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※2021年10月6日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年10月6日 日刊ゲンダイ2面
【止まらない岸田暴落に市場悲鳴】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 6, 2021
「新しい資本主義」という大風呂敷に中身なし
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/Hc57oc6GTO
※文字起こし
「新しい資本主義の実現」という大風呂敷に中身なし。「新時代共創内閣」とやらの中身スカスカを見透かしたような、つるべ落としだ。
5日の東京株式市場は、日経平均の下落幅が一時980円を超え、2万7400円台まで沈んだ。実に7営業日連続で下落し、この間の下げ幅は最大2800円近くまで拡大。米連邦政府の債務上限問題や、中国の恒大集団の経営危機に始まった不動産市場の不透明感など、投資家心理を冷やす外部要因は数あれど、最大の悪材料は新政権への失望だ。
先月3日に菅前首相が自民党総裁選への不出馬を表明して以降、日経平均は上り調子だった。ポンコツ退陣で政権安定の期待が高まり、約5カ月ぶりに3万円台を回復。約31年ぶりの高値圏に達した。
それこそ「明かりが見え始めた」矢先に、日経平均が激変したのは総裁選の最終情勢で岸田首相の「勝利濃厚」が伝わってから。総裁選当日の先月29日には1回目の投票で岸田がトップになった途端、一時800円超も急落。岸田の新総裁選出から下落は止まらず、売買代金の約7割を占める海外勢も大きく売り越しているとみられる。
3万円台突破の上昇ムードはすっかり消え、8月に付けた年初来安値の2万6954円にまっしぐら。止まらない「岸田暴落」に市場の悲鳴が聞こえてきそうだが、海外投資家の失望もムリはない。
いくら岸田が「新自由主義からの転換」や「所得の再分配」を訴えても、具体策ゼロ。掛け声倒れに終わるのは目に見えているからだ。
メニュー通りの料理が届く保証はない
子育て世帯への住居費や教育費の支援、医療や介護、保育で働く人たちの賃金アップに向けた「公的価格」の在り方の抜本的見直し、科学技術立国の実現、デジタル田園都市国家構想――。
就任会見で岸田はよくもまあ、これだけ並べられるものだと言うくらい耳当たりのいいバラマキ、成長戦略を“宣言”したが、お題目なら誰でも唱えられる。一国の首相として真価が問われるのは、その実現性だ。
いずれも道筋の検討はこれから。岸田は生煮えの
ばかりを有権者に堂々と提示したわけだ。この先、本当に料理が運ばれてくるのかは知れたものではない。
子育て世帯の住居・教育分野への支援策は前例がなく、一から始める制度設計が課題だ。先の通常国会で成立した改正児童手当法では、高所得世帯の「特例給付」を廃止し、その分を保育所整備などに回すことになった。サービスの充実には必ず給付カットがつきまとうのだ。
看護師らの賃金底上げも基本的に国が決める「公的価格」を見直して、診療報酬や介護報酬などを引き上げれば、保険料や国の財政に響く。穴埋めのため、利用者の負担が増えてしまうことだって十分に考えられる。
これらの実現には巨額の財源が必要だが、岸田はしばらく国債でまかなう方針を示すのみ。消費税増税についても総裁選中に「10年程度は上げることは考えていない」と断言。「10年も政権を担う気かよ!」とツッコミたくもなるが、限りある財源で聞こえのいいプランをどう実行に移すのか。岸田が真剣に悩んだフシは感じられない。
衰退放置で貧しさを分け合う分配強化 |
消費税増税をためらう岸田だが、株式の売却益など「金融所得課税」強化の方針はハッキリと表明した。
給与にかかる所得税の負担率は累進性で最大45%なのに、金融所得への課税は所得税と住民税を合わせて一律20%。金持ち優遇との批判を浴びてきた。ただ、一律に引き上げれば低所得者も増税となる上、得られる財源もさほど大きくない。
