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現状に合っていない新型コロナ「2類」扱いの弊害…「5類」への変更が必要だ どうする、どうなる「日本の医」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/313354
2022/10/25 日刊ゲンダイ
感染すると従来の介護サービスが受けられなくなる
臨時国会で議論される感染症法改正の概要が明らかとなった。注目すべきは、新型コロナの扱いについて、2類から5類への変更が見送られたことだ。この仕組みでは今冬の流行には対応できない。
感染症法改正で最優先すべきは、現状に即して体制を変更することだ。現在、流行している変異株は、感染力は強いものの毒性は弱い。致死率は0.1%程度で、季節性インフルエンザと変わらない。
このような病原菌を2類として扱うことは弊害が多い。それは、保健所と急性期病院が対応の中核となり、それ以外の医療・介護関係者が蚊帳の外に置かれるからだ。
急性期病院が、今夏の第7波で果たした役割は限定的だった。我々が、公開データを基に大学病院など26病院の8月3日現在の患者受け入れ数を調べたところ、即応病床に占める入院患者数の割合は、慶応義塾大学126%、順天堂大学125%、日本大学123%のように100%を超えるところもあるが、19病院は、第7波真っただ中の8月3日でも空床を抱えていた。兵庫医科大学の稼働率は36%、国立国際医療研究センターの稼働率は42%に過ぎなかった。
病院の経営者に問題があった可能性も否定はできないが、第7波では、このような病院への入院が必要となる重症患者が、そもそも少なかったのだろう。都立病院に勤務する内科医は、「入院しているコロナ患者は、ほとんど中等症止まりで軽症も多かった」という。
では、2類だとどんな人が問題となるのか。それは高齢の要介護者だ。訪問看護サービス会社ビジナを経営する坂本諒看護師は、「感染すると従来の介護サービスが利用できなくなり、訪問看護サービスを利用しようにも、急いで医師に指示書を作成してもらうのは難しい」という。こうやって、コロナ難民が生まれる。
このような患者に対しては、その状況に合わせて、地域の医療・看護・介護スタッフが臨機応変に対応するしかない。ところが、2類に留め置く限り、こんなことは期待できない。それは、地元の医療・看護・介護従事者と保健所の関係が希薄だし、スタッフの感染による営業的、風評的損害を恐れる介護・看護・医療機関の経営者は、コロナ患者への対応を避けるからだ。
では、なぜ5類に変更しないのか。それは、2類のスキームを残せば、厚労省が差配し、保健所・医療機関・検査会社・宿泊療養施設など、多くの関係者が補助金などの利益にありつくことができるからだ。報告対象を高齢者や重症化リスクが高い患者に絞り込めば、業務が逼迫することもない。
当初、厚労省は世論に押される形で、コロナを5類に変更するつもりだった。ところが、9月に入り、世論の関心は統一教会問題や安倍元総理の国葬へと移ると、この変更を引っ込めた。コロナ迷走は当分続きそうだ。
上昌広 医療ガバナンス研究所 理事長
1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。
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