ロシア(1889年まで) - クラシック音楽 一口感想メモ https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%281889%E5%B9%B4%E3%81%BE%E3%81%A7%29ミハイル・グリンカ(Mikhail Ivanovich Glinka、1804 - 1857) 歌劇 ルスランとリュドミラ(1842年)序曲 ツェーザリ・キュイ(César Cui, 1835 - 1918) アレクサンドル・ボロディン(Alexander Porfir'evich Borodin, 1833 - 1887) 管弦楽曲 交響曲第1番 変ホ長調 2.5点 作曲技術は十分に成熟している感じがあり、未熟な習作という感じではない。しかしながら、どの楽章もインスピレーションに乏しくて地味。印象に残る場面がないまま型にはまった音楽が流れて、時間が過ぎていく。ボロディンの個性も感じられなかった。 交響曲第2番 ロ短調 3.8点 1楽章はとにかくイントロのエキゾチックな強烈な主題のインパクトが大。一度聴いたら忘れられない。その主題を有効活用しながらチャイコフスキーに匹敵するほどダイナミックに展開する楽しめる楽章。2楽章は佳曲だが、1楽章のようなインパクトは無い。3楽章は漆黒を感じさせる雰囲気のなかで、うねるように表情を変える情景描写が素敵。4楽章は軽く感じられて、この曲の弱点に思われた。 交響曲第3番 イ短調(未完) 3.3点 1楽章の孤独感のようにも感じられる陰りが印象的。しかし、2楽章はそのようなものはなく、活発で密度の高い曲である。2つの楽章はともにロマン派の交響曲として十分な完成度と魅力がある。したがって、未完成のまま亡くなってしまったのが残念だ。まとまりがある状態で終わっておらず、完全に中途半端であり、非常にもの足りない。 交響詩 中央アジアの草原にて 3.5点 ボロディンらしいエキゾチックな旋律を活用した佳曲。広々とした草原、草や生き物の匂い、風の吹く草原と人々をよく表現しており、本当にコーカサスに旅行したような気分になれる。 小組曲 3.5点 オリジナルはピアノ曲。クラズノフ編曲の管弦楽版で聴いた。チャイコフスキーのような愛らしさと躍動感にあふれた良作。強い印象にこそのこらないが、かなり楽しめる作品。小曲7曲。これは掘り出し物だと思った。 イゴーリ公からの組曲 3.8点 有名な韃靼人の踊りを含む3曲を組曲風にした作品。オリジナリティと強い創意を感じる説得力の強い音楽である。舞台音楽らしい華やかさを基本に据えながら、メロディーの面白さ、アジア風味の楽しさ、ダイナミックさのあるオーケストラの使い方などの要素も入れており、ボロディンの才能の豊さに感心する作品となっている。 室内楽曲 スペイン風セレナード 弦楽四重奏曲第1番 イ長調 弦楽四重奏曲第2番 ニ長調 モデスト・ムソルグスキー( Modest Petrovich Mussorgsky, 1839 - 1881) 管弦楽曲 交響詩「禿山の一夜」 ピアノ曲 組曲「展覧会の絵」 5.5点 どの曲も強靭な発想力と独特の土臭さと色彩感が両立していて大変面白い。組曲としてのまとまりやプロムナードの変奏など曲集としての全体の構成感も大変素晴らしい。捨て曲なしであり、間奏的な作品はあるものの、名作揃いである。最後のキエフの大門の圧倒的なフィナーレには感動してしまう。ロマン派のピアノ用組曲としては圧倒的な出来だと思う。ラヴェルの華麗な編曲も素晴らしいが、より土着的でグロテスクさもあるピアノ版が自分は好みである。 ニコライ・リムスキー=コルサコフ(Nikolai Andreyevich Rimsky-Korsakov, 1844 - 1908) 交響曲 交響曲第1番 Op.1(1861年-1865年/1884年) ― 第1版は変ホ短調、改訂版はホ短調 3.3点 シューマンの音楽の進め方の手際の良さや硬めの響きにロマン的香りを封じ込める点が似ていて、手本にしたのがよく分かる。しかし、ロシア的な開放感と大地の広さとスラブ的な音像はあり、オリジナリティを感じる。作曲年代をみると元は若書きだが、円熟してから改作されておりオーケストラの充実感などは壮年らしいものになっている。まだロシア音楽が完全に確立していない折衷の感じがなんとも微笑ましい。形式的すぎて深みに乏しいが、なかなか良い曲である。 