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コロナ感染防止効果はせいぜい2割なのに…なぜ日本人はマスクを外さないのか どうする、どうなる「日本の医」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/306653
2022/06/14 日刊ゲンダイ
マスクなしで、カフェで寛ぐ人々(フランス・パリ=5月)/(C)日刊ゲンダイ
なぜ、日本人はマスクを外さないのか。「他人の目が気になる」などの民族性を指摘する声もあるが、理由はそれだけではない。マスクの効果について、正確な情報が国民に伝えられていないことも大きい。
実は、マスクがコロナ感染を予防する効果は低く、かつ効果があるという医学的なコンセンサスはない。今年2月、韓国のサムスンメディカルセンターの医師たちがコロナに対するマスクの効果を検証したメタ解析を「医療ウイルス学」誌で発表した。本稿でご紹介しよう。
メタ解析とは、複数の臨床試験をまとめて解析することだ。
臨床試験は、特定の集団に介入するため、環境や対象を変えれば、結果が再現されるとは限らない。異なる環境で実施された複数の臨床研究をまとめて解析してはじめて、その結果が一般化できる。臨床医学の世界では、メタ解析の結果は「最高レベルのエビデンス」と評価される。
では、韓国の研究はどんな結果だったろうか。彼らは新型コロナに加え、同じコロナ属の重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスに対するマスクの予防効果を併せて検証した。その際、医療従事者が着用するN95という特殊なマスクと、一般人が着用するサージカルマスクについて、別個に解析した。
まずは医療従事者がN95マスクを着用した場合の効果だ。報告されている14の臨床研究をまとめると、感染リスクを71%も減らしていた。極めて有効だ。ただ、N95マスクは着用すれば息が苦しくなり、一般人が日常的に着用するのは難しい。
サージカルマスクはどうか。医療従事者を対象とした12の臨床試験をまとめると31%、一般人を対象とした2つの臨床試験をまとめると22%感染のリスクを減らしていた。しかしながら、両方とも、その差は統計的に有意ではなかった。これは、研究で示された有効性は単なる偶然でも説明が可能で、医学的には効果は証明されていないことを意味する。
ちなみに、この結果はインフルエンザに対するマスクの有効性を検証したメタ解析の結果とも同じだ。先行研究とも一致し、今回の研究結果は信頼できそうだ。以上の事実は、一般人がマスクをつけた場合の有効性は医学的に証明されておらず、もしあったとしても2割程度ということになる。
マスクの効果には限界がある
だから、マスクは着けるべきでないと、私は主張するつもりはない。ただ、現在の医学的エビデンスに基づけば、嫌がる人に装着を無理強いする必要はないし、そもそもマスクの効果には限界がある。皮肉なことだが、装着していない人が周囲にいても、そこまで気にする必要はないのかもしれない。こう考えるだけで、日常生活のストレスは緩和されるはずだ。マスクの着用については、科学的な議論が必要である。
上昌広 医療ガバナンス研究所 理事長
1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。
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