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スポンサー企業も国民も損ばかりしている
英紙が痛烈批判「東京五輪は菅首相のためだけに開催されている」
https://courrier.jp/news/archives/254176/
2021.7.21 クーリエ・ジャポン
日本は何のために五輪を開催するのか Photo by Stanislav Kogiku/SOPA Images/LightRocket via Getty Images
フィナンシャル・タイムズ(英国)
Text by Robin Harding, Kana Inagaki, Murad Ahmed and Sara Germano
東京五輪の問題噴出が止まらない。関係者の辞任に次ぐ辞任。続出する選手村のコロナ陽性者。そしてトヨタのCM放送中止──。もはや日本が何のために五輪を開催しようとしているのか、海外からも疑問の声が聞こえてきている。
英紙「フィナンシャル・タイムズ」はそんな東京五輪に対して、お金の面から疑問を投げかける。そもそも、オリンピックの開催国となるためのコストが、その後の経済効果に見合わないのではないか、とも指摘。海外からの厳しい意見を全訳でお届けする。
2012年に安倍晋三が日本の総理大臣に就任して最初にしたことの一つが、2020年夏季オリンピックを東京に招致するためのチーム集めだった。マドリードとイスタンブールが開催都市候補として強い支持を得ており、日本招致チームの敗北はあまりにも明白だった、と安倍の側近は振り返る。
安倍は当局者をしかりつけ、この外交的取組のために個人的に世話役を買って出た。鳴り物入りでグローバルな支持を集めた結果、その1年後に2020年夏季五輪開催国に選ばれ、さらに2016年のリオデジャネイロ大会では、閉会式に安倍がスーパーマリオに扮して登場した。
東京オリンピックが安倍の政治基盤となった理由は、それが彼のメッセージを集約しているからだ。そのメッセージは、「先進民主主義国の仲間入りを初めて宣言した1964年東京大会のときの、活気に満ちた日本に匹敵する、当時と同じ精神を持つ国家として、世界に扉を開くことで、日本は十数年に及ぶ経済停滞から復興し、自信を取り戻すだろう」といったものだ。
もう間もなくオリンピックが開会する。今回の大会は、これまでにないほど広範囲で、刺激的で、感動的なものになるだろう。サーフィンとスケートボードなどの新規採用種目が加わり、体操のシモーヌ・バイルズ、テニス日本代表の大坂なおみ、英国の短距離走者ディナ・アッシャー=スミスなどのスター選手が、引退したスプリンター、ウサイン・ボルトなど、五輪を象徴してきた選手に代わり出場する。
しかし、一つの大きな問いが、フィールド上の競技に暗い影を落とすだろう。このオリンピックは何のために行われるのか? という問いだ。
これらの競技は新型コロナウイルスの緊急事態宣言により依然として麻痺している都市で、1年半続いている経済危機の中で行われるのだ。海外から日本にやってくるファンはいないし、日本のファンもスタジアムでの観戦は許可されない。選手たちはバブルのなかに閉じ込められ、外部との接触機会はない。
それに人々に受け入れられていない。東京に住む人々の半分以上が、オリンピックの中止か延期を望んでいる。回答の違いは質問のされ方によるものだ。そのうえ、天皇陛下もご自身が名誉総裁を務めるオリンピックについて、「大変ご心配」されていることが、宮内庁長官を通して示唆された。
経済復興のメッセージももはや意味を持たない。1964年との類比は空しく響き、安倍自身も首相の座から退いている。他にも大切にされていたテーマ、たとえば、2011年に起きた壊滅的な地震と津波からの東北復興とか、選手村における水素エネルギーの活用などがあったが、今ではほとんど取り上げられない。
「パンデミック以前は、オリンピックが残せる最も価値あるレガシーは、世界中の多くの人々が日本にやって来ることだと考えていました」と話すのは1984年の柔道金メダリストで現日本オリンピック委員会会長の山下泰裕氏だ。「多くのものが失われました。多くのことをなかったことにしなければならなかったのも事実です」と彼は付け加える。
菅首相の失敗
安倍の後任である菅義偉首相は、オリンピックを人類がウイルスに打ち勝った証しとして開催すると述べ、それゆえ、日本には開催する義務がある、と論じた。菅は「人類が新型コロナという大きな困難に直面する今だからこそ、世界が団結し、(人々の努力と英知で)この難局を乗り越えていくことを日本から世界に発信したいと考えています」と6月に宣言。さらに菅は、オリンピックを開催することが「希望と勇気のメッセージをお届けすることになる」と付け加えた。
この美辞麗句は、オリンピックがどのように開催されるかという現実によって台無しになった。当初、1万人まで観客を入れての開催を発表していたが、東京で感染者数が増加するにつれ、菅はUターンを余儀なくされ、新たに緊急事態宣言を東京に発出せざるを得なくなった。
