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日米が結束し“中国の脅威”との軍事的な対決路線を煽る不毛 永田町の裏を読む
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/288237
2021/04/22 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
盲目的追従は百害あって一利なし(菅首相とバイデン米大統領)/(C)共同通信社
菅義偉首相が訪米し、バイデン大統領と「自由で開かれたインド太平洋の実現」で一致した。これは誰が見ても中国に対する軍事的包囲網の企てで、実体的には米日豪印の4本柱に加えてASEANや欧州主要国まで味方にし、「民主主義」大連合の力を結集して「専制主義」中国の野望を打ち砕こうというわけである。
その最大の焦点は台湾海峡問題で、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が3月の米議会証言で「6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性がある」と述べたように、バイデン政権はいざとなれば軍事介入をしてでも台湾の民主主義を守る覚悟を固めているようである。
そうなると、安保法制で米国に対する集団的自衛権の発動を部分解禁した日本は必然的に、何らかの形で自衛隊を台湾の戦場に送らざるを得なくなる。菅はそこまで踏み込んで約束し、そのいわば見返りとして、尖閣に中国が手を出すようなことがあれば米軍が日米安保条約に基づいて日本に対する集団的自衛権を発動して助けてくれるよう要請したものとみられている。
さてしかし、中国との軍事対決は不可避なのかどうか。米軍部高官は「中国の台湾侵攻は近い」などと言っているが、そんなことはなくて、中国も台湾も現状維持を望んでいるというのが本当のところ。台湾と中国との経済的紐帯は深く、台湾の輸出の44%、対外投資の60%は中国向けで、100万の台湾人が上海を中心に中国本土に駐在している。その関係をブチ壊さなければならない理由は、台湾側にはもちろん、中国側にも全くない。
では南シナ海はどうなのか。この核心は、海南島を本拠地とする中国の対米攻撃可能な戦略核ミサイル搭載の原潜の行動自由の確保であり、これは根本的には、米中間で戦略核ミサイル削減交渉が始まらなければ解決はない。
さらに尖閣はどうかといえば、これは中国が領有権主張をデモンストレーションするために海警局の船を一定の間隔で出してくるだけで、何ら大騒ぎするようなことではない。
性格が異なり、したがって解決方法も異なるはずの複数の問題を何もかもゴタ混ぜにして「中国が脅威だ」と騒ぎ立て、それに対して日米が結束して軍事力で立ち向かうかの対決路線を煽るのは百害あって一利もない。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
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