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日本政府の祈祷スタイル
https://www.chosyu-journal.jp/column/20571
2021年3月23日 コラム狙撃兵 長周新聞
21日に一都三県の緊急事態宣言も解除となり、「新たな闘い」などといわれているが、新たも何も、これまで日本政府としては新型コロナウイルスと闘っていたのか? と素朴に思う。だって「やってます感」に彩られた欺瞞のかさぶたをすべて剥ぎ取ってみたら、万歳降参が基本スタンスではないか。第一波からこの方、為す術なく感染拡大を招いてしまったなかで、宣言→解除→感染拡大→宣言→解除とくり返してきて、飲食店に限らず国民としては随分と自粛を心がけ、出かける際にはマスクを着用し、催し物も控え、アルコール消毒を一日に何度もしてきたし、そのなかで商売が上がったりで生活苦に投げ込まれたり、みんなが辛抱して過ごしてきたはずだ。
ところが一方で、国家として責任を持たなければならない防疫はまるで機能せず、1年以上たつのにPCR検査すらまともに実施されず、医療機関が体制を強化されたわけでもない。ただ嵐が過ぎゆくのを待っているだけといっても過言ではないほど、何もしていないのである。ワクチン開発に全力をあげるでもなし、イベルメクチンやアビガンといったコロナに効くことがわかっている薬剤の供給を急ぐわけでもなし、結局のところ、1年以上もの間何をしていたというのだろうか。時間とカネ(GoToキャンペーンをはじめとした業界への利益供与)を浪費していただけというなら、とんでもない無責任であろう。
感染力の強い変異種までが日本列島に上陸しているなかで、恐らくこのままだと再び感染拡大を招いてしまい、宣言→解除→感染拡大→宣言→解除の無限ループをくり返すのが関の山だと思う。なぜか? 「宣言」なんて叫んだところで実質的には何もしていないし、そのうちオオカミ少年が「たいへんだ〜!」と叫べば叫ぶほど誰からも相手にされなくなるのと同じに思えるからだ。すべては個人の自己責任に委ねた「自粛のお願い」の域を出ないため、「緊急事態宣言」に耳慣れしてしまった人々にとっては、「あっ、またサイレン鳴らしてら」くらいにしか思わなくなるのも無理はないのである。
では、日本政府としては何をしているのかだが、恐らく終息を祈っているだけなのではないかと思う。コロナ禍の社会全体の混乱に対処し、どう医学的・疫学的見地から対処するかの具体的行動がともなわない以上、それは口を開けて祈っているだけ、願望しているだけといわれても仕方がないものがある。祈祷の歴史は原始宗教にもさかのぼるが、まだ科学が発達していない時代に理由のわからぬ災いに対して人々は祈りを捧げ、時には人柱まで立てて見えない何かにすがりつき、終息を願うほかなかった。それは、どうにかしたいけれど、自然科学への理解もなくどうにもならないという制約のなかで発生したものだった。いまやっていることといえば、飲食店を人柱にして終息を願望しているだけ−−のようにも見えるのである。
21世紀の時代に科学的に対処するのではなく、ただ祈っているだけという光景は、それが国家神道好きであろうがなんであろうが、怠け者の所業であろうと思う。科学や医学、疫学も発達し、コロナウイルス対策については各国の先進事例もあるなかで、封じ込めに本気になれば先手先手でいくらでもやることはあるはずだ。未知なるウイルスとはいえ、やるべきことは明快で、検査、治療、隔離を徹底して、集団免疫ができるまで極力犠牲者を抑えながら凌いでいくほかないのである。
「緊急事態宣言の解除」と大仰しく扱っているものの、やっていることは「たいへんだ〜!」のサイレンを鳴らしたり止めたりしているだけである。このような悪ふざけしかできない無能政府ではなく、緊急事態に立ち向かえる有能な政府に統治を委ねたいものだ。今年の衆院選はそういう意味で「オマエ(自民党)ら、どけっ!」といって、なりかわる勢力が登場したっておかしくないと思う。コロナ禍の生殺し状態は既に耐えがたい領域に達しており、政府とは何をすべきかが問われなければならない。
吉田充春
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