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2023年4月8日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/242807
日本原燃の審査申請書に多数の不備が見つかった背景には、経営層がスケジュールありきで現場の社員に無理な作業を押しつけたことがある。現場は「経営層に言っても、工程は見直されない」「間に合わないことは許されない」ととらえ、不完全な書類がそのまま原子力規制委員会に提出された。核燃料サイクル政策の中核施設を担う原燃の無責任体質が浮き彫りとなったが、規制委の対応ははっきりしない。
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◆記者会見で強気な目標を口にした増田社長
「スケジュールだけが重視されたことが大きな原因。社長のマネジメントがそのような考えを起こさせたと考えられる。社長から意見を聞くべきだ」
5日の規制委定例会合で、再処理工場の審査を担当する田中知さとる委員は早口で切り出した。山中伸介委員長は「そのほうがいい」と応じ、増田尚宏社長への聴取がすんなりと決まった。
原燃は昨年9月、審査が終わらない再処理工場の完成時期を、同月から延期すると発表。さらに、再処理工場の稼働に必要な審査を通過させるため、11月に残った未申請分をすべて申請するとの目標も示した。増田社長は記者会見で「年内には審査の見通しを得る」と宣言。強気な口調には、完成を急ぐ焦りがにじんでいた。
設備2万5000点にも及ぶ大量の申請内容を2カ月ほどでまとめる作業。結局、11月に申請できなかったが、目標を1カ月遅らせただけで年内の申請にこだわった。昨年12月26日、完成目標時期を「2024年度上期のできるだけ早期」とすることを発表。同じ日に規制委へ提出した申請書は、全体の5%が間違っていた。
◆追い込まれた現場、実態を見ない経営層
原燃が規制委に報告した調査結果では、申請書の作成部署が目標までに完成させることは難しいと認識していたにもかかわらず、進捗しんちょく状況も含めてまとめ役の部署や経営層に報告していなかったことが判明。現場は「経営層から『12月の申請は必達』と伝えられており、間に合わないことは許されないと考えていた」という。チェック態勢も、資料がそろっているのかすら確かめておらず、経営層は現場任せで実態確認を怠った。
この報告があった3月の審査会合で、原燃の决得けっとく恭弘執行役員は「われわれ役員がしっかりした時間を与えなかったことが第一。無理な目標で推し進めてしまった。チェックも形骸化していた」と釈明。規制委事務局の審査担当者は、現場が経営層に意見できない社風に対し、「かなりの安全文化の劣化だ」と困惑を隠せなかった。
◆規制委の原燃への対応は? 過去には審査中断のケースも
規制委は日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の審査で、説明資料の誤りが改善できないため、審査中断の方針を決定。書類の不備で審査が進まない状況は、原燃の再処理工場も同じだ。
規制委はこれまで、不十分な対応を繰り返す原燃に対し、注意や指導するにとどめてきた。審査担当者は「データの書き換えなどがあった敦賀原発とは違い、審査できる部分もある」と説明。山中委員長も「まずは社長の認識を確認したい」と述べ、厳格な対処をするかは見えない。(小野沢健太)
核燃料サイクル 原発の使用済み核燃料から再処理という化学処理でプルトニウムやウランを取り出し、混合酸化物(MOX)燃料に加工して原発や高速増殖炉で再利用する仕組みで、日本政府の原子力政策の柱。高速増殖炉は使った以上のプルトニウムを生み出す夢の計画だが、原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉で頓挫した。MOX燃料を使える原発は、現時点で4基しかない。
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