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※AERA 2021年5月24日号 紙面クリック拡大
5月末宣言解除で「五輪は5波の最中」も 都医師会長が指摘する「開催は絶望的」の可能性
https://dot.asahi.com/aera/2021051800009.html
2021.5.19 08:00 AERA 2021年5月24日号
尾崎治夫(おざき・はるお)/1951年、東京都生まれ。順天堂大学卒、医学博士。東京都医師会副会長を経て、2015年から現職。東京都東久留米市で「おざき内科循環器科クリニック」を開業 (c)朝日新聞
AERA 2021年5月24日号より
緊急事態宣言が発出されても、全国的な感染の拡大に歯止めがかかっていない。いま国内で何が起きていて、今後どうなるのか。AERA 2021年5月24日号で、東京都医師会の尾崎治夫会長に聞いた。
* * *
――緊急事態宣言の対象が9都道府県に広がり、期間も5月末まで延長された。まん延防止等重点措置対象の自治体も増えている。第4波が収まる気配は見えない。
緊急事態宣言の目的は、人の流れを抑え、人と人との接触を減らし、感染の拡大を防ぐことです。今回の宣言発出による人流抑制効果がなかったとは考えていません。
東京都医学総合研究所がNTTドコモの提供するデータを使って主要繁華街への人出を調べた「滞留人口モニタリング」によると、4月25日に3回目の緊急事態宣言が発出された後、都内の繁華街にいる人口は宣言前に比べて夜間に51%、昼間は40%減少しました。自宅から3〜5キロ圏内で生活している都民も6〜7割いて、それぐらいの人がステイホーム生活を送っていると推察できました。都内では人と人の接触が3〜4割は減ったと考えられます。
1人の感染者から平均何人に感染を広げるかという「実効再生産数」は、宣言発出前には1.25近くまで上がっていましたが、従来株であれば、これだけ人流が減れば、0.7程度には下がったはずです。しかし、実際は、感染力の高い変異株が増え、1.0をわずかに下回る程度にまでしか下がっていません。1.0を下回れば感染者が爆発的に増えることはありませんが、期待したほどは下がりませんでした。いま、私たちは、感染者数を減少傾向にし、流行の山を下げる、ピークアウトができるかどうかの分かれ目にいると考えています。
一方、ゴールデンウィーク後、北海道を含め、観光地のある自治体で感染増が報告されました。感染増後に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を出す、といった目先の状況だけを見て限定的に対策を取るのでは、もはや対処しきれない状態といえます。全国的に網をかけないと、感染は全国に広がっていくでしょう。
■制御「失敗」の繰り返し
――緊急事態宣言は延長されたが、イベントや舞台の有観客開催など、緩和された対策もある。
場当たり的な対策を出しては、少しでも新規感染者数が減る傾向が見えると、すぐに経済を回すといって対策を緩める。何を焦っているのかわかりませんが、結局、日本はこの1年、その繰り返しで、感染制御に失敗し続けてきました。
欧米がロックダウンを行った際は、日本の緊急事態宣言とは比較にならないほど厳しく人の動きや経済活動を制限しました。けれども、経済的には破綻していません。そうした現実に目を向けた上で対策を取るべきです。
――緊急事態宣言自体の効果が薄れる背景には、国民の自粛疲れも指摘されている。
これは、政府の国民へのメッセージが明確ではないからでしょう。約100年前の「スペイン風邪(インフルエンザ)」は収束に約3年かかりました。現代は当時よりも医療が発展し、ワクチンも開発されましたが、一方で、グローバル化による人の流れは当時とは比べものになりません。ですから、新型コロナウイルスの収束にも、最低でも2年はかかるだろうというのが世界の常識です。
ところが、新型コロナウイルスとの闘いは長期戦であるということを、日本政府は一度もきちんと国民に説明していません。政府としてどのように対応していくのかの長期的ビジョンも示していません。そうしたメッセージやビジョンがあれば、国民も「まだ1年しか経過していないからあと1年ぐらいは続く」と理解して、行動できます。メッセージもビジョンも示されないまま、場当たり的な対応をしていたのでは、国民がコロナ対策に疲れてしまうのも当然です。
――政府が五輪開催を前提にしているために、「長期戦」とは言えなかったのではないだろう。
「長期戦」=「五輪開催はできない」ということではないはずです。根拠も示さずに「開催します」と繰り返すより、むしろ、「五輪開催のために、2カ月間は徹底的に厳しい対策をとります」と宣言した上で、厳しい措置を全国的にとれば、国民も納得して協力すると思いますよ。
■「絶望的」になる可能性
――緊急事態宣言の延長で、「安心安全な」五輪開催は現実的になるのだろうか。
これまでの下げ幅でしか減らないとすれば、緊急事態宣言の続く5月末までには、都内の1日当たりの新規感染者数はせいぜい500人程度までしか下がらないのではないかと思います。そこで宣言を解除すれば、従来株より1.5倍程度感染力の強い変異株がまん延している中で、1カ月もたたずに感染者増が始まるでしょう。そうなれば、五輪開幕直前に大流行になり、五輪開催は絶望的になる可能性があります。
第5波が起これば、首相が7月末までに終えると宣言している、高齢者へのワクチン接種にも影響してくると思います。感染拡大の最中に大人数が一堂に集まる集団接種会場に行くのは、高齢者にとってむしろ危険です。
このままの状況であれば、5月末では宣言を解除しない賢明な政府であってほしいと思います。
五輪開催の是非については、5月末の感染状況と、それを踏まえた上で政府が緊急事態宣言などの措置についてどのように判断するのかを見た上で、東京都医師会長としての立場を表明したいと考えています。
――第4波では関西で、病院で治療を受けられずに亡くなる人が出ている。海外に比べて感染者の実数は少ないのに、緊急事態宣言を出さざるを得ない状況になる一因として、医療の脆弱性が指摘されている。病床数は少なくないはずなのに、なぜか。
日本の皆保険制度は、全国民が「誰でも・どこでも・いつでも受診できる」というフリーアクセスがメリットです。その制度を支えてきたのは、全体の8割を占める民間病院です。そして、民間病院は中小規模が多いのです。
病院数が多ければ、統計的には人口当たりの病床数や医療従事者の数が多く見えます。しかし、新型コロナウイルス感染症では1人の患者の診療に、大勢の医療従事者が必要です。コロナ患者を受け入れられる大規模な病院は、国公立も含めてそれほど多くないのです。
■医療崩壊は防げる
こうした事態に対応できるよう、国民が病院の集約化を望むなら、それは一つの選択肢でしょう。しかし、医療へのフリーアクセスはなくなります。医療体制の変更には議論も時間も必要ですから、新型コロナウイルス対応は、今ある医療資源でやるしかありません。
入院できず、ホテルや自宅で待機せざるを得ない。いま、関西の医療現場が直面している状況は、東京がすでに第3波で経験したことです。かつての教訓から、都内では、自宅療養中の感染者が、24時間、医師と連絡を取れる仕組みを整えました。また、病床が足りなくなる一因は、急性期を脱して感染させる危険性はなくなっても、体調が回復しないために入院している患者がいるからです。このため、回復期の患者が転院できるよう、中小の民間病院200カ所に約1千床を確保しました。
1日に数千人規模の新規感染者が出る感染爆発状態になれば、医療の限界はきます。けれども、今の医療資源でも感染爆発が起きなければ、急性期と慢性期の病院の連携などを工夫することで地域での医療崩壊を防ぐことはできるはずです。
(構成/科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
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