格差是正に向けた「やってる感」が漂うが、投資家に嫌気され、岸田暴落に拍車を掛けているのだから、世話はない。暴落が続く中、課税強化できるのか。こちらの実現も怪しいものだ。経済評論家の斎藤満氏はこう言った。
「岸田首相が率いる宏池会の創設者・池田勇人を意識した『令和版所得倍増計画』だって、単なる言葉遊びとしか思えません。過去30年、日本の平均給与はずっと伸び悩み、昨年はOECD加盟35カ国中22位まで順位を下げ、19位の韓国に抜かれました。名目賃金も2年連続で前年を下回っており、倍増以前に所得減少を食い止めるのが先です。新内閣の目玉に『経済安全保障相』を新設。米国の利益代弁と中国への牽制を兼ね、技術流出の防止に躍起ですが、盗まれる心配をするよりも、水素燃料など既存技術を生かす方策を考えるべきですよ」
今の日本にはかつてのソニーやトヨタのような成長の牽引役も不在だ。安倍・菅両政権の9年で成長の芽を摘んできたため、産業の新陳代謝もはかどっていない。
「政権が代わった今こそ、具体的な成長戦略を示す絶好の機会ですが、岸田首相はひたすら願望を語るのみ。新たな産業を興す意欲は感じられず、政府を挙げて台湾の半導体製造の世界大手『TSMC』の国内工場誘致を目指す情けなさです。この国の衰退に歯止めをかけずに分配を強化したところで、貧しさを分け合うことになるだけです」(斎藤満氏=前出)
信用できない「消費税は10年上げない」
さらに気がかりなのは、岸田が政権の要職にやたらと財務官僚OBを起用したことだ。新設の経済安保相に就いた小林鷹之氏、子育て支援や看護師らの賃金アップを担う後藤茂之厚労相、国家安全保障担当の首相補佐官を兼ねる岸田最側近の木原誠二官房副長官。閣僚に限らず、異例の8人態勢となった首相秘書官のうち2人は財務省出身だ。
「財政規律の重視が財務官僚にとっての金科玉条。この財務官僚布陣をみると、消費税アップを否定し、バラマキ策の財源を当面は国債でまかなうという岸田首相の言葉を信用するわけにはいかない。衆院選を乗り切り、来年の参院選をしのいだ後に分かりやすい手のひら返し。消費税率は上げずとも、財源の穴埋めに社会保険料などの負担増に走りかねません」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
岸田の「消費税を10年程度は上げない」発言も引っかかる。大げさな数字を持ち出し、問われている事柄を否定するのは口からデマカセ政治家の常套手段。「2万%出ない」と言って選挙に出馬した“前科者”もいるだけに、にわかには信じられないのだ。
「新しい資本主義」を掲げながら、岸田は5日、官邸で経団連の十倉雅和会長と会談。終了後、十倉会長は経団連の目指す持続可能な資本主義と「哲学がいかに一致しているかを互いに確かめ合った」と説明したが、何をかいわんやだ。
「経団連は古い既得権益を堅持し、アベノミクスの恩恵に長期的にすがってブクブクと内部留保を貯め込んだ大企業経営者の集まり。十倉会長に『いい加減、社員に内部留保を還元せよ』と迫れば、まだ分配強化に期待が持てますが、哲学を確認し合ってどうする。岸田首相は分配の元手や具体的手法にはゼロ回答。結局『説明しない政治』を引き継ぎ、口先で国民をけむに巻くだけの“しゃべれる菅前首相”に過ぎないようです」(五野井郁夫氏=前出)
特技の「人の話を聞く」も全員にいい顔をしたい日和見主義の表れ。衆院選日程の前倒しで国会審議からも逃げ回り、甘利幹事長や安倍元首相の「政治とカネ」の疑惑をゴマカし、13人もの初入閣組の顔と名前も一致しないうちに有権者に信を問うとはいい度胸だ。
首相就任27日後の衆院選は現行憲法下で最短記録。今月14日の解散から17日後の投開票も戦後最短だ。こうなったら有権者は選挙で逃げ切る岸田の魂胆を打ち砕き、東久邇宮内閣の史上最短の在任記録(54日)を大幅に更新させるしかない。
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