オリンピックは、今になっては、閉ざされた扉の中で開催されるものとなった。最近行われたサッカー欧州選手権ユーロ2020やテニスのウィンブルドン選手権では多くの観客がいたが、それとは対照的に東京オリンピックは、新型コロナウイルスに対する勝利などではく、むしろウイルスのせいで失われたものを象徴するだろう。
菅にとって、オリンピックは計算ずくの政治的ギャンブルだ。首相が欲しいのは、日本の金メダルラッシュに乗っかり、秋に行われる衆議院議員総選挙で自民党の勝利を獲得することだ。無観客での開催は政治的な勢いを削ぐが、オリンピックが新たな感染拡大の引き金となるリスクも低減する。
政治アナリストの本田雅俊は、菅総理には明確なビジョンがあまりにも少ないため、オリンピックは非常に重要だと言う。「国民は大きな疑問を持っている。菅は何をしようとしているのか? 彼はオリンピックを成功させること、と答えるのみだ」と本田は話す。
「オリンピックの成功は、菅が与党自民党の総裁に再選されるための条件だ。それが、彼がオリンピックを続行することに熱心になっている理由だ」と本田は言う。
オリンピック批判は、野党連合、市民運動家、医師会などが寄せ集まった集団から起きているが、統括するリーダーはいない。国民感情は開催に気は進まないが仕方なく従っていて、その責任を負う人々、特にIOC(国際オリンピック委員会)に対して怒りを覚えている。
日本のスポンサー企業も反発的だ。歴史上のどのスポーツイベントよりもこの東京オリンピックに金をつぎ込んだのに、マーケティング上のリターンはほとんどないのだから。東京2020は日本企業からだけで3000億円以上を集めた。これとは別にIOCが受け取る世界企業からの収入がある。
IOCが過去2回の世界大戦中のようにオリンピックを単に中止するのではなく、1年間の延期を決めたことで、ホテルの予約からスポンサー契約まで、何千件もの商業契約の再協議という混乱が起きた。大手スポンサー企業は最初の契約で約100億円を払ったが、開催延期が決まると、さらに10億円を拠出するよう要求された。この問題に詳しい筋によれば、残りのスポンサーは各5億円を支払うよう言われた。
高額な出資にもかかわらず、今、スポンサー企業はパンデミック前には想像もできなかったイメージ低下のリスクと闘っている。多くの企業は、五輪に関するテレビCMで自社のブランドやサービスを宣伝するのを控えてきた。無観客開催の決定も、販促の一環としてチケットを配ってきたスポンサーや、開催期間中の販売を見込んで在庫を確保していた企業を直撃した。
オリンピック放映権を持つ放送会社にとっては、状況は上向きだ。ちなみに放映権料はIOCの収入の3分の1近くを占める。アメリカの権利者、NBCは6月、オリンピックに関する広告を約1300億円以上販売した、と発表した。これはパンデミック以前に予測していた1350億円には少し足りないものの、同社がリオ五輪で得た広告収入よりも多い。
パナソニック株式会社の新CEO楠見雄規は、たとえ無観客での開催となっても、オリンピックのいくつかの側面には影響しないと言う。「オリンピックが平和の象徴であり、公平かつ平等な状況の中で競技し、成果を上げる場であることには変わりはない」と楠見は話す。
しかし楠見も、オリンピックの本質の変化という観点から、スポンサーとしての将来については、社内で話し合いが必要だと認めている。競技場に大型ディスプレイ、オーディオ設備、プロジェクターを供給する同社は、2024年までオリンピックのグローバル・スポンサーとなっており、2019年半ばには東京オリンピックだけで2000億円以上の収益を見込んでいた。
「当社がオリンピックのスポンサーを務めるのは、このような活動が社会のためになると信じるからです」と楠見は言う。「しかし、スポンサー活動を続けるかどうかについては、オリンピックがここからどのように進化していくかを見て、その意味を注意深く評価することによって、社内で判断していくつもりです」
隔離された大会
選手たちにとっても、これまでとは非常に異なった経験となる。彼らが選手村に滞在できるのは自分の競技前後の数日間だけで、何度もウイルス検査を受けるだけでなく、多くの感染症対策ルールのうち1つでも違反すれば厳しいペナルティーが課される。
大会におけるバブル方式を維持するための複雑なルールが、問題を増加させており、指示が何度も更新されている。選手たちは、食事、睡眠、競技の間を除いてほぼずっとマスクを付けるように言われている。タオルと水のボトルは共有禁止。各会場には参加者同士の接触を制限するため、透明アクリル板が至る所に設置されている。
「もううんざりです」と話すのは競泳選手のアダム・ピーティーだ。東京オリンピックでイギリスに金メダルをもたらすかもしれない本命選手だ。「またミーティングに呼ばれてコロナの話を聞くのはもう嫌です。今私がやりたいのはレースで競うことだけです」
選手、コーチ、チーム関係者の84%が訪日前にワクチンを接種するものと見込まれる。IOCがファイザーおよび中国政府と交渉し、各選手団にワクチンを提供したのだ。しかし感染対策のメインとなるのは、大会期間中を通して、選手、職員、そして「競技」に関わるあらゆる人から採取した何万件もの検体を毎日検査するという厳しい管理体制だ。
