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隠ぺい・改ざん・ねつ造…底なし すべての問題 安倍首相の責任
しんぶん赤旗 2018年4月21日
公文書改ざん、森友・加計疑惑の真相隠し、自衛隊日報隠ぺい、文民統制の崩壊、財務省セクハラ問題、「働かせ方改悪」のための労働データねつ造、「特別指導」をめぐる疑惑、教育への介入や圧力――。どの問題も根源には、おごり高ぶった安倍政権の強権政治や国政私物化があります。それぞれの問題で何が問われているのか、疑惑解明のために何が必要か、改めて見てみました。
加計疑惑
「首相案件」で私物化
学校法人「加計学園」(加計孝太郎理事長)の獣医学部新設をめぐっては、国家戦略特区での申請が行われる2カ月前の2015年4月2日、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が愛媛県職員らと面会し、「本件は、首相案件」と語ったとされる文書が同県、農水省で見つかりました。さらに、内閣府が文科省に県職員らの首相官邸訪問を事前にメールで伝えたことも明らかになるなど、安倍晋三首相の意向で“加計ありき”の行政が進められた疑いはもはや確定的となりました。
そもそも愛媛県には虚偽の面会記録をつくる動機はありません。「記憶の限りでは、面会したことはない」と否定する柳瀬氏に対し、日本共産党など野党6党は、偽証した場合、罪に問われる証人喚問を要求。しかし、与党はこれを拒否し、参考人招致にとどめようとしています。疑惑の当事者の安倍首相は「県の作成した文書について、国としてはコメントできない」「柳瀬氏の発言を私は信頼している」(4月11日の衆院予算委員会)と逃げ回っています。
安倍首相の言い訳は通用しません。面会記録に記された柳瀬氏、同じく県職員らが面会した藤原豊・地方創生推進室次長(当時)の発言の内容が、面会後次々と具体化されています。「政府関係者は、『首相秘書官らとの面会が『加計ありき』の出発点だった』と証言」(「東京」13日付)との指摘も。「15年4月2日面会」は、加計疑惑究明の焦点です。
「森友文書」改ざん
官邸の指示 疑い濃厚
森友学園との国有地取引をめぐっては決裁文書改ざんを財務省は認めています。改ざんでは、決裁文書に記されていた安倍首相や妻の昭恵氏、政治家の名前がすべて消されていました。
なぜ、改ざんという異例の犯罪に財務官僚が手を染めたのか―。安倍首相が「私や妻が関係していれば、総理大臣も国会議員も辞める」(17年2月17日の衆院予算委員会)と断言した国会答弁に合わせる改ざんが官邸側から指示された疑いが濃厚です。
この点でも、国会論戦を通じて浮上した焦点の日にちがあります。森友疑惑が国会で追及され始めた直後の17年2月22日、菅義偉官房長官が、当時の佐川宣寿理財局長、太田充大臣官房総括審議官(現理財局長)、中村稔理財局総務課長を官邸に呼び、森友学園との国有地取引の経緯について説明を受けていたのです。この密会は、昭恵氏の関与が国会で取り上げられたことから安倍首相が官房長官に指示したことを受けて開かれたもので、決裁文書の取り扱いも協議された疑いが出ています。実際、この密会以降、政府答弁や記者会見で「決裁文書」という言葉が出始めました。
値引き根拠崩れる
この密会の中では、昭恵氏付きの政府職員が15年11月に森友側の国有地貸付などの要望を財務省側に伝え、同省が回答していたやりとりも報告されています。太田理財局長によると、改ざん前の決裁文書にサインした一人の中村氏は密会後、昭恵氏の記述があることを佐川氏に伝えたと説明しています。
森友疑惑では、国有地の値引きの根拠となったごみ撤去で理財局が森友側にうその説明をするよう求めたり、国有地8億円値引きの根拠とされた地下ごみの積算量を増量するよう近畿財務局が大阪航空局に依頼していたことも判明。無法がまかり通った背景に、昭恵氏側の政治的圧力があった疑いがいっそう強まっています。
日報隠ぺい
ウソにウソを重ねる
防衛省・自衛隊が1年以上にわたって「ない」としてきた陸上自衛隊イラク派兵部隊の日報の存在が次々と明らかになりました。昨年3月27日に陸自の研究本部が確認していたにもかかわらず、防衛相らに報告されず、今月4日になって小野寺防衛相が明らかにしたのが発端でした。
もともと防衛省は昨年、南スーダンPKO(国連平和維持活動)の日報を隠ぺいし、「特別監察」を行っていました。その最中にイラク日報の存在を隠したのです。
「南スーダン日報は廃棄されている、と嘘(うそ)をついたことで、10年以上前に活動が終了しているイラク派遣の日報も廃棄されている、と嘘を重ねる羽目になった」「もし、昨年1月の段階で稲田防衛大臣や安倍首相がそうして(徹底的に探すよう指示して)いれば、南スーダン日報とイラク日報をめぐるその後の『隠蔽の連鎖』は起きていなかった」と、平和新聞編集長の布施祐仁さんは自身のブログで指摘しています。
イラク、南スーダンの両日報からは、自衛隊員が「殺し、殺される」危険にさらされていた「戦場の真実」の一端が浮かび上がっています。安保法制=戦争法に基づく「駆け付け警護」などの新任務を実践させようと、南スーダンでの「戦闘」状態を隠そうとした安倍政権の責任はあまりに重大です。
幹部自衛官の暴言も政権の責任
