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創価学会・公明党の政治力に歪む地方議会・行政権力
「池田先生の教え」で予算反対 鎌ヶ谷市議会で見せたその体質
本誌編集部
市議会本会議にまで進出した「永遠の指導者」
前代未聞なのだろうか。どこかで前例はあったかもしれないが、やはり、唖然とする出来事だった。公明党が、「池田(大作)先生の教え」を論拠にして市の予算案に反対した。創価学会会則に定められた「永遠の指導者」はついに、市議会本会議にまで進出したのである。春の珍事というべきか、それとも公明党はここまで来たと見るべきなのか――。
3月21日、千葉県鎌ヶ谷市議会は平成20年度一般会計予算案の賛否を問う、最終本会議を迎えた。各会派が討論に立つ。賛成討論は一つもない。――「13番佐藤誠君」。議長の指名で公明党の佐藤議員が立った。
「市議会と公明党の長い歴史の中で、予算審査特別委員会での反対、そして本会議での反対討論は初めてのことであります」
そう切り出したあと、佐藤議員は三位一体改革による財政難を理由にした緊縮予算案について、福祉や教育の側面からの非難をくり返す。どの予算のどの金額が問題であり、どうすべきかという具体論はない。ひたすら「高齢者に対する思いやり」とか「市民不在」といった言葉が続く。
続けて「1月に行った議会各派に対する概略の予算説明」で、各派議員が要望書を出したのに「市長はそれを無視し、全く同じ内容の予算案を提出」したのでは、「何のための説明会だったのか。議会軽視と言わざるをえない」と、恨み言のような発言をし、討論の締めくくりに入る。
討論の最後に、佐藤議員は中国の王陽明の言葉である「謙は衆善の基にして、傲は衆愚の魁なり」を引用し、そこで突然、「先生」が登場する。
「私の人生の師と仰ぐ池田SGI会長は、心こそ大切なれと、人として一番大切なことを教えてくれました。したがって私は、市民への温かみの感じられない予算は、到底認めるわけにはいきません」
ちなみに、創価学会の元職員によると、「王陽明」も池田氏がスピーチで引用する一人なのだという。
佐藤議員はそう結論づけて討論を終えた。採決の結果、全会派が反対という、これは正真正銘の前代未聞の結末で、予算案が否決された。後日談がある。1週間後の3月28日に臨時議会が招集され、市長は修正予算案を提出。共産党(2人)を除く全会派は、今度は委員会審議も省略して賛成にまわり、すんなり成立させた。
否決された当初予算案は実際、かなり厳しい内容だったらしい。市は財政難を理由に、教育・福祉・安全など全部門に、優先順位なしの一律20%削減方針を課して実行させた。なかでも、市の独自事業である敬老祝い金や老人会助成金、針灸マッサージ費助成、小中学校卒業記念品などがターゲットになった。従来、70、80、88歳に各3万円、100歳になると5万円を支給していた敬老祝い金は、100歳を3万円に切り下げ、他は全面カットというものだった。
自治会、町内会など市民各層から反発、抗議の声があがった。与党の立場をとっていた各派もこれは黙視できない。佐藤議員の討論にもあるように、1月の概算説明以降、水面下工作を含む折衝をくり返したが、市長は耳を貸さない。ことここに至って議会側もキレてしまった……というのが、ことの経過のようだ。
否決はしたものの収拾策も急がれる。各会派が1週間後に賛成した修正予算案は、バッサリ削った福祉や教育を全面復活させたわけではない。全面カットの先延ばしであり、削減の幅を少なくしただけのことで、「福祉削減予算」に変わりはない。
いまや全国民的規模で非難を浴びている後期高齢者医療制度で政府与党は、ごく一部分の保険料納入開始を半年間延長して世論をかわそうとした。「公明新聞」や「聖教新聞」はこれを、公明党の成果とばかりに喧伝した。鎌ヶ谷市議会も、それと同じ手法といえなくはない。
それにしても単なる先送りで「温かみの感じられない予算」を、「池田先生の教え」まで引き合いに出しながら、わずか1週間で反対から賛成に転じてもいいものなのか。
内面でも創価学会に従属している公明党
