ドイツ・オーストリア(1859年まで) - クラシック音楽 一口感想メモ https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2%281859%E5%B9%B4%E3%81%BE%E3%81%A7%29 ドイツ・オーストリア。オランダもここに含む。
ヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンク(Jan Pieterszoon Sweelinck, 1562 - 1621) ドイツというよりオランダの鍵盤楽器作曲家。古い時代の異世界音楽の良さがあり、しかも鍵盤楽器の音楽らしい楽しみ方もできる。
ミヒャエル・プレトリウス(Michael Praetorius、1571 - 1621) ドイツ初の大作曲家らしい。何曲か聴いてみたが、ごく普通の曲という印象しかなく大作曲家のオーラは感じなかった。 ハインリヒ・シュッツ(Heinrich Schütz, 1585 - 1672) ドイツ3Sの一人。バッハ以前の最大の作曲家。宗教音楽は、バッハに似た峻厳さを前期バロックらしいシンプルで平易な音楽で表現しており素晴らしい。バッハの音楽は複雑すぎるという同時代の評価を実感できる。 白鳥の歌 Schwanengesang 3.0点 ドイツ人敬虔さとバロック中期の音楽の美しさが見事な完成形になっており素晴らしい。 ヨハン・ヘルマン・シャイン(Johann Hermann Schein, 1586 - 1630) ドイツ3Sの一人。 ザムエル・シャイト(Samuel Scheidt, 1587 - 1653) ドイツ3Sの一人。 ヨハン・ヤーコプ・フローベルガー(Johann Jakob Froberger, 1616 - 1667) ドイツの鍵盤楽器作曲家。チェンバロ用の組曲を聴いてみたが、音楽が地味でシンプルだし、特に特徴的な味のよさがあるわけでもなく、心の琴線に触れなかった。 ヨハン・パッヘルベル(Johann Pachelbel, 1653 - 1706) この時代の大作曲家の一人であるが、現代はもっぱら「カノン」の作曲家として有名。カノン以外の曲も聴いたことはあるが記憶に残ってない。 カノン 6.0点 「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」の第1曲なのだそうだ。クラシックの器楽曲の中でも最古にして最大の人気曲のひとつだろう。何百回聴いても魅力は尽きない。 ヨハン・カスパール・ケルル(Johann Caspar [von] Kerll, 1627 - 1693 チェンバロ曲やオルガン曲を聴いてみたが、現代に通用するような特別に優れている何かは特に感じなかった。 ディートリヒ・ブクステフーデ(Dieterich Buxtehude, 1637頃-1707) バッハのオルガン音楽における師匠の一人。オルガン曲の柔軟で柔らかい音使いと発想は素晴らしい。自分はあまりに重くて堅すぎるバッハのオルガン曲より好きだ。 ゲオルク・フィリップ・テレマン(Georg Philipp Telemann, 1681 - 1767) 史上最高の多作家にして当時のナンバーワン人気作曲家。しかし、現代の耳にとっては彼の音楽は、耳に優しく快いけれども薄味であり、そよ風のようだ。聴いた後に何も残らない。そのような軽さを求める気分の時ならばよいが、普段は自分には物足りない音楽だ。 ターフェルムジーク 3.0点 沢山のジャンルを組み合わせた音楽の百科辞典のような構成。テレマンらしい魅力を感じるための入門には良いが、長いので全編を聴くのはかなり大変。 パリ四重奏 3.0点 テレマンにしては力を入れて書いた作品の感がある。 水上の音楽 3.0点 ヘンデルとは違う、序曲の形式の水上の音楽。なかなか楽しいオーケストラ音楽である。 ヴィオラ協奏曲 蛙の協奏曲 3.0点 本当に蛙の合唱みたいで笑ってしまう。 無伴奏ヴァイオリンファンタジー 3.0点 バッハ無伴奏のガチ本気の音楽とはだいぶ違い気楽に聴ける。テクニック的にもシンプルなように聞こえるが、それなりに雰囲気と味がある曲は多いので案外楽しい。 ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(Wilhelm Friedemann Bach, 1710 - 1784) 大バッハの長男。かなり才能ある音楽家であり、聴いてみる価値がある。評判通りバッハの息子たちの中では最高の才能を持っている人だと思った。他の息子たちに感じる才能不足をこの人にはあまり感じない。 シンフォニアニ単調F65 4.0点 シンフォニア二長調F64 3.0点 ハープシコードソナタ 3.0点 カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ (Carl Philipp Emanuel Bach, 1714 - 1788) バッハの息子の一人。私はとても苦手な作曲家。多感様式というらしいのだが、フレーズの音の飛び方が不自然で違和感を感じる瞬間が多々あり、不快に感じてしまう。 ヨハン・ヴェンツェル・シュターミッツ(Johann Wenzel Stamitz 1717 - 1757) マンハイム楽派の創設者。まだ未聴。モーツァルトへの影響の観点で名前が出てくる。 クリスティアン・カンナビヒ(Christian Cannabich, 1731 - 1798) カール・シュターミッツ(Carl Stamitz, 1745 - 1801) ヨハンの息子。マンハイム楽派。まだ未聴。やはりモーツァルトへの影響の観点で名前が出てくる。 ヨハン・クリスティアン・バッハ(Johann Christian Bach, 1735 - 1782) バッハの末子。流麗さなど、モーツァルトに大きな影響を与えた。古典派とバロックの過渡期を感じるシンプルさではあるが、それなりにいい曲もある。しかし、基本的にぎこちなさなど違和感を感じてしまう。モーツァルトには、まだ10代のうちに実力で追い抜かれたと感じる。 レオポルト・アントニーン・コジェルフ(Leopold Antonín Koželuh, 1747 - 1818) ヨハン・ショーベルト(Johann Schobert、? - 1767) ミヒャエル・ハイドン(Johann Michael Haydn, 1737 - 1806) ハイドンの弟。レクイエムで有名。 レクイエム 3.5点 モーツァルトがレクイエム作曲で大いに参考にした作品なのは聴いてすぐに納得。力感に溢れていて悲痛の劇的な表現が優れており、スケールが大きく感動的。音楽的な内容の充実は大作曲家レベル。古典派の宗教音楽の傑作。 カール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフ(Carl(Karl) Ditters Baron von Dittersdorf, 1739 - 1799) アントニオ・サリエリ(Antonio Salieri、1750 - 1825) 映画「アマデウス」で有名になった作曲家。当時の大作曲家であり、弟子に有名人も多い。しかし彼の書いた音楽は物足りない。 交響曲ニ長調 2.0点 爽やかで明るく活発な雰囲気は楽しいので、一度聴いてみるのは悪くない。音楽に詳しくない当時の素人には受けただろうと想像できる。現代はみんな耳が肥えているので、モーツァルトと比較してあまりに単純素朴で裏表が無く、複雑な技術が使われていない音楽は物足りない。まさに映画アマデウスで馬鹿にされているままの音楽だった。 アントン・エーベルル(Anton Eberl, 1765 ‐ 1807) アントニーン・レイハ(Antonín Rejcha, 1770 - 1836)(アントン・ライヒャ) ヨハン・ネポムク・フンメル(Johan Nepomuk Hummel, 1778 - 1837) 鍵盤楽器に関しては、ベートーヴェンのライバルの作曲家。 