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※2021年6月25日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年6月25日 日刊ゲンダイ2面
【この夏、東京が野戦病院化の懸念】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) June 25, 2021
女帝だけでなく職員も疲弊 感染爆発、医療従事者も限界
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/1vKCqNC0I4
※文字起こし
“女帝”不在の幕開けだ。「国政選挙の映し鏡」とも評される東京都議会議員選挙が25日、告示。来月4日の投開票までの選挙戦で本来、注目を集めていたのは小池都知事の出方だ。
自身が生みの親の「都民ファーストの会」を応援するのか、コロナ対策や東京五輪開催での連携を理由に「政敵」だった自民との協力関係を深めるのか。小池は態度を明かさないまま、「過度の過労」を理由に入院することになった。
告示直前の「ダウン」に政界は疑心暗鬼だ。「都民ファと自民の板挟み逃れのサボタージュか」「18年も連れ添った愛犬が最近、亡くなったことによる“ペットロス”」などと情報が駆け巡ったが、小池が「ワーカホリック」状態だったのは確かである。
1年以上続くコロナ禍で、土日のいずれかは必ず都庁に登庁。今月も静養発表の22日まで登庁しなかったのは4日間だけ。その日もテレワークや幹部職員と連絡を取り合っていたという。残り1カ月を切った五輪開催と、今後の自らの立場を左右しかねない都議選も控え、悩みの種は尽きない。入院までの数日は明らかに覇気がなかった。
昨年4月には会見で「撃ちてし止まん型ですから」と戦時スローガンを引用し、物騒な体力自慢をしてみせた女帝ですら、あえなく“戦線離脱”したのだ。直前まで呆れるほどのドタバタ、場当たりで露呈した何の戦略もない五輪に、このまま“バンザイ突撃”したらどうなるのか。
それこそ都庁と霞が関の役人たちも大会組織委員会の職員も死屍累々。東京の“野戦病院化”が心配になってくる。
思い付きの指示が雨あられ
「かつて同僚だった幹部職員から既に『部下たちが死にそうだ』との悲鳴が届いています」と語るのは、元都庁幹部で近著に「ハダカの東京都庁」(文芸春秋)がある澤章氏だ。こう続けた。
「今月からは特にコロナ対策と五輪開催の詰めの作業に、どの部署もマンパワーを割かれて本来業務に支障が出ている状況のようです。都のオリパラ準備局に約400人、大会組織委に約1000人が出向中でも、管理職を含め、まだまだ動員。業務内容も交通整理の準備などで、水道局といった直接は無関係の部署からも、どんどん駆り出されるのです。ただでさえ、職員1人の仕事に負荷がかかる中、小池知事から生煮え、思いつきの指示が雨あられと降ってくる。事前に知らされるのは、ごく少数の幹部のみ。場合によっては誰も知らされず、トップダウンで“つべこべ言わずにやれ”です。築地市場跡地を突如、大規模ワクチン接種会場にしたり、その会場を批判が集中した代々木公園の五輪ライブサイトに移すと表明したり。都庁の展望室にも接種センターを設けましたが、わざわざ地上202メートルの高さでワクチンを打つ必要はないでしょう。小池知事は常に自身の都合や見栄えを意識し、その場しのぎの『大号令』を乱発。そのたび、大慌てで対応に追われる職員は残業の連続で、完全に疲弊しきっています」
ブラック企業のオーナーも真っ青の小池が、以前は「残業ゼロ」を知事選の公約に掲げていたとは恐れ入る。きっと女帝不在に胸をなでおろす職員も多いはずだ。むろん、“バカな大将”に振り回されている現場は都庁だけではない。
コロナ失策と無謀な開催に「もう死にそう」 |
1カ月の残業378時間――。菅政権のコロナ政策を担う内閣官房の対策推進室(コロナ室)で、常軌を逸した超過勤務が明るみに出たのは今年3月のこと。