「我々は参加者の安全が一番の目的だと言っているのですから、たとえコストがかかっても言ったことを実行するまでです。これは非常に徹底した検査体制になるでしょう」とIOCのクリストフ・デュビ五輪統括部長は言う。
事務局はウイルスを完全に食い止めることは不可能だろうと認める。すでに何人もの陽性が確認されている。特定された選手は選手村の発熱外来で受け入れ、他の選手らから隔離する。競技スケジュールがタイトなため、偽陽性であっても選手は競技に出場する機会を奪われることになるかもしれない。
「我々は陽性者と無縁ではありません。ただ、小さな問題が大きくならないようにするしかありません」とIOC五輪運営部長のピエール・デュクレは言う。
今後数週間で約1万1000人のオリンピアンと4400人のパラリンピアン、加えてコーチ、審判、その他の関係者4万,000人が到着する予定だ。一つの大きな疑問は、これらすべての感染防止策が競技そのものに影響するか否かだ。東京2020組織委員会によれば、競技以外のすべてのことには適応済みだが、競技は神聖なままだ。
橋本聖子大会組織委員会会長は、多くの選手の準備が妨げられることを認めている。日本の自治体の多くが事前合宿の受け入れを中止しており、選手たちは短期間で日本の高温多湿な環境に体を慣らさなければならない。
「参加するすべての国と地域が、延期された東京2020は、前回大会とはかなり違ったものになると感じているのは間違いありません」と橋本会長は話す。
東京2020の意義
しかしながら、こういった違いの中にも最大の望みがある。日本の首都東京に前向きなレガシーを残し、この世界最大のスポーツイベントの存在意義について答えを出すことだ。この十数年間、世界中の大都市は、開催国となるためのコストがその後の経済効果に見合わない、あるいは国民のムードを高めることによるリターンが曖昧だと考え、このイベントの誘致から手を引いてきた。
この考え方が広がったのは、2014年のソチ冬季オリンピックのコストが、いくつかの見積もりによれば、輸送路やインフラも含めると約5兆5000億円にも上ると言われたことを受けている。2024年と2028年に行われる直近2回の夏季五輪の開催国がそれぞれパリとロサンゼルスに効率よく決まったのは、ライバル国が招致活動から撤退したからだ。
東京2020の当初の予算は1兆3500億円で、そのうち6000億円を東京都が、1500億円を政府が支出し、残りは事業収入で賄う予定だった。1年間の延期により、予算額は1兆6400億円に膨らみ、増加分はほとんどが国庫から支出される。
競技を閉ざされた扉の中で行うという決定により、東京の納税者は900億円にも上るチケット払い戻しという債務を負った。一方、会計検査院は、オリンピックの公式予算が国の支出額を低く見積もっていると、指摘し続けてきた。
日本の納税者が負担する本当のコストは今後もずっと、あるいは少なくとも大会終了後だいぶ経つまで公表されることはないだろうが、その金額は約2兆7000億円を優に超える可能性がある。
IOC幹部が大会実施を強く求め「アルマゲドンでもない限り実施できる」などと高圧的なコメントをしたことも、日本で激しい怒りを買った。しかし、大会の延期と再構築により、オリンピックというお祭り騒ぎは規模を縮小して実施できることが証明されるのは疑いの余地がない。
選手以外の参加者は14万1000人から4万1000人へと2/3以上が削減された。その中にはスポンサーや要人、その他の関係者なども含まれる。もし日本がそれでもなおオリンピックを成功させることができたなら、何が必要で何が必要でないかを他の都市に示すことができ、将来、大会の規模を小さくすることを求める後押しとなるだろう。
JOCの山下会長は「私たちは、オリンピックとは何かということを再考する機会を与えられました。それが東京2020の意義だと考えます」と語る。
デュビ五輪統括部長は、東京大会はオリンピックが、開催都市固有のニーズや要求に適応できるものであることを証明するだろう、と言う。「東京オリンピックが実証するのは、我々がオリンピック・ムーブメントについて語るとき、開催国とのパートナーシップについて語るとき、語られた言葉は口先だけのものではないということです」と彼はつけ加えた。
東京オリンピックは、日本復興や人類とウイルスの戦いというよりもむしろ、オリンピックを純粋なスポーツイベントにする絶好のチャンスだろう。さまざまなものが削られ、東京2020に残っているものは、選手たちと、「誰が最も速いのか? 誰が最も高いところまで行けるのか? 誰が最も強いのか?」というシンプルな疑問だけだ。
IOCのデュプレーはこのように述べる。
「私たちの基本理念は、これらの選手たちはこの時を逃せば二度とここに来ないかもしれないということです。そのことも大きな原動力となり、選手たちがゴールに全力を傾けるのと同じくらい、確実に私たちも大会開催に責任をもって取り組みたいのです」
首相官邸で菅が望んでいるゴールは、日本選手が非常に多くの金メダルを獲得し、新型コロナウイルス感染者がほとんど出ないことだろう。もはや国の復興の問題ではなく、政治的生き残りの問題なのだ。
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