協奏曲(ピアノとオーケストラ) ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 Op.44(Op.36)*c1811 ピアノ協奏曲 第2番 イ短調 Op.85*c1821(1816) ピアノ協奏曲 第3番 ロ短調 Op.89*c1821(1819) ピアノ協奏曲 第4番 ホ長調『告別』Op.110*1826(c1814年) ピアノ協奏曲 第5番 変イ長調Op.113*1830(1825) 室内楽 ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調Op.3a*1792 ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調Op.12*c1803 ピアノ三重奏曲 第3番 ヘ長調Op.22*c1807(1799) ピアノ三重奏曲 第4番 ト長調Op.35*c1811(1808) ピアノ三重奏曲 第5番 ト長調Op.65*c1814-15 ピアノ三重奏曲 第6番 ホ長調Op.83*1819 ピアノ三重奏曲 第7番 変ホ長調Op.93*c1822 ピアノ三重奏曲 第8番 変ホ長調Op.96*c1822 ルイ・シュポーア(Louis Spohr, 1784 - 1859) フェルディナント・リース(Ferdinand Ries, 1784 - 1838) ベートーヴェンの弟子。マイナー交響曲作曲家の中では有名。 カール・ツェルニー(Carl Czerny , 1791‐1857) 教則本の作曲家として有名なベートーヴェンの弟子。ピアノソナタには中々いい曲もある。 交響曲5番 2点 雰囲気はいいのだがメロディー不足。いかにもマイナーどまりの曲。 カール・マリア・フォン・ヴェーバー(Carl Maria Friedrich Ernst von Weber, 1786 - 1826) 「魔弾の射手」のオペラで有名だが、器楽曲もそれなりに優秀である。 交響曲1番 3.5点 モーツァルトの一部の交響曲ような、オペラの序曲風の元気のよい音楽。シンプルな音楽なのだが、モーツァルトやハイドン以上に快活で爽やかであり、今にも目の前で幕が開きそうなほどに舞台音楽的で聴いていて気持ちいい。しかし、飽きる感じは無く、コミカルな人間ドラマ的な愉悦を感じられる。個人的にはとても新鮮に感じられた。しかもそれが、4つの楽章全てで感じられるのがよい。 交響曲2番 3.0点 1番と同時期の作品であり、よく似た同じような作品なのだが、なぜか新鮮さを感じない。1番と違い作曲者にとって初物でないからなのかわからないが、不思議だ。3楽章は短すぎて、つまらなくはないのだが、バランスが悪い。ある意味で、音楽の感動は非常に微妙なよく分からない何かに大きく左右されるものという教訓を得られた。本当に、1番と同じくらい爽やかで舞台音楽的な楽しさはあるのだけれど。 ホルン小協奏曲 3.0点 聴いているだけで、独奏が技術的に恐ろしく難しそうに聴こえる。本当に大作曲家がホルン用に書いたのか疑いたくなるレベル。メロディーなどの点ではそれほど優れた曲という印象はない。とはいえ、歌劇のような自由度の高さと活動的で伸び伸びした音の躍動感や明朗さは、個性が生かされていて悪い印象はない。協奏曲としてなかなかユニークな作品と思う。 フランツ・パウル・ラハナー(Franz Paul Lachner, 1803 - 1890) 交響曲5番 1.5点 8番よりも若さを感じて聴きやすいが、いい作曲家とは思えない。1時間もあるので1楽章の途中で挫折。
交響曲8番 1.5点 1楽章は序奏長いwシューベルトっぽいけどいい曲じゃない。2楽章は工夫と美しさが若干みられる。3楽章またシューベルトっぽい?4楽章は少しロマン派的ないい瞬間はあるけど凡庸。全体に長大さに見合う内容が無い凡作。 イグナーツ・ラハナー(Ignaz Lachner, 1807-1895) ピアノ三重曲1番 2.5点 チェロでなくビオラとヴァイオリンとピアノの編成。 低音は少ないが軽やかな響きでよいし、天才を感じるほどではないが割と楽しく聴ける。 1851年の曲だがベートーヴェンと同時代に聴こえる。 ヨハン・シュトラウス1世(Johann Strauß I(Vater)、1804 - 1849) ラデツキー行進曲 5点 1世は息子より有名曲が少ないとはいえ、このような楽しい有名曲を1曲残しただけで十分凄い。
