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2023年2月8日 11時30分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/229888
重度訪問介護(重訪)を利用する障害者の女性=東京都大田区=が今年1月、新型コロナに感染して都立病院への入院を求めたが、受け入れられなかった。重度障害者のコロナ感染は生命に関わるため、当事者団体は昨年11月、都と都立病院14カ所などでの重訪利用を認めることを申し合わせている。当事者側は事情の説明を求めたが、都側は対面での話し合いを拒否。納得できない人たちが7日、都庁に申し入れに訪れた。(木原育子)
◆職員ら誰も近づかず
7日午後、都地域生活支援課の窓口。車いすに乗った重度障害者や支援者ら約40人が並んだ。職員らはちらっと目を向けるだけで、誰も近づかない。
待つこと10分。「あなたたちがこういう状況を導き出した」「命がかかっている」。怒りの声で、ようやく自席にいた東條左絵子課長らが窓口まで出てきた。
◆課長「いらっしゃると聞いていなかった」
東條課長は「いらっしゃると聞いていなかった。議会説明や予算要求があり、今日の話し合いは難しく…」と述べたが、重度障害者らでつくる「全国公的介護保障要求者組合」委員長の三井絹子さん(77)は「人の命より優先される業務って?」と、文字が書かれたボードを指さして訴えた。
なぜ当事者らはここまで怒っているのか。
発端は1月4日。脳性まひで言語障害がある前出の女性が新型コロナに感染し、5日夜に悪化して救急車を呼んだ。24時間介護の重訪を利用していたため、重訪を使っていいと取り決めがあった都立病院への入院を希望。だが救急隊が探してもどこにも入院できず、自宅待機になった。
◆都、拒否の理由「コロナで医療逼迫、夜間が原因」
これを聞いた三井さんや当事者団体の鈴木敬治さん(71)は10日に都に説明を求めたが、回答がなかった。19日に再質問すると、都は翌日、「急激な感染拡大で医療が逼迫ひっぱくしていたことや夜間であったことが原因」「これ以上は個人情報のため答えられない」などと答えた。
当事者らが話し合いを求めたところ、都は「30〜40分のズームなら対応できる」と回答。言語障害や会話に時間がかかるなど、それぞれ障害特性があり、ズームでのスムーズな話し合いが困難な当事者は怒り、突然の訪問につながった。
都庁に着いてから2時間40分後、話し合いが始まった。都感染症対策部事業推進課の宿岩雅弘課長は、当時の入院患者が4000人を超える状態だったことを踏まえ、「重訪の有無というより、医療態勢の逼迫が原因」と繰り返す。「なぜそんなに言い切れるのか」と当事者らは不信感を強め、議論は平行線をたどった。
当事者側は、受け入れられなかった理由や改善策を尋ねる要望書を提出。参加した女性は「1月10日に最初に問い合わせをしたときから『対応します』と言うだけで、話し合いの場を本気で持とうとしていない。しっかり説明してくれていたら、こんなことになっていないし、来たくて来たんじゃない」と発言した。
昨年11月、厚生労働省は重度障害者へのヘルパーや付き添いを入院時に認めるよう全国に通知している。障害者団体「DPI日本会議」地域生活部会長の今村登さん(58)は「重度障害者だから入院を拒否されたのではないかと不安になる。より丁寧な説明が必要だった」と指摘する。
◆「今回を機に、重訪を正しく理解するきっかけに」
東京家政大の田中恵美子教授(社会福祉学)は「一般の人なら断らなかったのではという問いは、多くの重度障害者が持つだろう。病院はコロナ以前から重度障害者が入院する際の重訪の利用に拒否的だったからだ。利用者が重訪を利用して入院したら、むしろ医療側は助かる。慣れ親しんだ支援者の生活介助で、スムーズに意思疎通できる。今回を機に、重訪を正しく理解するきっかけにしてほしい」と話した。
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