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「負ける」とわかっていて突き進む戦前と変わらない日本人 三枝成彰の中高年革命
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/290431
2021/06/12 日刊ゲンダイ
五輪開催に突き進む(C)日刊ゲンダイ
日本人には昔から、負けるとわかっている戦いにあえて突き進んでいくところがある。「空気」に支配されやすいのも特徴だ。「何となく、そうしなければいけない雰囲気になってしまったから」と流されるままに流されて、いくつの過ちを犯してきたことか。猪瀬直樹さんの「昭和16年夏の敗戦」を読むと、そのことがよくわかる。
その年、全国各地や満州から、軍・官僚・民間の各分野の若手エリートたちが政府の「総力戦研究所」に集められた。目的は国防に関する分析で、日米開戦の機運が高まるなか、彼らは戦争のシミュレーションを行った。
当時の日本屈指の頭脳が導き出した結論は「日本必敗」。だが東条英機は「あくまで机上の演習で、実際の戦争とは違う」と切り捨てた。そして日本は真珠湾攻撃に踏み切り、彼らの想定どおりに敗戦した。開戦数カ月前に得た回避のチャンスをみすみす棒に振ったのだ。
それと同じことが80年後の日本で起きている。国内外の専門家やメディアが警鐘を鳴らしているのに、政府は五輪開催に突き進む。ここで頭を切り替え、コロナの感染状況に対する医学的・科学的な検証をして中止を世界に宣言すれば称賛されるだろうが、そうしようとしない。
非科学的な主張を繰り返し、的外れなことをするばかりで、データに基づいた冷静かつ臨機応変な態度が取れないし、とにかく首尾一貫していない。
沖縄の感染者がGW明けに急増したのは、全国から観光客が押し寄せ、人の流れが増えたからだろう。
「県をまたいだ移動はするな」と言う一方で、都は来場者2万人想定の五輪のパブリックビューイングを井の頭公園などで行う計画(全国でも予定)を進めている。
国内外から多くの人が競技開催地に集中すれば、いくら対策をしていても感染拡大の危険度が高まるのは自明だ。沖縄と同じことを東京や他の地域で繰り返してはならない。
言いたいことを言えない空気
政府が期待する経済効果も、むしろ赤字になるのではないか。
中止となればアスリートたちには気の毒だが、国からのケアを手厚くし、次の機会に備えていただくのはどうだろう。
大会期間中はGPSでメディア関係者の行動を監視するというが、スマホを複数持っていれば、すり抜けることが可能だ。そもそも自由に行動して事実を報じるのがジャーナリストの本義なのに、それを制限するとは敬意に欠ける。スマホがダメなら外せない腕輪型の発信機でもつけるのか? それこそ「犯罪者扱いするのか」と猛批判を食らうだろう。「動くな」ということ自体が無理なのだ。
かつて山本五十六が近衛文麿に日米開戦の見込みを問われ「1年なら暴れてみせるが、2年3年なら確信は持てない。開戦回避の努力をしてほしい」と答えた。しかしその思いは戦争へと突き進む「空気」によって覆い隠されてしまった。やがて東条が総理になり全権を掌握すると、誰も言いたいことを言えない「空気」が強まった。現在の森、安倍、菅の3氏に対しても、同じ「空気」が流れているのを感じる。
「日本人は80年前と変わらない」と世界に思われたら、戦後の焼け跡からここまで積み上げてきたものの一切が再び灰燼(かいじん)に帰することが、政治家にはわからないのだろうか? 戦争中の「バンザイ突撃」は狂気の沙汰だったが、政府は今回の五輪で同じことをしようとしている。まったく受け入れがたい愚行だが、同時に「やはり日本人は変わっていないのか」という思いもつのる。
つまらない意地もプライドも、誰かさんへの忖度(そんたく)もいらない。必要なのは勇気ある撤退、名誉ある撤退だ。いまこそ日本人が生まれ変わったことを世界にアピールする絶好の機会なのである。
三枝成彰 作曲家
1942年、兵庫県生まれ。東京芸大大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「狂おしき真夏の一日」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、映画「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「優駿ORACIÓN」など。2020年、文化功労者顕彰を受ける。
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