カール・ライネッケ(Carl Heinrich Carsten Reinecke, 1824 - 1910) 交響曲 交響曲第1番 イ長調 Op.79 (1858年) 3.5点 1楽章は平凡なよくあるロマン派ドイツ交響曲の域を出ていない。2楽章はしなやかな感傷的な叙情で感情のうねりを重ねて徐々に大波を作っていくような音楽でかなりよい。慈愛の音楽はベートーヴェンの傑作緩徐楽章の出来に迫っており、深く音楽の感動的世界に入り込める。3楽章はベートーヴェンを引き継いだ正統派であり悪くない。最後の終わり方は気に入った。4楽章は軽妙で控え目であり、もっと愉しませて欲しいという欲求不満が残った。全体に2楽章の素晴らしさ以外は、あともう一息の感があるものの、なかなかの作品である。
交響曲第2番 ハ短調 Op.134 (1874年) 3.5点 柔らかさと詩情に裏打ちされた骨組みのきちんとした音楽であり、シューマンやブラームスのように癖があってゴテゴテしておらず、スマートでベートーヴェンを受け継ぐ正統派のドイツのロマン派交響曲という点で存在価値が高いと思う。メンデルスゾーンのような標題音楽的に感じるところもない。成熟したよい曲であるが、旋律などやはり少し地味である。そして1番の2楽章のような強い魅力のある楽章がない。地味に感じるのは精神の健常なバランス感覚を保っている正常性からのような気がする。稠密に念入りに構築された音楽は何度も聴くと良さがよく見えてくる。どの場面もよく考えて効果をきちんと計算して書かれている。魂の破天荒さはない。 交響曲第3番 ト短調 Op.227 (1895年) 3.5点 どの楽章もなかなか立派で充実しており、感心して聴ける。しかし、どこかに才能の輝きが足らない地味さがある。その中で最終楽章の高揚感はなかなか心が躍る。ドイツ交響曲らしい音の作りによる盛り上がりは、畳み掛けて新しいパッセージを次々に産む音楽の奔流を作り出せている。正統派で成熟した交響曲として、骨格の立派さと丁寧に書かれた充実を楽しむ曲としてはよく出来ている。一つ一つの場面がしっかりと描かれている。ただ、隔絶した天才の輝きが足らないだけである。 協奏曲 ハープ協奏曲 ホ短調 Op.182 (1884年) ピアノ協奏曲第1番 嬰ヘ短調 Op.72 (1860年) 3.3点 ショパンやシューマンといかにも同時代の協奏曲であり、まだ形式感がしっかりとある。かなりお上品な曲と思う。その柔らかくて上品なところと、形式的な安心感を楽しむ曲と思う。なかなか楽しめるのだが、やはりこの後の歴史により切り開かれた音楽の可能性の世界と比べると、いかにも世界が狭い。しかしベートーヴェンを少しロマン派にしたような安心感に包まれながら協奏曲を聴く楽しみは、これがかなりおつなものであり、思いの外幸せな時間を過ごせたのは発見であった。 ピアノ協奏曲第2番 ホ短調 Op.120 (1872年) 3.3点 しなやかで柔らかくて優美。刺々しいとか爆発的のようなものはない。悪魔的だったり激しい熱情もない。壮大さもない。しかし、とても瑞々しい感情の表現をするピアノとそれをサポートするオケの素敵さには、なかなか心に染み渡るものがある。メロディーなどに決定的な名作性はないものの、メジャーどころの押しの強さは無いながらもなかなかいい世界を味わえる。 ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.144 (1877年) ピアノ協奏曲第4番 ロ短調 Op.254 (1901年) 3.0点 きちんと丁寧に書かれた正統派の曲である。20世紀の作品としてはかなり古臭い。巨匠的な品格の高さは楽しい。教科書的なお行儀の良さがあり独自の価値には乏しいものの、ちゃんとした曲が好きな人には聴く価値が充分にあるとお勧めできる。 チェロ協奏曲 ニ短調 Op.82 (1864年) ヴァイオリン協奏曲 ト短調 Op.141 (1876年) 3.3点 1楽章はいまいち志が感じられない、職人的に作られているだけで訴えかけるものが足りない曲である。2楽章はかなりの美旋律を切々と歌い続ける感動的な楽章。名曲と呼ぶに足る作品である。ブラームスの協奏曲の2楽章を上回るかもしれない。3楽章はおおいなるエンディングに向けて爆発しそうな力を貯めたまま延々とエネルギーを解放しないというテンションをキープし続ける曲。このようなキープの仕方は特殊だと思う。爆発しなすぎて欲求不満がたまってしまう。この曲は2楽章だけがずば抜けて素晴らしいといえよう。 