2度目の緊急事態宣言が出た1月のコロナ室の職員102人の平均残業時間は約122時間。前出の残業時間が最も長く、実に過労死ライン(月80時間)の5倍近くに達し、一般職の国家公務員の年間残業時間(2019年分)の平均348時間をたった1カ月で上回っていた。
さすがに所管の西村コロナ担当相が陳謝したものの、菅政権の場当たりコロナ対策で霞が関の役人の「超」がつく超過勤務は常態化。今年2月までの3カ月間で過労死ラインを超えた職員は延べ6532人。コロナ対策に追われた厚労省の1092人がトップで、突出して残業時間が長いのはコロナ室のある内閣官房だった。
前出の378時間がぶっちぎりで、昨年12月に305時間、2月も283時間とワースト5のうち3つを占めた。政府は全て同じ職員かどうかを明かさないが、どう考えても菅政権のコロナ失策の犠牲者である。
「死にそう」「地獄だ」とうめき声を上げるのは複数の組織委職員だ。「甘い見通し」「早すぎる解除」で緊急宣言が続き、観客有無の判断をズルズル先延ばし。おかげであらゆる想定を視野に入れた作業に追われてオーバーワーク。「月の残業が150〜200時間を超える職員もいる」(ある大会関係者)から、こちらも倒れる寸前だ。
その上、政府も都も組織委も5者協議で観客は「上限1万人」と決めつつ、感染状況次第で「無観客も検討」との保険をかけ、またも最終判断は先送り。都内のリバウンド傾向は顕著で来月11日には「まん延防止等重点措置」の解除どころか、4度目の緊急宣言の発令さえ懸念されている。
開幕ギリギリで一転、「上限引き下げ」「無観客」となれば、チケットの再抽選や払い戻し作業がのしかかり、組織委の職員はもう限界だ。
灼熱スタンドに児童動員の狂気
犠牲を強いられるのは医療従事者も同様だ。早くもウガンダ選手団のコロナ陽性を見落とし、大阪移動を許すグダグダ検疫が露呈し、水際対策はザル。開幕が近づけば海外選手が1日数百人単位で空港から即、選手村に向かう。仮に空港検疫で選手1人の陽性が確認されても、同乗した選手は選手村に直行。濃厚接触の判定はその後というからメチャクチャだ。
「選手村のベッド数は約1万8000床。複数名による相部屋で共同生活を送ります。競技会場との間は“バブル方式”で包み込めても、選手村内はどうしても隙が生じる。競技会場内でも選手やコーチはメディアや大会関係者との接触は避けられない。海外の報道陣は例外的に外食が認められており、選手らと比べて規制が緩い。選手村クラスターの発生リスクはゼロとは言い切れません」(澤章氏=前出)
そんな事態が起これば、もう目も当てられない。医療従事者も限界だ。開催期間の7、8月は熱中症のピークとも重なり、昨年も都内では6〜9月に約6000人が救急搬送。262人が亡くなった。期間中の猛暑対策として小池都政が打ち出したのは打ち水、アサガオ、風鈴、氷風呂、そして「かぶる日傘」――。これじゃあ選手や観客は守れないし、これまでロクでもないコロナ対策しか打ち出せなかったのも当然な気がする。
「灼熱のスタンドに『学校連携観戦』として、引率者も含め児童生徒ら約80万人を動員する計画は正気とは思えません。招致時の〈アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候〉との大嘘がケチのつき始め。真夏の東京で五輪を開けば、2年前に選手がバタバタ倒れたドーハ世界陸上の二の舞いです。しかも、あらかたの専門家は『第5波』到来を確実視しています。第4波の際は大阪で医療崩壊が現実となり、助かる命を救えなかった。その惨状を再び東京で起こしてはならない。『名誉総裁』のご心配を深刻に受け止め、オリンピックは開くべきではありません」(西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏=感染症学)
炎天下で発熱患者が急増し、感染爆発で医者も次々ダウンの修羅場になれば「途中中止」もあり得る。そんな事態が現実味を増す前に、菅も小池も「名誉ある撤退」をIOCに具申すべきだ。
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