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※2021年5月27日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年5月27日 日刊ゲンダイ2面
【犠牲になるのは日本人だけ】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) May 27, 2021
宣言延長判断にも「五輪」「五輪」で もうウンザリ
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/xsDY6TkFpW
※文字起こし
政府が、東京都や大阪府など9都道府県に発令している新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言について、31日までの期限を延長する方向で調整に入った。28日にも、新型コロナの感染症対策本部を開き決定する方針だ。
延長期間は、23日に対象地域に追加された沖縄県の期限に合わせ、6月20日までとする案を軸に検討しているという。
宣言期間の延長判断はやむを得ないだろう。
新型コロナの新規感染者数の増加傾向は収まる気配が見えず、大阪などでは医療体制の逼迫状況が続き、病院に入れないまま自宅待機中に重症化して亡くなる陽性患者も出ている。北海道の病床使用率(24日時点)は57%で、国の指標で最も深刻な「ステージ4」だ。この状況で宣言解除に踏み切れば、あっという間にリバウンド(感染再拡大)を招きかねないため、東京など4都県は26日、政府に対して宣言延長を要請した。
19日に開かれた厚労省の専門家会合では、変異ウイルスへの置き換わりも全国規模で確認され、「新規感染者数の減少に以前よりも長い期間を要している」との見方も示された。とりわけ懸念されていたのが、感染力が従来株の2倍ともいわれるインド由来の変異株だ。今後、幅広い地域で感染が急拡大する恐れもあり、宣言延長の間に早急に対策を考えるべきなのは言うまでもない。
命よりも五輪の日本政府を世界が笑っている
政府の延長判断は当然として、問題はその動機だろう。加藤官房長官は会見で、「宣言を行う判断において東京五輪は全く関係ない」と、トボけていたが、どの大手メディアの報道を見ても、延長の理由に挙げられているのは「五輪」「五輪」だ。
<(6月20日は)7月23日に予定する五輪開幕の1カ月前にあたり、政府関係者は「五輪の準備を進めるためのぎりぎりのタイミング」と話す>
<宣言延長により、できる限り感染を抑え込んだうえで五輪につなげる狙いがある>
<官邸幹部は「ステージ2(感染者漸増)に近いところになれば観客を入れられる」とし、感染状況を改善させ、五輪の無観客開催を避ける思惑ものぞかせる>
いやはや、これじゃあ一体、何のために緊急事態宣言を発令し、延長するのか。国民の命ではなく、「五輪」というイベントを優先しただけの話ではないか。だが、ニュージーランド保健省で新型コロナ対策本部の顧問を務めるマイケル・ベーカー・オタゴ大教授が「(五輪は)大規模な海外渡航と集会を伴う」「現状で五輪を開催する根拠も正当性も存在しない」と切り捨てていた通り、今の日本の感染状況で五輪開催は現実的じゃないだろう。
実際、米国やオーストラリア、ニュージーランド、ベトナム、ラオスなどが新型コロナの感染状況を理由に、日本への渡航禁止を勧告している。このままだと、各国選手団も訪日に二の足を踏むのは間違いない。それなのに菅政権は相変わらず、五輪に固執し続けているから、ウンザリしてしまう。
福田赳夫元首相の秘書を務めた中原義正氏がこう言う。
「菅政権は五輪にすがるしか政権維持策はない。だから、何が何でも五輪なのだろう。だが、もはや一体何のために開催するのか。そもそもの目的は東北震災の復興のためではなかったのか。それが今や、新型コロナに人類が打ち勝った証し、などと言いだす始末で、すべてがいい加減と言わざるを得ない。世界各国も日本政府の姿勢を笑っているのではないか」