フルート協奏曲 ニ長調 Op.283 (1908年) 3.8点 貴重なフルート協奏曲。1楽章はライネッケによくある形式の枠の制約が強すぎて心に訴えるものの少ない曲。この楽章は我慢が必要。一転して2楽章はロマンの限りを尽くしており、切々と訴える憂愁のメロディーは最高に美しい。モーツァルトが書いたうちの最高級の緩徐楽章に勝るとも劣らない。3楽章もなかなか優雅で移ろうニュアンスの変化も常に美しい。力を貯めて爆発させないライネッケ流がフルート協奏曲の場合は非常にマッチしている。1楽章はいまいちだが2楽章と3楽章はとても優れていると思う。 室内楽曲、器楽曲 フルートソナタ ホ短調 「ウンディーネ」 Op.167(1881年) 弦楽三重奏曲 ハ短調 Op.249 左手のためのピアノソナタ 3.0点 かなり本格志向のソナタである。美しい旋律はなくてそれほど面白くはないが、ピアニスティックで効果的なパッセージを積み重ねてソナタを作っている。感動するほどではないが、きちんと本格的に書かれている左手のためのソナタとしてロマン派ソナタらしさをしっかりと持っている本作は重要な価値がありそうだ。ただ、低音が薄すぎる気はする。もう少し重さもバランスとしてほしかった。 ヨーゼフ・ヨアヒム・ラフ(Joseph Joachim Raff, 1822 - 1882) 交響曲 大交響曲 イ短調 WoO.18 (1854) 第1番 ニ長調 Op.96, "祖国に寄せる An das Vaterland" (1859-61) 2.8点 前半の楽章群は音の作りがシンプルすぎて、何を想っているのか伝わらないし、全然面白くない。習作レベルだろう。全然ダメかとおもったが、後半はワーグナー的もしくはブルックナー的な広がり感とドラマ性を持った享楽的な音楽になる。後半だけならばそれなりに聴いて愉しむことが出来る曲になる。全部で1時間以上の5楽章は実力と比較して無駄に頑張りすぎだろう。他では聴けない独自の天才性も弱いため、努力して書いたように聴こえてしまう。 第2番 ハ長調 Op.140 (1869) 3.5点 1番とは全く違う巨匠的な響きに満たされたベートーヴェン交響曲に似た交響曲らしい愉しみに満たされた音楽である。有名作曲家ほどの強烈な確立された個性の輝きこそ弱いものの、一流の音楽であることは一聴すれば分かる。堂々とした力強さと4つの楽章のバランスと音に込められた力感と音を豊かになり響かせる感じは、中期のベートーヴェンを彷彿とさせる。生命感の漲る感じがとにかく素敵だ。 -第3番 ヘ長調 Op.153 "森にて Im Walde" (1869) 3.3点 1楽章は曖昧な雰囲気であり好みが分かれるところであり、個人的にはあまり良くないと思った。後半はチャイコフスキーやドヴォルザークを彷彿とさせる躍動感の強い音楽であり面白い。2番とはかなり違う音楽であり、芸の広さを感じさせる。個人的には2番の方が好みだが、3番の後半の特に巨大な最終楽章のスリリングさはまさかスイスの作曲家で聴けると思わなかったものであり、なかなかゾクゾクするものだ。 -第4番 ト短調 Op.167 (1871) 3.3点 この曲は再びベートーヴェンのようなシンプルでロマン派のネチっこさを抑えた曲である。約30分と短く、冗長さがないのはよい。最終楽章では対位法を取り入れて素敵な高揚感を演出している。過去の大作に似ないようにしつつ、巨匠的な品位を保ったオリジナルな作品を作ろうとする努力が見える。はっとするよい場面も多くあるのだが、マイナー曲らしいパッとしない地味さも残念ながら全体としては多い。個人的には好感度は高いのだが名作とまでは言えない。 第5番 ホ長調 Op.177 "レノーレ Lenore" (1872) 3.8点 この曲はラフの代表作とされていて、交響曲5番らしい力のある入った作品である。1時間近い巨大さであり、ワーグナーにも匹敵するようなロマン派の壮大なスケール感を持った世界の広がりの世界のとたっぷりと、夢のような豪華な時間をロマンに浸って過ごす楽しみを味わえる。しかし、肥大化してバランスを崩した感じではなく、あくまでドイツ系交響曲の正統派の範囲内で音楽世界を拡張しているのが素晴らしい。類例が少ない非常に存在感と希少価値のある作品である。