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法曹界絶句…赤木さん裁判で国が「認諾」という非道を選んだ理由
https://friday.kodansha.co.jp/article/221130
2021年12月25日 FRIDAYデジタル
法曹界絶句。「夫の自死。真相を知りたい」という妻の訴えに国が選んだ「決着」の非道を考える
最愛の夫を失った妻は声を上げた。「なぜ夫が死ななければならなかったのか」その悲痛な思いを裏切った国の判断。私たちにできることは? 写真:つのだよしお/アフロ
公文書の不正な書き換えを業務として強要され、それを実行したことを苦に自ら命を絶った赤木俊夫さん。公務員としての誇りをもって生きてきた夫が57歳で逝った。妻の雅子さんは「なにが起きたのかを知りたい」と、訴え続けている。
上司だった元財務省理財局長・佐川宣寿(のぶひさ)氏に、話を聞きたかったがかなわず、国と佐川氏を訴える「裁判」という方法をとった。公判のなかで、「夫の身に何が起きたのか」がわかると期待したからだ。
法曹界が仰天した「禁じ手」の理由
12月15日、国が全面的に非を認める「認諾(にんだく)」をしたことで、この裁判はあっけなく「終わって」しまった。
「国が『認諾』したという報を聞いて、とても驚きました」
そういうのは、京都大学大学院法学研究科の曽我部真裕教授だ。
「赤木雅子さんが求めたのは、賠償金ではないでしょう。お金がめあてではなく、国家賠償請求の裁判という形で、真相を解明したかった。けれども国は、それを避けたかった。『認諾』つまり訴えの全てを認めてしまえば、それ以上裁判にはなりません。打算的な判断です。これには、なにか不純なものがあるんじゃないか、制度が悪用されたと感じます」
赤木雅子さんは会見で「悔しい」と語り「国は卑怯だ」と批判した。そもそも、公文書改ざん、赤木さんの自死があったとき、国会での調査が「できなかった」経緯がある。この国では、国政調査権が機能していない。
「ひとついえるのは、事件当時、安倍政権はあまりにも強力になりすぎていて、周囲が忖度をしすぎていたということ。その流れのなかで起きたことであるのは明白です」
政権与党の力がこれほど強く、これほど長く続いていると、そんな「流れ」を止めることはできないのだろうか。
「それに関して、日本は『ガラパゴス』なんです。海外にはそんな横暴を防ぐための制度があります。『少数派調査権』といって、国会議員の4分の1の発議で国政に関する調査ができる仕組みが、ドイツなど諸外国にはありますから。政権与党の協力、了解がないと国政を調査ができない日本の仕組みは見直すべきという議論があります」
航空機の事故や、医療事故のような公共性の高い分野については、「調査委員会」が設置され「外部」の調査が行われる制度がある。しかし、今回のような個別の件ではそんな方法もとれない。今の制度では、国会の場で真実を調査することは難しいのだ。「国有地払い下げの問題や、入管での人権侵害についても同様」という。
「そして別の観点からもうひとつ。これはそもそも、日本社会の普遍的な問題なんです。組織の命令には逆らえない、組織は命を守ってはくれない。ありえないことをやらされた赤木さんは、今回の認諾で、いわば『2度裏切られた』んです。これは、けっしてひとごとではなく、みんなに関わる問題です。雅子さんが実名を出して訴えていることはとても重要。声を上げていくことが大切だと思います」
組織の利益が、個人の尊厳に優先する社会。たとえば今回の国家賠償請求を担当した国側の「訟務検事(しょうむけんじ)」つまり「中の人」もまた、「組織の人」だ。
「国は、真相を究明させないためには、こんな突然の方針変更も厭(いと)わない。もし私が法務省の『中の人』だったら…良心が(とが)めます。しかし、勤め人である現場の訟務検事は、認諾を決めた上層部に従わざるをえないでしょう。法務省の職員たちも、組織の人ですから」
赤木さんの裁判で、国側が一転して訴えを認め「認諾」したことの背景には、いくつもの矛盾や疑問が隠れている。
「今、一部企業などでは個人を大切にする重要性が語られ始めています。が、やはりまだまだ、個人が組織の犠牲になるケースは少なくありません。
私たちにできるのは、これくらいのこと、と我慢するのではなく、それぞれが声を上げること。理不尽があれば声を出す、もっと声を上げていくことしかないんです」
ひとりひとりの決意や勇気で乗り越えていかなければならないのか。
「今回の認諾には驚きしかなかった。前例がなかったわけではありませんが、法律関係者は一様に驚いたと思います。ここまでして拒否したかったことは何なのか。裁判だけでなく、国会の責任追及機能も正しく機能していません。見直すべき点はいくつもあります。
そして、組織が個人を犠牲にしていく社会を続けていかないために、赤木雅子さんの勇気を高く評価しています」
私たちには、もっとたくさんの勇気が必要なのだ。
写真:つのだよしお/アフロ
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