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※2021年7月1日 朝日新聞1面 紙面クリック拡大
※2021年7月1日 朝日新聞2面 紙面クリック拡大
※朝日新聞、紙面文字起こし
重点措置 解除困難の見方
首都圏、専門家「再拡大強く懸念」 |
新型コロナウイルス対策を厚生労働省に助言する専門家組織は30日、会合を開き、東京都を中心とする首都圏の感染状況について、「新規感染者数が増加に転じており、感染の再拡大が強く懸念される」と分析し、早めの対策を求めた。政府内では、首都圏での「まん延防止等重点措置」を期限の7月11日で解除するのは難しいとの見方が広がっている。▼2面=迫る第5波
東京都の人口10万人あたりの新規感染者数は、直近1週間で24・59人。前週からの増加率は25%となっている。分科会の指標で最も深刻な「ステージ4(感染爆発段階)」が目前だ。都が30日に発表した新規感染者は714人で、前週23日と比べ95人増加した。
インドなどで見つかった「L452R」の変異があるウイルスに感染した人は、PCRスクリーニング検査で28日までに全国で842人。1週間前の433人から倍近くに増えた。このようなデルタ株への置き換わりについて国立感染症研究所は、6月末で30%前後、7月半ばには半数を超える可能性があると指摘した。
政権は危機感を強めている。菅義偉首相は30日、新型コロナ対応を協議する関係閣僚会合で「東京の新規感染者数は増加傾向にある。高い警戒感をもって対策を徹底するとともに、状況をよく見て必要な対策を機動的に講じていく」と述べた。
今後は、期限を迎える重点措置への対応が焦点となる。政府は期限直前まで感染状況などを見極めて解除の可否を判断する。首相周辺は「(感染者が)増加傾向で解除の話になっていない」と指摘。コロナ対応にあたる幹部官僚も「改善に向かう要素がない」と否定的だ。政府内で重点措置の「延長論」が広がりつつある。
さらなる首都圏での感染状況の悪化に備え、緊急事態宣言の再発出について「十分念頭に置いている」(田村憲久厚労相)との声も出ている。五輪開幕を7月23日に控え、重点措置が首都圏で延長された場合、政府内では無観客開催の可能性も取りざたされている。(田伏潤、永田大)
東京 迫る第5波
楽観シナリオでも月内1日1000人超 |
新型コロナウイルスは5度目の感染拡大となるのか。新型コロナ対策を厚生労働省に助言する専門家組織は30日の会合で、特に東京都での感染の広がりに強い懸念を示した。開幕が迫る五輪は、無観客開催が現実味を帯び始めている。▼1面参照
対策遅いと「医療逼迫」
専門家組織の会合では、新規感染者が増え始めた東京都の状況に厳しい声が相次いだ。会見した脇田隆字・国立感染症研究所所長は「感染拡大が続くと、地方への影響が懸念される。感染を抑制する対策の徹底が必要だ」と述べ、夜遅くまで酒類を提供しないことやマスクなし会食を避けることを求めた。
東京のこの日の新規感染者は714人。11日連続して前週の同じ曜日を上回った。首都圏での「まん延防止等重点措置」を期限の7月11日までで解除することについて、舘田一博・東邦大教授(感染症学)は「これで解除したらおかしい」と指摘した。
感染拡大の大きな理由は人の流れの増加とみられている。緊急事態宣言を解除した6月21日以降、夜間に繁華街にいる人の数は18・1%増えた。
会合では、「第5波」につながりかねないとする試算も示された。京都大や感染研によると、インドで見つかった変異株(デルタ株)の影響が小さく、五輪開催の影響がないとする「最も楽観的なシナリオ」でも、7月中に都内の1日の感染者数は1千人を超える。この時点で緊急事態宣言など強い対策をとれば、ワクチンの効果もあって重症病床の使用率は50%以下で乗り切れるが、タイミングが遅れると「医療逼迫(ひっぱく)が起きうる」としている。
都内の感染者をみると、20代を中心に若い世代が増えている。6月8〜14日は20〜30代が53%となった。一方、ワクチン接種が進む高齢者の割合は下がり、直近では9%だ。(田伏潤、市野塊、石塚広志)
無観客五輪に現実味
東京で感染状況が改善する兆しは見えず、7月11日に期限を迎える「まん延防止等重点措置」を解除する理由が見当たらない。そんな現状に政権幹部らはいら立ちを募らせる。
12日以降のコロナ対応をどうするかは、その11日後に開幕する五輪のあり方に影響する。国民の暮らしを引き続き大きく制限するようなことになれば、菅義偉首相らがこだわってきた有観客開催は難しくなるとの声が、首相官邸内でも上がり始めている。
政府や東京都、大会組織委員会などは6月21日、観客について重点措置が解除されることを前提に「上限1万人」とすることで合意した。だが、同時に、緊急事態宣言が出るか重点措置が延長された場合は、「無観客も含めた対応を基本とする」ことも決めた。この決定について政府内からは、「宣言下では無観客、重点措置下ではその時の政治判断」といった解釈が漏れ聞こえる。
ただ、最近になって複数の官邸幹部から「無理なら観客は入れない。何が何でもという話ではない」などと、重点措置下でも無観客はありうるとの見方が出ている。閣僚経験者は「有観客だと『コロナに打ち勝った証し』と言えるが、感染リスクが上がる。首相がどう判断するかだ」と話す。
その首相が何とか避けたいシナリオが、4度目の緊急事態宣言だ。観客を入れる余地は消え、五輪開催を「コロナに打ち勝った証し」としてきた言葉との整合性も問われかねない。自民党ベテランは「『緊急事態』という響きが悪い」。宣言下で五輪を強行したというイメージが国内外に広がることを懸念する。
コロナの感染拡大を抑え込めない政権がすがるのが、ワクチン接種だ。首相周辺は「ワクチンがゲームチェンジャーになりえる」と、効果への期待を語る。
ワクチンは重症化しやすい高齢者らを中心に接種が進む。都の感染者は、60代以上の割合が1月時点で約2割だったが直近では1割を切る。一部の政権幹部らは、今後感染者数は増えても重症化しやすい高齢者の感染は減り、病床逼迫(ひっぱく)は避けられるとの予測を語る。
官邸幹部は「重症化しなければ、コロナもただの風邪になる」と強調。東京で新規感染者数が増えても、ほかの指標次第では緊急事態宣言を出さずに済むとの見方を示す。ただ、こうした主張に「五輪ありき」の危うさを指摘する声もある。別の官邸幹部は「『重症化しなければ平気』と言っても、政府の都合と受け止められる。専門家にも理解してもらえないのでは」と語る。(森岡航平)
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