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明石市長が激白「ワクチン寄こせ」と西村大臣に直談判もゼロ回答 「利権化し、官邸が恣意的に運用」
https://dot.asahi.com/dot/2021063000077.html
2021.6.30 19:50 今西憲之 AERA dot.
菅義偉首相と西村康稔経済再生担当相(C)朝日新聞社
菅政権に物申す泉房穂・明石市長(C)朝日新聞社
「菅義偉首相や官邸はめちゃくちゃや。打って打ちまくれというのに、ワクチンがありませんでは話にならへん」
こう噛みついたのは、兵庫県明石市の泉房穂(ふさほ)市長だ。明石市は6月30日、新型コロナウイルスのワクチン接種の一部予約中止を発表。理由は、国からのワクチン供給が明石市のリクエスト数から大幅に減るためだ。
明石市は7月6日に届く予定のワクチンについて47箱(5万4490回分)を求めていた。しかし、国からの回答は22箱(2万5740回分)。約3万回分のワクチンが不足となる。
そこで泉市長は地元の選出でもある西村康稔経済再生担当大臣と東京で面談し、陳情したという。
「実は6月はじめから兵庫県選出の藤井比早之(ひさゆき)内閣府副大臣から『ファイザーのワクチンが足らなくなるかもしれません』と聞いたことがあった。明石市は希望者全員に9月末でワクチン接種を完了させる計画を立て、順調に進んでいた。それが急に政府からワクチンがありません、と通告され、驚いた。そこで西村大臣に直接、訴えたら『なんとか頑張ります』と口だけは言う。その前にも『ワクチンは本当に大丈夫ですか』と念押したら『大丈夫』と太鼓判を押していたのに…。私があまりに怒ったので、その後に西村大臣から電話がありました。『アイデアがあります。兵庫県か他の市町村に相談してはどうか』という。何を言うてますねん。菅首相は1日100万回、打って打ちまくれと記者会見で言ったでしょう」
泉市長の怒りはなかなか収まらない。兵庫県では三木市、丹波市、丹波篠山市でワクチンが国から十分、供給されず、予約中止を決めている。
明石市にワクチンが配分されなかったのは、国のワクチン接種記録システム「VRS」と関係があるという。
AERAdot.で6月3日に既報したとおり、政府が接種状況をVRSに登録するため、全国の自治体に配布したタブレット端末が「ポンコツ過ぎる」と現場で使われない問題が生じた。
タブレットは接種券に記載された番号などをタブレットのカメラで読み取るために配布されたものだが、正しく読み取れないトラブルが続出。接種券の番号の入力に時間がかかるため、使用を見合わせる自治体が相次いだ。
国へのワクチン要望も、VRSを通じて行うことになっていた。だが、明石市をはじめ、VRSを活用しなかった自治体がターゲットとなり、ワクチン供給が削減されているというのだ。
「国の回答では7月6日に加えて、19日分も供給数は約束できないと減らされることになりそう。8月に入れば要望を通すという。ワクチン接種は早いところもあれば、遅い自治体もあり、使ってない在庫がたくさんある。キチンと調整して配分すればいいだけの話。簡単なことを政府はなぜ、できないのか…」
泉市長の訴えに対し、「首長の怒りはもっともです」と政府関係者はうなずく。
「ワクチンの差配は正直、利権化されていて、実質的にそれを仕切る官邸は“ワクチンマフィア”と裏で呼ばれています。各県からの要望数量を認めたり、割り落としたり、どのように差配しているかは正直、ブラックボックス。VRSのボロタブレットで文句を言った自治体を含め、菅政権に従順でない自治体、更にリアルな話をすると、首長が自民党以外の自治体への配布を減らしたりといった恣意的な運用はあると聞こえてきます」
一方、自治体だけでなく、菅首相肝いりの職域接種も、一時停止されることが決まった。使用されているモデルナ製のワクチンが足らなくなったためだ。職域接種を予定していたある会社の担当者はこう嘆く。
「なかなか確保できない。医師や看護師をなんとかお願いし、場所もめどをつけた。やっと申請できると思ったら、申請中止という。これまで頑張ってきたのは何のためだったのか。医師や看護師に、どう説明すればいいのか」
その一方で<新型コロナウイルスワクチンの職域接種を開始 ワクチン接種に伴う特別有給休暇安心のワクチン接種>と充分過ぎるワクチンを確保し、職域接種をはじめた企業もある。
その企業の社員は数百人だが、トップは6月21日にSNSで<今週と来週の2週間で5000本のワクチンを確保。ワクチン接種を進めて安心安全は環境を作りましょね。河野さん、小林史明さん、お疲れ様です。(^^)/>(ママ)と記述。自身が接種を受けている写真を添付している。
文脈から河野太郎ワクチン担当相、ワクチン担当補佐官をさすとみられる。この企業の関連先のホームページをみると、河野大臣が講演していたり、小林補佐官は企業が関連するシンクタンクのメンバーになったりしていた。河野大臣と小林補佐官はこの企業とつながりがあるのだろうか。
「企業で講演をしていますが、ワクチンについて相談などはなかった。河野大臣はどこでもワクチン接種を推進しているので、その程度の話をしていた程度ではないか」(河野氏の事務所)
「この企業のワクチンの確保に関与したことはありません。講演やパネルディスカッションの要請に応じ、イベントに参加することがありますが、講演料等の受け取りはございません」(小林氏の事務所)
5000本を確保したとする企業にも取材を申し込んだところ、広報より以下の回答があった。
「ワクチン職域接種で河野氏・小林氏に要請・相談・依頼をした事実はございません。河野氏、小林氏が日本国民のために頑張っていらっしゃることに敬意を表し、『お疲れ様でした』と友人に対して代表が申し上げたものです」
東京五輪・パラリンピックを目前に控え、日本中で再び、ワクチン不足に陥っている状況が続いている。官邸関係者がこう話す。
「職域ワクチンの申請システムは、問題になった防衛省の大規模ワクチン接種会場の予約と同様、申し込む企業側が必要数を入力すれば、申請できてしまうお粗末システムになっています。本来の必要数の10倍を申請しても供給されているケースはザラ。余剰ワクチンが転売されたり、地下ルートで”ワクチンロンダリング”されているという噂もあります。1日100万回目標などのために見切り発車した菅政権の責任ですよ」
東京五輪開幕のゲームチェンジャーとされたワクチン接種の雲行きが怪しくなっているようだ。
(AERAdot.編集部 今西憲之)
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