劇的な展開を備えており、最後の場面はニーベルングの指環にも匹敵するほど圧倒的に作者の力の限りを尽くして世界を構築しきって限界にたどり着いた充実した作品という満足感を与えられる。あえて言えば、さすがに作者の底や限界も同時に見えてしまうのが逆に欠点かもしれない。 -第6番 ニ短調 Op.189 (1873) 3.5点 リズムや音の使い方が単調で素朴すぎる。あと短調の響かせ方が平凡と感じるのは欠点。素朴さについては、もしかしたらロマンの限りを尽くした5番のあとなので古典派の交響曲の世界で意図的に勝負してみた曲なのではと想像する。5番のあとに聴いた時はひどく劣るように聴こえてしまったが、聴き直すと独自の明朗な良さや快活さがありなかなか愉しめる曲であることが分かった。ただ勝負の結果はラフが音感やリズムのセンスのようなもので微妙にトップレベルの天才からは落ちるのが如実になるものになった気がする。どこかに滲む地味さにそれが現れている。 第7番 変ロ短調 Op.201 "アルプスにて In den Alpen" (1875) 3.3点 副題も似ているが、実際リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲を連想した。なめらかな音の流れと、自然の巨大さを連想する開放感と、自然の持つ底知れないパワーを力強く表現している。描写的ではない。後期ロマン派のようち端的さを失った感じが個人的にはラフの良さをスポイルしている気がするのと、後期ロマン派と比較すると過渡期のような未熟さと中途半端さを感じてしまう。特色があって面白いが、全体に「いい!」といえる瞬間には乏しく物足りないのが正直なところである。快活な最終楽章はなかなかの魅力がある。 第8番 イ長調 Op.205 "春の響き Frühlingsklänge" (1876) 3.5点 自分の感性の問題かもしれないし、日本との気候の違いのためかもしれないが、それほど春らしい気分が強いとは思わなかった。曲としては相変わらずの卓越した交響曲作曲技法であり、何よりここまでの各曲の強い特色に比べてこの曲は非常に正統派でノーマルなのが特色になっている。最初は物足りなく思ったが、聴き直すと正統派の聴き応えがかなり心地よい。メンデルスゾーンやシューマンやブラームスよりも、古典派の交響曲を受け継いだ正統派を堪能できる。といいつつ2楽章は遊び心があり、3楽章は春の気分を愉しめる。残念ながら最終楽章はあまり面白くない。 第9番 ホ短調 Op.208 "夏に Im Sommer" (1878) 3.0点 8番に続く正統派。しかし、なぜか8番よりも地味に感じる。聴いていてテンションが上がらず輝くものがなく、全体的に地味な印象が強い。交響曲であるからには旋律もフレーズも、作曲者がいつでも繰り出せる以上のものがほしいのだが、それがない。ダメな曲とまでは言わないが、他の交響曲よりも価値が低いと思う。 第10番 ヘ短調 Op.213 "秋の時に Zur Herbstzeit" (1879) 3.5点 1楽章は地味。3楽章は珍しくスラブ的な憂愁を感じさせるのが心をとらえる。薄明のような雰囲気を醸しながら控えめながらも心に染み入る憂愁はかなり感動する。じわじわと気分を盛り上げていくところなど、別の作曲家のようだ。4楽章もかなりセンスの良い軽快さと運動性と味わいを兼ね備えた良い曲である。変化も面白く、珍しく天才的と呼べる楽章である。 第11番 イ短調 Op.214 "冬 Der Winter" (1876) 3.3点 どの楽章も10番に続いて、絶妙な柔らかさと芳醇さを持ち合わせている。ラフが新たな境地に到達したことを感じさせる。しかし、順番に聴いてそう感じただけであり、前提なしに単品で聴いたらどう聴こえるかは分からないが。密かに潜ませる陰影の味があって、さっぱりした正統派の交響曲との取り合わせは良い。まさに良質の佳作という感じ。この曲で終わりなのが残念で、さらに晩年風の交響曲をぜひ聴きたかった。 協奏的作品(独奏と管弦楽のための作品) ヴァイオリン協奏曲 第1番 ロ短調 Op.161 (1870-71) ヴァイオリン協奏曲 第2番 イ短調 Op.206 (1877) ピアノ協奏曲 ハ短調 Op.185 (1873) 2.5点 交響曲作家が試しに書いてみた協奏曲という印象。