防衛省・自衛隊の日報隠ぺい問題が国会で大問題になっている最中、幹部自衛官(3等空佐)が民進党議員に対して「おまえは国民の敵だ」と暴言をあびせる重大な問題まで起きています。小野寺防衛相は「(空佐も)国民の一人であり、当然思うところもある」と擁護しました。
戦前の日本では、軍部が暴走し、侵略戦争が拡大、青年将校が政治家を殺傷したテロ事件が起きた歴史があります。その教訓から、軍隊の指揮権を文民が統制する「文民統制」(シビリアン・コントロール)の原則が生まれました。
安倍政権の「戦争する国」づくりのもと、自衛隊のなかに“おごり”が生まれ、「文民統制」を無視した考え方が生まれているとしたら重大であり、ここでも「文民統制」を機能不全に陥らせている安倍政権の責任は重大です。
財務省セクハラ問題
人権意識のなさ示す
福田淳一財務事務次官によるセクハラ発言をめぐっては、発言そのものが許されないことはもちろん、麻生太郎財務相を先頭にした財務省ぐるみの“セクハラ拡大”が深刻な事態を招いています。
麻生財務相は当初から、「(発言が)事実ならアウトだ」としながら、「実績などを踏まえれば能力に欠けるとは判断していない」と福田氏を擁護し、処分を否定。能力でセクハラが免罪されるかのような発言で、セクハラに対する認識の欠如を露呈しました。
発覚の4日後に財務省が発表した福田次官への「聴取結果」と弁護士事務所への委託調査も問題だらけのものでした。「聴取結果」では、セクハラを全否定し、週刊誌を「提訴すべく準備」などの福田次官の言い分を一方的に羅列。被害者には「弁護士事務所に直接連絡を」として名乗り出るよう迫り、記者クラブ加盟社にも「協力」を求めました。
これに対し、「セカンドレイプ(二次被害)を広げる」、声を上げるのが困難な性被害の特質を見越した「どう喝だ」などと、与野党、国会内外から批判が殺到。テレビ朝日が女性記者の被害を公表したことで事実がいっそう明確になったにもかかわらず、財務省は調査を続ける意向です。
麻生財務相や、辞任表明した福田次官の代行・矢野康治官房長は再三、被害者が名乗り出ないと事実認定は困難だと強弁。「福田の人権は無しか」(麻生財務相)、「名前を伏せて名乗り出るのがそんなに苦痛なのか」(矢野官房長)などの発言も、二重三重に性被害を広げ、財務省としての対処能力の無さを示すものです。麻生財務相には、福田次官への任命責任とともに、被害者の人権や尊厳を踏みにじる対応を続けている重大な責任があり、辞任は不可避です。
財務省の「聴取結果」と調査手法は、16日の公表前に首相官邸に通知されていたことが分かっています。同省の対応を放置する安倍首相の責任も重大です。
教育介入
「歯向かう者」に圧力
安倍政権に歯向かう者が教壇に立つのはけしからんと圧力をかけたのが、前川喜平・前文部科学事務次官が名古屋市立中学校で行った授業に対する文科省の調査です。
文科省は3月初めに2度にわたり名古屋市教委にメールで質問状を送りつけました。内容は、授業の狙いや経緯、前川氏に払われた謝礼の金額や、前川氏が「出会い系バー」に通っていたとの一部報道まで含む執拗(しつよう)に個人をおとしめるものとなっています。
調査は、自民党文科部会長の赤池誠章参院議員と同部会長代理の池田佳隆衆院議員が文科省に要請したものでした。両氏は「日本会議国会議員懇談会」に所属し、赤池氏は安倍首相の腹心と言われています。
「教育勅語」で子どもを戦争に駆り立てた反省から、教育は「不当な支配」に服さないとしたのが戦後教育の根本理念です。政治介入の防波堤となるべき文科省が安倍政権の下で道を見失っています。
「働き方改革」
過労自殺伏せ 黒塗り
安倍首相が「働き方改革」一括法案で裁量労働制拡大や「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)を導入するためにアピールしたデータや「実績」にも次々とねつ造や隠ぺい疑惑が発覚しています。
裁量労働制拡大は長時間労働が増えるという批判に対し、安倍首相は、裁量労働制を適用された労働者は一般労働者より労働時間が短いと主張していました。ところが、厚労省が労働時間データを恣意(しい)的に加工し比較していたことが発覚。他のデータからも300カ所以上の異常値が見つかり、データ撤回と、法案からの裁量労働制拡大の削除に追い込まれました。
裁量労働制について約8割が「満足」していると安倍首相が強調したアンケート調査では、自由記述欄に「裁量とは名ばかり」など不満の声が記されていたのに厚労省が非公開にしていたことも判明。真相究明と責任追及が求められています。
安倍首相は裁量労働制を違法適用した野村不動産への「特別指導」を実績とアピールしましたが、厚労省は同社で過労自殺があったことを隠していました。しかし、野党の追及や遺族の公表同意で追い込まれて、加藤勝信厚労相は過労死があったことを認めざるをえなくなりました。
それでも、指導の経緯を示す資料は黒塗りにしたまま隠ぺいを続けています。労働行政をゆがめ、国会と国民をあざむく問題の徹底究明が急務になっています。
野党6党は、国会と国民をあざむく政府に「働き方改革」一括法案を出す資格などないと批判しています。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-21/2018042103_01_1.html
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