交響曲第2番「アンタール」Op.9(1868年/1875年/1897年) ― 1897年版で交響組曲に改められる。 3.3点 中東的な旋律、華やかで開放感がある雰囲気など、シェヘラザードと強く類似する曲。交響曲的でなく、交響詩の連作に近い。物語性が少ないのと、旋律に強く心をとらえて離さないほどのものはないため、シェヘラザードより1.5ランク落ちるとは思う。しかし、それでも娯楽性が高くて充分に楽しめる曲になっている。 交響曲第3番 ハ長調 Op.32(1866年/1873年/1886年) 3.3点 シリアスで構築的な交響曲。がっちりとした骨格の太さが印象的だが、一方で伸びやかさには欠ける。それでもリムスキー=コルサコフらしい華があるのが良いところだが、あまり焦点が当たらない。かなりドイツ的であり、ドイツ音楽が好きな人だと感激するかもしれない。正統派ともいえる。ただし、メロディーは印象に残らない。 協奏曲 ピアノ協奏曲 嬰ハ短調 Op.30(1882年-1883年) 4点 期待せずに聞いたらかなりいい曲で驚いた。ピアノも効果的に使われている。 管弦楽曲 スペイン奇想曲 Op.34 (1887年) 交響組曲「シェヘラザード」 Op.35 (1888年) 5.0点 千夜一夜物語に基づく作品であり代表作である。華麗な管弦楽法を駆使した、まさに壮大な物語絵巻を見るような色彩感の豊かさと幻想的な華かさと物語性をもった作品であり、楽しい時間を過ごせる。何度聴いても心が躍り、少年のような気分になって冒険気分を味わえる。エキゾチック感も満載で、まだ見ぬ新世界を旅する物語を見ているかのようだ。 アントン・ルビンシテイン(Anton Grigoryevich Rubinstein, 1829 - 1894) 交響曲 第1番 ヘ長調 Op.40 第2番 ハ長調 Op.42「大洋」(1855) 第3番イ長調 Op.56 第4番 ニ短調 Op.95「劇的」 第5番ト短調 Op.107「ロシア的」(1880) 第6番 イ短調 Op.111(1886) 協奏曲 ピアノ協奏曲第1番ホ短調 Op.25(1850) ピアノ協奏曲第2番ヘ長調 Op.35 (1851) ピアノ協奏曲第3番ト長調 Op.45(1853 - 54) ヴァイオリン協奏曲 ト長調 op.46(1857) ピアノ協奏曲第4番ニ短調 Op.70 (1864) 2点 2楽章にやや美しいと思う箇所はあるが、全体的にはかなり凡庸な音楽。 ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 Op.94 (1874) ロシア奇想曲 op.102 コンツェルトシュテュック 変イ長調 op.113(1889) ミリイ・バラキレフ(Mily Alekseyevich Balakirev, 1837 - 1910) 管弦楽曲・協奏曲 交響曲第1番 ハ長調 (1864-66年、再開1893-97年) 交響曲第2番 ニ短調 (1900-08年) ピアノ協奏曲第1番嬰ヘ短調 作品1 (1855/56年) ピアノ協奏曲第2番 変ホ長調 (1861/62年, 再開1909/10年、セルゲイ・リャプノフにより完成) ピアノ曲 ピアノソナタ第2番変ロ短調 (1900-05年) イスラメイ(東洋風幻想曲)(1869年、改訂1902年) 4.0点 19世紀で最も難しいピアノ曲として有名。音楽的にはいまいちと言う人も多いが同意できない。楽想としても、各フレーズやパッセージの面白さはかなりのレベルであり、中間部の民族的なメロディーは素敵。ロシアのピアノ曲の中では、音楽的にもかなりの傑作だと思う。 アナトーリィ・リャードフ (Anatoly Konstantinovich Lyadov 1855 - 1914) ピアノ曲「舟歌 嬰ヘ長調」Op. 44 (1898年) 交響詩「バーバ・ヤガー – ロシア民話に寄せる音画」Op. 56 (1905年) 交響詩「魔法にかけられた湖」Op. 62 (1909年) 交響詩「キキーモラ – 民話」Op. 63 (1909年) 管弦楽曲「アマゾン女族の踊り」Op. 65 (1910年) 交響詩「ヨハネの黙示録より」Op. 66 (1912年) 管弦楽曲「挽歌 Nénie」Op. 67 (1914年刊行) セルゲイ・タネーエフ( Sergei Ivanovich Taneyev、1856 - 1915) 交響曲 交響曲第1番ホ短調 交響曲第2番変ロ長調:3楽章までの未完成。 交響曲第3番ニ短調 3.3点 かなり本格志向で硬い感じがする。