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※2021年6月17日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年6月17日 日刊ゲンダイ2面
【もう狂った政治を止められないのか】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) June 17, 2021
言葉を失うデタラメの連続に絶望と無力感
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/8KYIRQGJgY
※文字起こし
「五輪で観客がいないと、コロナに負けた感じがする」――16日付の朝日新聞3面に聞き捨てならないコメントが掲載されていた。
声の主は「首相側近」。空前絶後のパンデミックを引き起こしてきたウイルスに、いまだ「打ち勝ちたい」感覚に声を失う。こんな「側近」しか周りにいなければ、菅首相の新たなコロナ対策が「五輪シフト」に傾くのも当然である。
16日の新型コロナ対策分科会で、政府が示した緊急事態宣言とまん延防止等重点措置解除後の大規模イベント観客制限の緩和策が、あっさり了承された。具体的には現行の「収容人数の50%を上限に最大5000人」から「収容人数の50%以内なら上限1万人」に引き上げられる。
菅政権は期限となる20日に宣言解除し、東京や大阪で重点措置に切り替える方針を固めた。重点措置の期限は、7月23日の東京五輪の開幕をにらんで同月11日までとする方向で調整中だ。性懲りもなく「コロナに打ち勝った証し」として有観客の五輪に道筋をつけたい考えだから、正気とは思えない。
東京新聞の試算によると、五輪競技会場に現行の「収容人数の50%」か「最大5000人」を当てはめた場合、観客数は延べ約310万人に上る。その規制を取り払って「1万人」に引き上げれば、単純に2倍近くに観客は増える。
想像して欲しい。約1カ月後に日本中から数百万人の観客が東京に押し寄せ、人の流れが渦巻く光景を。あれだけ専門家から「人流」の増加が感染拡大につながると、口を酸っぱくして注意されても、菅とその側近の心には響かない。「コロナに負けたくない」という子どもじみた発想から抜け出せないのだ。
居直ったのか、破れかぶれか、本当に成功すると思っているのか。観客の上限緩和をすんなり認めた分科会の尾身茂会長も含め、菅一派は完全にトチ狂っている。
戦後史上最も国民の命を軽視した政権 |
16日は京大ウイルス・再生医科学研究所の古瀬祐気・特定准教授と東北大、国立感染症研究所のグループが、6月から9月にかけての都内の感染状況に関するシミュレーションを厚労省の専門家会合に提出。「最も悲観的なシナリオ」はショッキングな推計だ。
20日の宣言解除後に1カ月かけて人出が10〜15%増加、五輪開催でさらに10%増えて、加えて感染力や病原性が非常に高い「インド株」への置き換えが進んだ場合、7月前半から中旬に新規感染者数が1日1000人を超す。この時点で宣言を再び出しても、8月中旬には2000人を突破するという。
ただ、実際に五輪を強行すれば、この「悲観シナリオ」を超える惨状が待ち受ける可能性すらある。16日の都内の新規感染者数は501人。12日に続き、前週同曜日を上回った。前週の440人から61人増え、約14%アップ。とうとう新規感染が下げ止まったとみるのが妥当である。
人出の増加も顕著で、GW後は4週連続で都内の主要繁華街の人出が増えていた。大型連休中と比べ昼間は26%増、夜間は32%増が感染下げ止まりのゆえんで、この先は増加に転じるのが目に見えている。つまり宣言解除の前から都内では既にリバウンドの兆候が見て取れるのだ。
20日に重点措置に切り替えれば、3月の「早すぎる宣言解除」の二の舞い。しかも、一定の要件を満たせば酒類の提供を午後7時まで認めるというから、元のもくあみだ。
