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変な国!政府は野垂れ死ぬヤツは仕方ないと思っているのか 井筒和幸の「怒怒哀楽」劇場
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/288652
2021/05/01 日刊ゲンダイ
ただひたすら、我々は感染が収まるまで、声も荒らげず下を向いて待たされているだけだ。何のために? 東京五輪のためにだろう。
そして、政府も東京都も、コロナが収まるまで「不要不急」でお願いしますと、そればかり言って口先で謝っているだけだ。給付金を配りますとは絶対に言わない。東京都もどっさり貯金があるんじゃないのか?
酒場で酒が出ないのならと、都内の若者たちはあちこちの駅前広場で世間などお構いなしに、酒を持ち寄って「駅飲み」をしていた。自棄飲みの顔だった。都の呼びかけで駅前のネオンが消されても、暗がりだろうがどこだろうが宴会だ。「自棄飲み」に罰金を科せられたわけじゃないから、まあ飲んでやれ、だ。これで感染が収まるならオメデタイ話だ。
とにかく、ひたすら、政府は東京五輪を開きたいだけだ。だから、大臣どもも「すみませんが自粛を」と謝ってばかりいる。「開きたいのですが、皆さんにお金は配れません」と会見のたびに謝っている。「すみません」はコロナ対策ではない。ただの前置きの挨拶だ。五輪を止めるのが対策じゃないのか。国民の大方が、もうどうでもいいわと思っているのにだ。変な国だ。
今、ほんとに若者たちだけでなく、庶民はお金がなくて苦しんでいる。ウーバーイーツやテークアウトのマクドナルドがどれだけ繁盛しようと庶民にはお金がないのだ。スガ政府は「最後は生活保護があります」と酷いことしか言わない。政府は野垂れ死ぬヤツは仕方ないと思っているのか。
野垂れ死にしないようにやるしかないかという放浪者の映画「ノマドランド」がアカデミー賞を取っていた。アメリカの田舎は広大だし、アマゾン配送センターで臨時雇いの仕事もあればやるし、ライトバン一台あればどこにも動けるし、誰もいない荒野なら尻をまくって小便も糞もできるし、谷川で水浴びもできる。60歳で夫と死に別れてひとりになったオバちゃんが居直って放浪生活をし続ける。アメリカに実在するノマド(遊牧民の意味)たちが素人のまま出演してるので、リアルはリアルだが何とも寂しい限りの作品だ。エンタメではない。役者が無名ならばドキュメンタリーに間違うかもだ。リーマン・ショックで仕事も家もなくした放浪人はこんなもんですと。楽しいことも怖いことも何も起きないドラマを拒否した映画なので、エヴァンゲリオンなんかに熱を上げてる客にはお呼びじゃないか。コロナ地獄になる前に撮られたので誰もマスクをしていない。しかも、ノマドたちが金に困ってるようにも見えないのがピンとこなかった。
日本のノマドもあちこちにいる。でも、ドラマや映画に現れない。そんなモノを見る余裕はない。駅前の自棄飲み会に集まるので精いっぱいの寄る辺ない人ばかりなのだ。
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井筒和幸 映画監督
1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。
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