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日本のコロナ対策「飲食店悪玉説」は本当に正しいのか どうする、どうなる「日本の医」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/289877
2021/06/01 日刊ゲンダイ
現在、こんな主張(「飲食店悪玉説」)をする専門家は世界にいない(C)日刊ゲンダイ
コロナ流行が続き、飲食店への規制が続いている。妥当だろうか。
政府が根拠とするのは、昨年11月に米スタンフォード大学の研究チームが英「ネイチャー」誌で発表した論文だ。もっとも危険だったのは飲食店、ついでスポーツジム、カフェ、ホテルだったと結論づけている。
しかしながら、この研究は第1波を対象としたものだ。現状は違う。昨年12月、ニューヨーク州での新規感染の4分の3は私的な集まりが原因と報告されているし、飲食店は1.4%と報告され、4月27日のコロナ感染症対策アドバイザリーボードに提出された資料では、4月のクラスター発生463件中、飲食関係は82例に過ぎなかった。
多くの専門家が飲食店への規制について疑念を抱いている。2月26日、オランダの研究者は欧州での介入を検証した論文を「BMC公衆衛生」誌に発表し、「イベント禁止と学校閉鎖は有効だが、飲食店の閉鎖の効果は限定的」と結論づけている。3月30日「ネイチャー」は、「なぜ、屋内空間はいまだにコロナのホットスポットになるのだろう」という論文を掲載し、飲食店を特別視していない。
ところが、日本政府や専門家は「飲食店悪玉説」に固執する。尾身茂コロナ感染症対策分科会会長は「歓楽街や飲食を介しての感染拡大が原因であって、家族内や院内の感染はその結果として起こっている(昨年12月23日コロナ対策分科会)」と主張している。
現在、こんな主張をする専門家は世界にはいない。それはコロナが濃厚接触だけでなく、空気感染でうつることが分かってきたからだ。英「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」は4月14日に「コロナ空気感染の再定義」、英「ランセット」は5月1日に「コロナが空気感染することを示す10の理由」という「論考」を掲載している。
空気感染の主体はエアロゾルだ。咳やくしゃみで発生する飛沫と違い、最大で3時間程度、感染性を維持しながら空中を浮遊する。バスや航空機の中で遠く席が離れた人が感染するのは空気感染が原因と考えられている。コロナが空気感染するなら、濃厚接触者を対象としたクラスター対策でなく、広く無症状者を検査しなければならない。
このことに対しても政府は抵抗する。尾身会長はエアロゾルの中で粒子が大きいものをマイクロ飛沫と呼び、「(エアロゾルと比べて)短距離で起こる感染」で「実は3密のところで起きて(中略)いわゆる飛沫が飛ぶということで起こることは間違いない(衆院厚労委員会昨年12月9日)」と証言している。私が調べた範囲で「マイクロ飛沫」というコロナ関連の英文論文は、わずかに2つだ。こんなレベルの議論が国策になっている先進国はない。
これが日本の実態だ。飲食店が本当に危険なのか、科学的根拠に基づき見直す必要がある。
上昌広 医療ガバナンス研究所 理事長
1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。
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