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広島にできて全国で進まぬ謎。PCR検査すら増やせない菅政権の無能
https://www.mag2.com/p/news/495703
2021.04.29 河合 薫『デキる男は尻がイイ−河合薫の『社会の窓』』 まぐまぐニュース
先日掲載の「ワクチン接種もPCR検査も後進国の日本。政府の無策に気づかぬ国民」では、自身がPCR検査を受けてみて判った日本の検査体制の脆弱性を指摘した、健康社会学者の河合薫さん。河合さんは今回、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ−河合薫の『社会の窓』』で、県内の居住者と就業者を対象に無料PCR検査の実施に踏み切った広島県知事の英断を高く評価するとともに、感染対策の有効な手段になるPCR検査の規模を広げようとしない菅政権と、そのような国の姿勢を問わずにいるメディアを批判しています。
【関連】ワクチン接種もPCR検査も後進国の日本。政府の無策に気づかぬ国民
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
かかる費用と血税と
ここのところ立て続けに、エビデンスなきコロナ対策の不毛さについて書いてきましたが、「あ〜、日本にもまだちゃんとした“リーダー”がいた!」と小躍りした記事を見つけたので、紹介します(リーダーの無策に関する記事は、メルマガVol.218及び、日経ビジネスのこちらのコラムをご覧ください。
● 信頼されるリーダーと「変異株」を言い訳にする人々
腑に落ちる感染対策を行っているのは、広島県です。日経新聞によると、広島県では4月から「誰もが無料でPCR検査を受けられる“広島方式”」をスタートしたことがわかりました。
東京大学の合原一幸特別教授と中国・上海師範大学の応用数学者らの研究グループが、社会の複雑な現象を数式に落とし込み、最適解を探る「数理工学の手法」を用いて、この1年で蓄積されたデータを分析。そこで得られた結果をもとに、「感染症モデル」を構築したところ、感染拡大に影響を及ぼす3つのパラメーターが確認されました。
「感染率」「感染に関与する人口」「新規感染者の見逃し率」の3点です。
1つ目の「感染率」を押さえるには、コロナ感染当初から指摘されている「3密」の回避、手洗いの徹底、さらには、スーパーコンピューター富岳で実証されたマスクの着用が有効です。
2つ目の「感染に関与する人口」とは「外出する人の多さ」です。不要不急の外出をやめることや、リモート勤務の推進が感染対策として考えられます。
そして、最後の「新規感染者の見逃し率」とは、無症状者など感染しているのに「コロナ」とは思わず、普段どおりの生活をしている人たちのこと。
「見逃し率はPCR検査を徹底し、隔離すれば、かなり押さえられる。結果的に実効再生産数を効果的に押さえることも可能」(by 研究者グループ)
つまり、すでに多くのエビデンスから明かされているように、「無症状の感染者」を見つけ、「発症2日前から他人に感染させる」という事態を防ぐことの重要性が改めて確認されたのです。
この結果を知った広島県の湯崎知事は、「よし!だったらPCR検査を徹底しよう!(←おそらくこんな感じで言ったはず)」と、県内5カ所に設置したPCRセンターで、県内の居住者と就業者であれば、何回でも無料で検査できる体制を整備。さらに、無症状者が多い20代と30代には、薬局で検査キットが受け取れる仕組みも作りました。
広島県によれば、時短要請などにかかる費用は約1,500億円。一方、検査コストは一人あたり2,000円。「PCR検査費用は桁違いに小さいのに、高い効果が期待される。感染を未然に防げば社会・経済へのダメージも小さくてすむ」(by 県健康福祉局)
つまり、広島方式とは、「クラスターを潰す」のではなく、「クラスターを出さない」方向に舵を切った対策であり、費用対効果も高い政策なのです。
このようにPCR検査に予算を投じることが、感染対策の有効な手段になるのならば「全国でやりましょう!」と国が立ち上がってもいいはずです。
しかしながら、残念なことにその動きはありません。「大型のワクチン接種会場」を作ると報じれば、国民は安心するのではないか。オリンピックへの気運も高まのではないか?「ワクチンが届きさえすれば、コロナは消える」とでも思っているかのようなコメントばかりが聞こえてきます。
先週、掲載した世界のPCR検査率を再掲しますが、このように日本の検査数は圧倒的に少ないのです。
・香港 約74%
・米国(加州オレンジ郡の場合) 約67%
・グアム 約63%
・豪州 約45%
・イタリア 約45%
・スイス 約44%
・オーストリア 約44%
・マレーシア 約11%
・フィリピン 約6.5%
・グアテマラ 約3.6%
…日本はたったの4.4%です。
おまけに、昨年末、英医療調査会社エアフィニティーが公表した、各国の「集団免疫獲得時期の予測」で、日本は先進国の中でビリ。主要先進国がいずれも21年内だったのに対し、日本は22年4月と圧倒的に遅い。
おまけに、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンで血栓が生じる事例が報告されたことで、欧米では集団免疫が獲得されるスケジュールの修正が行われ、欧州連合(EU)では当初の9月30日から12月8日に、米国では7月22日から9月17日にずれ込むと予想されている。
この状況を鑑みれば、22年4月より遅れることは避けられません。
頼むからエビデンスに基づく、有効な対策を強化してほしい。何度も書いているとおり、「無症状者を見つけ、隔離する」という対策を徹底してほしい。インドの変異株、カリフォリニアの変異株は、日本人に大きな脅威となる可能性が高いと指摘する研究者もいます。
メディアは、政府が発表した内容ばかりを報じていますが、今こそメディアが「科学的根拠に基づき、対策への疑問」を明確にし、東京や大阪、そして国のリーダーに「なぜ、広島ができるのに、全国でしないのか?なぜ、東京や大阪ではできないのか?」とつめる役割に徹するべきです。
みなさんのご意見、お聞かせください。
image by: Shutterstock.com
河合 薫 この著者の記事一覧
米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。
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