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総裁選で自民党のテレビジャックが始まった!『ひるおび!』などワイドショーはコロナ対策放置、国会拒否を批判せず総裁選候補PR
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2021.09.02 総裁選で自民党のテレビジャックが始まった!『ひるおび!』は総裁選候補PR リテラ
TBS『ひるおび!』9月2日放送より
菅義偉首相の醜い悪あがきが止まらない。自民党総裁選で一騎打ちになると見られている岸田文雄・前政調会長が掲げた党改革案を骨抜きにするべく「二階外し」に動いたかと思えば、突如「9月解散」説が急浮上。今度は「6日の党役員人事で河野太郎氏を要職で起用」という情報が駆け巡っている。
「9月解散」説については、菅首相が昨日1日朝に「解散ができる状況ではない」と打ち消したことからネット上では「スクープした毎日新聞の誤報」などとも言われているが、党内で渦巻く「総裁交代論」に焦った菅首相が奇襲作戦として解散に踏み切ろうとしたことは紛れもない事実だ。
「31日の夜に衆院議員宿舎内で二階俊博幹事長と会談した際、菅首相は総裁選を先送りにして解散する案を二階幹事長に伝えたと見られている。そして、菅首相の最側近である森山裕・国対委員長が9月解散案を認めたため、毎日が同夜にスクープとして報道。それを皮切りに各社が一斉に解散説を打った」(全国紙政治部デスク)
だが、この報道を受けて安倍晋三・前首相や麻生太郎・副総理が解散に反対する意向を菅首相に伝達。これによって菅首相は一夜で解散を否定せざるを得なくなっただけなのだ。
菅氏といえばこれまでも権力誇示・維持のために人事権を濫用してきた人物だが、コロナ対策が第一優先されるべきこの局面でも私利私欲を丸出しにし、解散権まで行使しようとしたとは──。しかも、菅首相は来週に二階幹事長を外すことを柱にした党役員人事と内閣改造をおこなう姿勢は崩しておらず、さらにはここで河野行革相や小泉進次郎・環境相らを要職に起用することでイメージ刷新を狙っているというのである。
まったく自己中にも程があるだろう。河野行革相は肝心のワクチン供給安定化の仕事も放り出してワクチン担当の立場を自身の売名に利用するばかりだとはいえ、ワクチン担当の大臣であることに変わりはない。さらに自治体ではいま、10月に深刻なワクチン供給不足が起こるのではと不安が広がっているという。そんな最中にワクチン担当の河野氏を党の要職に就かせるような人事を強行すれば、ますます混乱を引き起こすことになる。
菅首相は政権発足時、「国民のために働く。」なるスローガンを掲げたが、それがいかに嘘っぱちであったかはこの1年のあいだに周知された。だが、それがここまで明らかになっても、いまだに自分が延命することしか考えていないのだ。官房長官時代、菅氏は前川喜平・元文科事務次官について「地位に恋々としがみついていた」などと非難したが、いまの菅首相こそまさしくこの言葉のとおりではないか。
■『ひるおび!』は岸田文雄と高市早苗を生出演させて大はしゃぎ、無批判に「菅総理は闘争モード」と解説
だが、問題は国民をどこまでも蔑ろにする菅首相の姿勢だけではない。最大の問題は、このコロナ禍に国民を蔑ろにしつづける菅首相の姿勢を徹底批判することもなく、自民党の政局に丸乗りして大々的に報じるメディアの態度だ。
実際、報道番組もワイドショーもこの間、「急展開 菅総理 二階幹事長交代へ」「解散する?しない?総理“本音”は」「総裁選先送り? 岸田氏けん制 どうなる?衆院解散・総裁選」などとコロナ対策を置き去りにしていることへの批判もそっちのけで自民党の党内政局報道に終始。
なかでも、連日のように田崎史郎氏を出演させて党内政局の話題を熱心に取り上げている『ひるおび!』(TBS)の場合、昨日1日の放送では「目まぐるしく動く永田町」「総選挙を取り仕切る幹事長は誰に?」などと政局一色で、さらに本日2日放送では、総裁選の告示もまだされていないというのに、出馬に意欲を示している岸田文雄氏と高市早苗氏を生出演させる始末。菅首相による「総裁選先送りのための9月解散」説についても、「最近の菅首相は予測不能」「菅総理は闘争モードに入った」などと大はしゃぎで伝えた。
無論、これは『ひるおび!』にかぎったことではない。ほとんどの番組が菅首相の一挙手一投足をはじめ、自民党内の権力闘争にすぎない話題を無批判に垂れ流しつづけている。ようするに、まだ総裁選前だというのに、すでに自民党による「メディアジャック」がはじまっているのだ。
そもそも総裁選報道をめぐっては、自民党だけがクローズアップされるため、国政選挙の“事前運動”になりかねないものだとして批判されてきた。だが、2005年の総裁選でメディアが異常な熱狂ぶりで「小泉劇場」を垂れ流してテレビも新聞もたんなる自民党のPR機関と化したことに味をしめた自民党は、総裁選でメディアジャックをおこない、国政選挙の事前運動として利用してきた。
ようするに、菅首相によるここ最近の動きはメディアジャックを狙ったものでもあり、当のメディア側も、過去の反省もなくまんまとそれに乗っかっているのである。
しかも、今回、メディア側の罪がとりわけ深いのは、菅首相がコロナ対策を放り出して権力闘争に明け暮れていることを正面から批判しようとしていないことだ。
そのことを象徴するのが、野党4党が要求した臨時国会の招集を、政府・与党が拒否した問題だ。
■臨時国会の招集を政府・与党が拒否してコロナ対策を放棄している問題を批判しないマスコミ
本サイトでは繰り返し指摘してきたが、この臨時国会の招集要求は憲法53条に基づいたもので、衆参いずれかの総議員の4分の1以上から要求があった場合、内閣は臨時国会を招集しなければならないと義務づけられている。つまり、政府・与党は憲法違反を平気で犯しているのだ。
その上、現在は自宅で放置されているコロナ患者が全国で10万人を超え、自宅死の事例も増加するなかで臨時の医療施設の設置が叫ばれている。さらに、長引く緊急事態宣言によって企業倒産や生活困窮者も増加しており、喫緊の新たな対策が必要だ。これらの財政措置のためにも一刻も早く補正予算の編成をおこなうべく国会を開かなくてはならないことは言うまでもない。
ところが、その国会招集を政府・与党は拒否したというのに、テレビではこの問題について触れても、たんなる「永田町の動き」として処理。菅首相の周辺から「9月解散」説が出ても、その権力闘争の内幕を伝えるばかりで、解散権の行使によって11月まで国会が開かれず、追加のコロナ対策を盛り込んだ補正予算が先送りにされることの問題はほとんど指摘しようともしなかった。
国民の命と生活を守るためのコロナ対策を放棄する菅政権と自民党を批判するどころか、嬉々として自民党のPRに協力し、唯々諾々でジャックされてしまったメディア──。腐っているのは菅政権だけではなく、メディアも同じなのである。
(水井多賀子)
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