合意がある。ロシア・ヤマルのLNGをリトアニアに供給するが、それはカタールのものと見なされ、カタールはLNGを中国に供給するが、それはロシアのものと見なされている。運賃も節約でき、この状況でドーハはヨーロッパを救うという“高貴な考え”を放棄せずに済むので、この構図はカタールにとってありがたい。
更に長距離液化ガス輸送に使われる標準的なガス輸送船の平均容量は145,000立方メートルであることも忘れてはならない。この量のLNGから、再ガス化後、9000万立方メートルのガスが得られる。ノルドストリーム2を封鎖した後、ドイツが失った少なくとも550億立方メートルのガスを埋め合わせるには611回の航海が必要で、各航海は14日かかる。ところが一隻のガス運搬船は一カ月に一回しか航行できず、石油、乗組員給与と船の賃貸料を含め輸送自体に数十万ドルかかる。
基本的にアメリカは少なくともノルドストリーム2の分だけEUを補うほど多くの特殊タンカーを保有していない。それゆえヨーロッパの危機を引き起こしたアメリカのいかがわしい合意、つまりワシントンによるこれら露骨な反ヨーロッパ計画の執行者が一体誰で、普通のヨーロッパ人の貧困と苦境から連中がどれだけ個人的利益を生み出したかをヨーロッパの人々は本格的に調査する必要がある。
ウラジーミル・ダニーロフは政治評論家、オンライン誌「New Eastern Outlook」独占記事。
記事原文のURL:https://journal-neo.org/2022/10/11/qatari-and-us-gas-won-t-save-europe/
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