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2023年12月21日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/297198
<連載 「約束」の今 東京電力と原発>
「福島第1原発事故を起こした東京電力が、社会の皆さまから信頼してもらうことは簡単ではない。私が率先して説明責任を果たしていきたい」
20日の原子力規制委員会の定例会合で、東電の小早川智明社長は手元の原稿を早口で読み上げた。時折体を揺すり、やじが飛ぶ傍聴席に目をやる。委員の質問を理解できずに違う事柄を話し始め、制止される場面も。「肝に銘じます」と委員の指摘を受け入れる返答が目立った。
「テロ対策で東電は落第し、再試験を繰り返した。評定は『優』にはならない。『可』だ。合格ラインぎりぎりです」。伴信彦委員の指摘に、「その通りです」と力ない。約50分間の聴取で、小早川社長が小声になった場面が別にもある。
杉山智之委員から「決意は世の中への約束か」と問われた時。言いよどみ手ぶりが増え、言葉はしどろもどろだった。「私は世の中への約束を委員会を通じてさせていただいている」
◆海洋放出の開始数時間前にようやく福島県漁連を訪問
「説明責任を果たす」とは裏腹に、東電が「廃炉の大きな節目」と強調する福島第1原発での処理水の海洋放出の経過を振り返ると、会社として、社長としての主体性は全くなかった。
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「柏崎刈羽原発を運転する事業者の責任として、福島第1原発の廃炉を主体的に取り組む」(柏崎刈羽原発の保安規定より)
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柏崎刈羽の再稼働に向け、2017年に福島第1の廃炉の完遂を宣言した東電にとって、海洋放出の実現は重要課題。反発する福島県漁業協同組合連合会と15年に交わした「関係者の理解なしにいかなる処分もしない」との約束をどう果たすのかが焦点となった。
政府が21年春に放出方針を決めると、小早川社長は「主体性を持って適切に取り組む」と述べた。しかし、漁業者たちに会いに行こうとすらしなかった。放出前の今年7月の時点でも「要望があれば会いに行く」と受け身の態度を続けた。
県漁連を訪れたのは放出が始まった8月24日。開始の数時間前に決意を伝えたという。トップが自ら理解を求めることはなく、その日の記者会見では「政府が前面に立って一定の理解をいただいた」と、人ごとのように締めくくった。
20日の聴取後、東電にとって主体性とはどういうことかと本紙がただすと、小早川社長は早口でまくしたてた。「海洋放出は総理大臣自らが意思決定すると言われ、われわれは実施主体としての役割を果たした」
<連載 「約束」の今 東京電力と原発>全3回
福島第1原発事故を起こした東電が、柏崎刈羽の再稼働に向けて自らに課した「約束」は守られているのかー。その現在地を見た。(渡辺聖子、小野沢健太が担当します)
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