鎌ヶ谷市議会には、市民クラブ(自民系)、未来クラブ(保守系)、ステップアップ(民主系)、社会・無所属クラブ、公明党、共産党の6会派がある。予算案など重要案件で共産党が反対することがあるくらいで、大半は議会審議では異論を唱えても採決では賛成というのが通例だった。全員反対という異例の事態の背景には、次期市長選挙をめぐる駆け引きがあったとの説もある。
その中で公明党は、議長を含む27議席中5人を占める。本誌でもしばしば論じているように、公明党議員は常に行政当局とのパイプを握ることのできるキャスティングボートの役割が(創価学会から)求められている。「野党」にはなれないのである。
その公明党が、佐藤議員がはからずも言ったように「長い歴史の中で初めて」反対に踏み切った。他会派の動向から「みんなで渡ればこわくない」という心理が働いたかもしれない。それにしてもよほどの決断が必要だったのだろう。反対討論の冒頭に「長い歴史の中で……」と断りを入れたことにも、それが窺われる。
そんな決断のキーワードが「池田先生の教え」であった。佐藤議員の討論要旨(別掲)からもわかるように、討論の大半は抽象的な言葉のくり返し。それをどう総括し、評価するのかという最終段階になって、突然出てくるのが「人生の師と仰ぐ池田SGI会長……」だったのだ。
これも本誌が再三紹介していることだが、創価学会はいま議員に師匠(池田氏)への忠誠を求め、議員を牽制するキャンペーンを展開している。「師と仰ぐ池田会長」発言には忠誠の誓いという意味もあったのだろう。いずれにせよ、ギリギリの判断を迫られたとき、公明党議員のよりどころは「先生」しかない。そのことを世間に示したというべきだろう。
民主党の石井一参院議員は、昨年10月16日の参院予算委員会で「公明党なんていうのは創価学会なんですよ。公明党から創価学会を引いたら議席はゼロ」と指摘した。
石井氏は続けて、「すべての選挙は非課税の宗教施設を使って、(学会幹部である)支援長の下に一糸乱れず強力な戦果を展開している」「公明党の人事ってどこで決まるんですか。委員長選挙、一回でもあったんですか」と論じた。
石井氏の指摘する「公明党マイナス創価学会」論(つまり政教一致論)は、選挙や人事などのような外形だけではない。内面の部分でも公明党は完全に創価学会に従属している。鎌ヶ谷市議会がその一端を表に出して見せた。
千葉県鎌ヶ谷市議会本会議(3月21日)での予算案に対する反対討論(大要)
公明党・佐藤誠
私は議案第15号、平成20年度一般会計予算案について、公明党を代表して反対討論を行います。市議会と公明党の長い歴史の中で、予算特別委員会での反対、そして本会議での反対討論は初めてのことであります。
本案は歳入歳出予算の総額をそれぞれ231億1000円に定めようとするものである。
市長は平成14年の就任以来、鎌ヶ谷市の財政状況を把握し、今後の鎌ヶ谷市の行政運営をどのように行っていくかというしっかりした考えの中で、これまで5年間の予算を組んだはず。それは平成15年度に行財政改革推進本部を設置し集中改革プラン21を推進したとおりであります。
しかしこの4年間、その効果が十分発揮されたとはいえず、その間において、市長は厳しい財政状況を訴えるのみで、具体的な歳入確保策等の提示、職員の給料の削減策など即効性のある対応をしないまま今日を迎えました。〈中略 市民不在の予算案だと繰り返す〉
(1月の議会各派への予算説明で)この内容は市民不在の予算であり、よく検討して欲しい旨、各派議員が要望したが(市長は)全く同じ内容の予算案を提示しました。議会軽視といわざるを得ません。
最後に、有名な思想家、王陽明の言葉に「謙は衆善の基にして傲は衆悪の魁なり」とあります。上に立つ者の謙虚さは民衆を幸せにし、傲慢は民衆を不幸にする始まりだとの意味であります。
また、私が人生の師と仰ぐ池田SGI会長は、心こそ大切なれと、人として一番大切なことを教えてくれました。したがって、市民への温かみの感じられない予算に、健全な財政を図る予算とは到底認めるわけにはいきません。よって市民不在とも言える予算に反対するものであります。
https://forum21jp.web.fc2.com/20085_1.htm
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