ロシア風の場面は他の作曲家と比較してかなり少ないと思うが、少ないなかに時々顔をみせるのがむしろ愛嬌のようなものを感じさせる。響きや音使いの本格性や絶対音楽の志向は、人によってはなかなか好ましいと感じるだろう。ドイツ的だが、ドイツ臭はなく硬い絶対音楽志向だけを抜き出している。秀逸なはっとさせる霊感を楽しめる場面も時々あって、一流作曲家ほどに「音を楽しませる」「自分だけの音世界を持っている」感じの天才性やセンスはなくて、マイナー交響曲なのは当然ではあるが、案外曲に没入できて「いいなあ」と感動できる場面も多いから、聴いて損のない音楽と思う。 交響曲第4番ハ短調 4.0点 1楽章は旋律がやや陳腐なのが気になるが、ドイツ的なゴツい劇的な作りにブラームス的な渋みのあるロマンを盛り込んだ正統派。ロマン派では他にないほどの正統派感とアツい感じはかなり良い。2楽章は非常に叙情的であり、永遠の時間を音楽に浸していたくなるような美しさがある。しかし、正統派はここでも後期ロマン派ほどに構築感を崩していないため、さらに作り物としての完成度を感じさせる。とはいえ中間はもっともっと浸っていたいという気持ちをあっさり壊される感もあり、場面展開は一長一短である。最終的にはかなり長い時間をじっくりと余韻をもたせて満足とともに終わってくれる。3楽章も前の楽章からうまく気分を適切な塩梅で切り替えさせてくれている。素材の展開が素晴らしくて、この楽章もかなり良い。4楽章は力のこもった迫力のある力作であり、エルガーの1番を思い出させる1楽章の旋律の堂々たる再現も文句なしに感動的で素晴らしい。全体に素晴らしい力作であり、一流作曲家ほどのオリジナルな音世界は無いにしても、ロマン派交響曲を代表する作品の一つと言えるだろう。 アントーン・アレーンスキー(Anton Stepanovich Arensky, 1861 - 1906) 交響曲 交響曲第1番ロ短調 op.4 交響曲第2番イ長調 op.22 室内楽曲 ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 op.32 ピアノ三重奏曲第2番ヘ短調 op.73 3.0点 音が薄いし素人くさいベタな内容ではあるが、悲しげで感傷的なメロディーはそこそこよい。 ジョルジュ・カトワール(Georges Catoire, 1861 - 1926) 管絃楽曲 交響曲 作品7 ピアノ協奏曲 作品21 室内楽曲 ピアノ三重奏曲ヘ短調 作品14 ヴァイオリン・ソナタ第1番 作品15 ピアノ五重奏曲 ハ短調 作品16 ヴァイオリン・ソナタ第2番「詩曲」 作品20 弦楽四重奏曲 作品23 ヴァイオリンとピアノのための「エレジー」 作品26 ピアノ四重奏曲 イ短調 作品31 フェリックス・ブルメンフェリト(Felix Mikhailovich Blumenfel[']d , 1863 - 1931) アレクサンドル・グレチャニノフ (Alexander Grechaninov 1864 - 1956) ヴァシーリー・カリンニコフ(Vasily Sergeyevich Kalinnikov, 1866 - 1901) 交響曲第1番ト短調 (1894-95) 3.5点 1楽章は素朴で田舎臭く、メロディーは印象的で秀逸なのだが、むしろこの芋っぽさに惹かれてしまう。やたらと快活で歯切れがいいのも良い。2楽章も続けて芋臭いのだが、家庭的な暖かさが素敵。3楽章は急に中東風?の異国情緒で楽しい。4楽章はカーニバル的な楽しさ。歯切れが良すぎて性急な印象。この交響曲は、とにかく全編が歌謡曲のような田舎臭さで素人臭いが、メロディーが良く発想豊かな力作であり、聴いて損はない独特の魅力がある。この魅力はメジャー作曲家には無い。 交響曲第2番イ長調 (1895-97) 1.5点 1番でみせた魅力のほとんどが悲しいほどスポイルされてしまい、実力不足が目立ち耳に残らないB級作品になってしまっている。4楽章が少し魅力があるかと思うが、耳に入ってきやすい音楽というだけだ。田舎臭さ、素人臭さ、歯切れのよさ、メロディーの魅力が無くなってつまらない。こうしてみると、1番はやはり奇跡のホームランなのだろうか。 