16日の都内の新規感染者のうち、20代が152人と約3割を占め、10代も43人と見逃せない数だ。30、40代も加えると、実に約75%に達する。この世代は、ワクチン接種が行き届かない層と重なり、今後のリバウンドの中心となっていくのだろう。また、自粛生活で最も我慢を強いられてきた世代でもある。
運を天に任せた壮大な賭け |
何せ、都民は今年に入って17日まで、緊急宣言が126日間、重点措置を加えると140日間と実に8割超の日々を自粛に次ぐ自粛に耐え忍んできた。宣言終了後は解放感に浸って出かける人も増えるし、ワイワイと騒ぎ出す若者も確実に増えるに決まっている。
そして、おあつらえ向きに「世紀の祭典」が間もなく始まり、できるだけ観客を増やそうと菅一派は「悪だくみ」だ。五輪の観客が増えれば増えるほど、熱中症対策など医療従事者の負担も増えるが、無責任政権は「分かっちゃいるけど、やめられない」。
たとえ人流増と感染拡大で医療体制が逼迫しても、五輪強行のためなら見て見ぬフリ。国民の不安など馬耳東風で、ひたすら「安心安全」のお題目を唱えれば疫病は退散すると信じ込んでいるとしか思えない。
おまけに、大会組織委員会まで調子に乗っている。開催期間中はサーフィン競技会場の千葉・釣ケ崎海岸で“密フェス”を主催。7つの競技会場が集中する東京・お台場、有明一帯には聖火台をはじめ、大会スポンサーのパビリオンなどを設置する予定だ。組織委は「計画を見直す」とは言うものの、準備は着々と進んでいる。
小池都知事を除いた各自治体の首長が「人流ができ密になり大声を出すため」(岐阜県の古田知事)と、五輪のパブリックビューイングを次々中止しても、菅政権と組織委は率先して「いらっしゃ〜い!」と客を呼び込み、人流増の火に油を注いでいるのだから始末に負えない。東京五輪関連の著書がある作家の本間龍氏はこう言った。
「専門家の指摘では7、8月に次の感染の大波が押し寄せるのは明らか。五輪に固執する菅政権は国民の犠牲を多少は払ってでも開催すると腹をくくっているのでしょう。国民にとって犠牲の代償はゼロに等しい。それなのに、組織委はスポンサー企業を喜ばせるため、菅政権はお祭りムードの中で総選挙に突入するためだけに『もう引き返せない』となし崩し的に五輪開催に邁進。まさに運を天に任せ、国民の命と健康を賭けた壮大なギャンブルです。75年に及ぶ戦後日本史上、これだけ国民の生命を軽く扱った政権は存在しません」
ご都合主義の二重基準こそ最大の特徴 |
こんな人命軽視のデタラメ政権が、取ってつけたような酒類規制をかけたところで、誰が言うことを聞くものか。全ては有観客開催で世界に「コロナに勝った」と見えを張るため。五輪命のポンコツ首相のせいで、この国の秩序は乱れるばかり。最も恐れていた五輪由来の新たな変異株が出現し、世界にパンデミックをまき散らす「人類史上最悪のシナリオ」へと一直線である。
「東京五輪のコロナ対策と称して海外選手を宿泊施設に閉じ込め、唾液の抗原定量検査の30分前には『飯を食うな』『歯を磨くな』と行動制限。重大な違反があれば制裁金や国外退去措置を科すと脅しながら、観客を増やして感染リスクを高めるのは大いなる矛盾です。ご都合主義の二重基準こそが菅政権の最大の特徴で、自分勝手な解釈で法やルールを作り変え、やりたい放題。国会閉幕のドサクサ紛れの土地規制法の強行採決もその一環です。基地周辺や国境離島を外資の手から守るなんて建前に過ぎず、真の狙いは住民監視や住民運動の制限でしょう。あらゆる個人情報の収集や土地価格の下落など、プライバシー権や財産権の侵害を招く恐れがあり、憲法の規定を侵害する悪法です」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
迷走を重ねた独裁政権の末期症状のごとく、菅政権は人権弾圧と取り締まりだけ強化の一途だ。暴政が加速化する狂った政治を、もう誰も止められないのか。五輪ありきの言葉を失うデタラメの連続に、国民が絶望と無力感にのみ込まれてしまったら、オシマイだ。
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