ピアノはもちろん前面に立ってはいるが、音数の多い派手さ華やかさに欠けている。交響曲らしいわけでもなく、特に作曲者ならではの協奏曲らしい「ピアノ協奏曲でこれがやりたかった」という独自の表現の境地に達している感じがしない。自分の中で音世界を試行錯誤しながら練って十分に構築しきれたという確信のないうちに書いてしまった曲という印象である。 チェロ協奏曲 第1番 ニ短調 Op.193 (1874) チェロ協奏曲 第2番 ト長調 WoO.45 (1876) 組曲(ヴァイオリンと管弦楽のための) Op.180 (1873) ヨハン・シュトラウス2世(Johann Strauß II), 1825 - 1899) カール・ゴルトマルク(Karl Goldmark, 1830 - 1915) 交響曲2番 2点 部分ごとは悪くなく、作曲家に実力があることは分かるが、全体の印象はかなり散漫 ピアノ三重奏曲1番 1点 内容が薄く響きも薄い ピアノ三重奏曲2番 2点 1番よりあらゆる面でだいぶ進歩していている。 ユリウス・ロイプケ(Julius Reubke, 1834 - 1858) ピアノ・ソナタ(1857年) 『詩篇94番によるオルガンソナタ』(1857年) フェリクス・ドレーゼケ(Felix August Bernhard Draeseke, 1835 - 1913) マックス・ブルッフ(Max Christian Friedrich Bruch, 1838 - 1920) 交響曲 交響曲第1番変ホ長調 作品28
交響曲第2番ヘ短調 作品36 交響曲第3番ホ長調 作品51 協奏的作品(独奏と管弦楽のための作品) クラリネット、ヴィオラと管弦楽のための協奏曲ホ短調 作品88 2台のピアノと管弦楽のための協奏曲変イ長調 作品88a ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調 作品26 3.5点 4大協奏曲に迫るロマン派協奏曲の優秀作の一つ。ドイツらしい重厚さと叙情性を兼ね備えた作品でヴァイオリンの甘さと美しさを存分に味わえるが、優等生すぎるもどかしさがある。 ヴァイオリン協奏曲第2番ニ短調 作品44 スコットランド幻想曲 作品46(1880年) 3.8点 メロディーが良く、ヴァイオリンのソロによって張りがあり、楽しんで聞ける。ロマン派の三大ヴァイオリン協奏曲のような深みは無いのだが、聞く楽しさでは同じ位のレベルかもしれない。 ヴァイオリン協奏曲第3番ニ短調 作品58 『コル・ニドライ』 作品47 2.8点 チェロの協奏曲。甘い思い出を切なく歌うような曲だが、狙いが分かりやす過ぎていまいち。一歩引いて聞いてしまう。 ヨーゼフ・ラインベルガー(Josef Gabriel Rheinberger, 1839 - 1901) フリードリヒ・ゲルンスハイム(Friedrich Gernsheim, 1839 - 1916) ヘルマン・グスタフ・ゲッツ(Hermann Gustav Goetz, 1840 - 1876) フリードリヒ・ニーチェ(独: Friedrich Wilhelm Nietzsche、1844 - 1900) あの有名な哲学者ニーチェは、アマチュア作曲家としてもなかなかの腕前である。鋭い感受性、世紀末的な感覚は音楽でも発揮されている。世紀末的なドロドロした感性は聴いていてスクリャービンを連想することが多々あり、スクリャービンのファンなら一聴してみることを大いにお勧めする。ドイツの後期ロマン派はオーケストラ曲が中心なので、ニーチェのピアノ曲はユニークな存在感があると思う。
マンフレッド瞑想曲(1972) 3.0点 自信をもってハンス・フォン・ビューローに送付するも酷評を受けたそうだ。小品ではなく割と長い曲で、ダークな感性とピアノ書法の良さは一聴に値すると思う。 ローベルト・フックス(Robert Fuchs, 1847 - 1927) オーストリア ユリウス・レントゲンまたはレントヘン(Julius Röntgen, 1855 – 1932) ドイツ
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