セルゲイ・ボルトキエヴィチ(Sergei Bortkiewicz ) (1877 - 1952) 管弦楽曲 交響曲 第1番《わが故郷より》 Op.52 /1935 交響曲 第2番 Op.55 /1937 ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.16 /1912 ピアノ協奏曲 第2番(左手のための協奏曲) Op.28 /1924 ピアノ協奏曲 第3番《苦難を通って栄光へ》 per aspera ad astra Op.32 /1927 レインゴリト・グリエール(Reinhold Glière、1875 - 1956) 交響曲 交響曲第1番変ホ長調 op.8(1899-1900年) 交響曲第2番ハ短調 op.25(1907年) 交響曲第3番ロ短調「イリヤー・ムーロメツ」 op.42(1911年〜12年) ニコライ・メトネル(Nikolai Karlovich Medtner、1880 - 1951) ラフマニノフと同時代のピアノ音楽作曲家。大衆性に傾いておらず、テクニカルを極めている点では、ラフマニノフ以上だろう。 ピアノソナタ ピアノ・ソナタ第1番 ヘ短調作品5 3.3点 全4楽章31分。1楽章は雄大で格好いい曲であり、いきなり本格的。全体に若書きらしいまとまりの悪さや粗さ、密度の低さはある。しかし、ピアノを雄大に使ってスケール大きく響かせて巨大な音楽を作る能力、ピアノに適合した書法の良さや音楽の作り方にかけては既に相当な高レベルに達している。4つの楽章は全てそれなりに良くて、聞き応えがある。 第2番、第3番、第4番はそれぞれ単一楽章の作品で別々に演奏可。3曲でソナタ三部作を形成。 作品11 3.0点 独立した単一楽章ソナタ3作品全24分。2曲目がやや穏やかなので全部をまとめて1作品のように聴いてもよいと思う。若気の至りのような作品5よりも大人っぽくて艶がある音楽になった。所々に光る場面があるし、聞き応えはあるのだが、やはり10分以内というキャンバスの小ささのせいか、広がりが足らず印象はまあまあという感じである。 ピアノ・ソナタ第5番 ト短調作品22(1909年 - 10年作曲)《お伽話ソナタSonata-Skazka》 3.3点 単一楽章15分。メトネルの一番有名なソナタ。複数主題を絡ませるて演出す複雑さと、洗練されたピアニズムが存分に発揮されている。激しさよりもリリシズムの比重が高いと感じる。15分の長さはスケール感と精神世界を冒険するようなドラマの構築と考え抜かれた構成を満たすのに良い長さであり、それを見事に活かしている。 おとぎ話ソナタ 作品25-1 全3楽章11分。5分以上の楽章が無いのはこの曲のみ。夢のような幻想的雰囲気が支配していて割と詩的。短い曲の割にはスケール感があり、聞き応えがある。ソナチネのような長さに聞こえない。 ピアノ・ソナタ第7番 ホ短調《夜の風」作品25-2 4.0点 全2楽章33分。メトネル最大のソナタであり長大で複雑な曲。1楽章は8分の15拍子。奔流のようなロマンティシズムの横溢が凄い。自由な幻想曲のように聞こえる場面も多い。艶のある美しい楽章。2楽章は前の楽章の素材を使いながらエネルギーを増して、巨大な流れを作る。これほど大規模で技巧的かつ作品としてのまとまりと巨匠性があり、20世紀に到達したピアノの器としての限界を引き出したピアノ独奏作品を自分は知らない。 バラード風ソナタ嬰ヘ長調 作品27 3.5点 全3楽章22分。古い物語を語るような1楽章はバラード風という副題がしっくりくる。割と明るいし、雰囲気と話の展開はなかなか楽しい。2楽章のゴツゴツとした和音の作る雰囲気もいいし、3楽章は詩情があり、雄弁に物語を構築していく。全体に成熟しており統一感があるし、内容が濃くて分かりやすい。 ピアノ・ソナタ第9番 イ短調作品30 2.5点 単一楽章12分。友人に戦争ソナタと呼ばれていたという攻撃的な内容である。しかし、面白い場面やはっとするようなメロディーが少なくて、霊感がやや足りない気がする。あまり印象に残らない。 ピアノ・ソナタ第10番 イ短調《回想のソナタ Sonata-Reminiscenza》作品38-1 3.0点 16分。メトネルのソナタにしては例外的に音数が少なく、しっとりとしていて、しんみりとする音楽がずっと続く。多少の盛り上がりはあるものの、激しくならない。メロディーは秀逸という程ではない。だが、切ない歌は心にそれなりに迫るものがあり、通俗的な分かりやすいメロディーに頼らないで、ピアノを繊細にたっぷり歌わせる事で情感を表現出来ている。長いが飽きる事はなかった。 