新型コロナという国家の危機に右往左往している菅政権 |
それにしても、菅首相は、年明けに緊急事態を宣言した際には「1カ月後に必ず事態を改善させる」と断言していたはずで、今回、延長となれば、何度目になるのか。この間、スガ政権が新型コロナを封じ込めるため、どんな対策を具体的に講じてきたのかといえば何もない。
ワクチン接種の遅れはもちろん、昨年から専門家らが求めていたPCR検査体制の拡充も改善されず、変異株の分析すらおぼつかない状況だ。やってきたことといえば、国民にひたすら自粛と我慢を強いるだけ。私権制限するばかりでロクな対策を打たず、それでいながら五輪日程を優先しているのだから、国民は呆れ、疲れ、怒りがたまる一方なのだ。
そもそも、五輪について、菅は「安全安心な大会にしたい」と繰り返しているが、「安全安心の大会」は本当に可能なのか。その科学的根拠はどこにあるのか。政府の基本的対処方針分科会メンバーの舘田一博・東邦大教授(感染症学)でさえ、「東京で緊急事態宣言が出されている状況の中で五輪ができるとは思わないし、やってはいけない。それはコンセンサスだ」と言い切っているのだ。
菅が本気で新型コロナ対策に取り組み、感染力の強い変異株に即応し、国民の命を守りたいと思うのであれば、やるべきことは山のようにあるはず。ところが、前のめりになっているのはコロナ対策よりも五輪だからクラクラしてしまう。
菅政権が五輪にこだわる理由は分かっている。開催できなければ、これまでの新型コロナ対策が失敗だったことを意味することになるからだ。9月末の自民党総裁任期や、10月21日の衆院議員の任期満了を控えている菅にとって、「逆風」の中で党内や国民の審判を仰ぐことになるわけで、それだけは何としても避けたい。そのために五輪開催に突き進んでいるのだろう。
姑息な菅政権の思惑を利用しているIOC
そして、そんな姑息な菅政権の思惑を巧みに利用し、これまた何が何でも五輪開催を主張しているのがIOC(国際オリンピック委員会)だ。バッハ会長は「東京大会を実現するために、我々はいくつかの犠牲を払わなければならない」などと発言し、その後、IOCは「(犠牲は)日本の人々に対してではない」と打ち消しに躍起になっていたが、誰がどう見ても五輪開催による感染拡大の危険性や、その後の経済的なリスクを背負うのは日本国民であり、その裏で、海外メディアに「カネ、カネ、カネ」と報じられたIOCやバッハ会長が大儲けするつもりなのだろう。
繰り返すが、五輪強行のしわ寄せを食らう犠牲者は、日本国民であり、中でも生活基盤の弱い生活困窮者たちだ。政府はそんな五輪の犠牲者になりかねない困窮世帯向けの策として、3カ月で最大30万円を支給する「新型コロナ生活困窮者自立支援金」(仮称)を打ち出したが、数千億円、数兆円のカネを投じた五輪と比べて、目をこすりたくなるような雀の涙のような金額ではないか。
結局、国内の感染者数の化粧に躍起になり、国民生活そっちのけで五輪に固執する菅を見ていて分かることは、政治家としての資質が決定的に欠けていることだ。恫喝とパワハラ人事で首相の座に上り詰めたものの、人望も能力も乏しいから、新型コロナという国家の危機に際して「裸の王様」状態に陥り右往左往しているのだ。政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。
「新型コロナの感染は、ひ弱な菅政権の本質を露呈させたと言っていいでしょう。つまり、国難に対して絶対に解決しようという力強さも、国民に対する発信力もない。それが右肩下がりの支持率に表れている。もはや政権浮揚策は五輪しかないわけですが、本来であれば日本の首相として、IOCに対して毅然とした態度で臨むべきでしょう。それもなく、ダラダラと緊急事態宣言を続け、世論の反対を押し切って五輪に突き進む姿には呆れてしまいます」
頭の中は政権維持という保身だけで、世界のことなどみじんも考えない。その身勝手な言動に、国民は絶望的な思いと怒りを感じ、辟易しているのは間違いない。
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