ピアノ・ソナタ第11番 ハ短調 《悲劇的Sonata-Tragica》 op. 39 no. 5 作品 39-5 2.8点 発想が若干陳腐に感じられる。だが、ピアノの激しい音使いや高速やパッセージが格好よくて楽しめる。 ピアノ・ソナタ第12番 変ロ短調《ロマンティック》Romantica作品 53-1 2.3点 全4楽章。1楽章は確かに多少ロマンチックかもしれない。全体にかなり物足りないというのが正直なところ。特に最後の楽章はメロディーが面白くなくてセンスの無さやまとまりの悪さが目立つので、割と長い曲なだけに嫌になってきてしまう。2楽章の高速パッセージは楽しいが。 ピアノ・ソナタ第13番 ヘ短調《嵐 Minacciosa》作品 53-2 2.5点 単一楽章16分。全体としては取り留めのない茫洋とした雰囲気。その中で印象に残ったのは中間の高速の対位法的部分。非常にテクニカルで格好よくて痺れた。 ピアノ・ソナタ《牧歌ソナタ Sonate-Idylle》ト長調 作品56 1937年 3.0点 全2楽章。最後を締めくくるに相応しい感動的なソナタ。1楽章はほのぼのとした牧歌風の曲であり、2楽章は感動的に盛り上がっていく。メロディーは地味だがテクニカルでバランスのよいピアノの書法はここでも素晴らしい。 その他ピアノ曲 2つのおとぎ話 作品8 (1904-5年) 3.8点 2曲とも非常にキレがよい。不協和音や妥協のない先鋭的な音の使い方、不安定でせき立てるような雰囲気と前衛的な和音の進行、20世紀的への道を切り開いたかのような驚異的な作品である。若き日のプロコフィエフが絶賛した作品というのも納得。 組曲『忘れられた調べ I』 作品38 1918-20 3.3点 超テクニカルな曲から、メロディーをおおらかに聴かせる曲まで色々な曲が集まっている。名曲というほどではないが、ピアノの扱いの自由さと巧みさをいかしたバラエティーの豊さとスケールの大きさのため、楽しんで聴くことが出来る。この自由さは素晴らしい。多くのソナタと同様かそれ以上に楽しめる。 組曲『忘れられた調べ II』作品39 1919-20 3.3点 最初の二曲は内向的で瞑想的な曲。3曲目はテクニカルだが、夜想曲のような雰囲気がある。4曲目も夜想曲のようで、エピローグのような雰囲気であり、メロディーが珍しくとても良い曲。全体に1集ほどの自由さがないため、曲の良さとしては同じくらいか上かもしれないのだが、面白さの点では劣る。 ピアノ協奏曲 ピアノ協奏曲第1番ハ短調 作品33 (1914年 - 18年> ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品50(1920年 - 27年 ピアノ協奏曲第3番 ホ短調作品60(1940年 - 43年) ニコライ・ミャスコフスキー( Nikolai Yakovlevich Myaskovsky,1881 - 1950) 交響曲を27曲残したことで有名な作曲家。超一流と比較すると発想の弱さが二流感を漂わせる。しかし、交響曲は結構楽しめる。特に27番は大作曲家らしい作品と言ってよい。 交響曲 交響曲第1番ハ短調作品3 (1908年 3楽章) 交響曲第2番嬰ハ短調作品11(1911年 3楽章) 交響曲第3番イ短調作品15(1914年 2楽章) 交響曲第4番ホ短調作品17(1918年 3楽章) 交響曲第5番ニ長調作品18(1918年 4楽章) 2.5点 後年の作品に比べると、音に重みがなくて、音楽的な密度も薄い。それゆえに軽い気分で楽しめる部分はあるものの、やはり根暗で変化が大きすぎないことによる重みと民謡的な軽い楽しさの取り合わせと旋律の楽しみは足らない。音に対するセンスそのものが物足らず、大作曲家の交響曲に相応しいレベルには到達していないように聞こえてしまう。 交響曲第6番変ホ短調作品23(「革命」)(1923年 4楽章)-声楽つき 交響曲第7番ロ短調作品24(1922年 2楽章) 交響曲第8番イ長調作品26(1925年 4楽章) 交響曲第9番ホ短調作品28(1927年 4楽章) 交響曲第10番ヘ短調作品30(1927年 単一楽章) 交響曲第11番変ロ短調作品34(1932年 3楽章) 交響曲第12番ト短調作品35「十月」(1932年 3楽章) 交響曲第13番変ロ短調作品36(1933年 単一楽章) 2.8点 盛り上がりのないひたすらダークな1楽章制の曲。この音楽はだれでもアラン・ペッテションとの類似と比較を考えるだろう。しかし、ペッテションほどの深さに到達して徹底的に重みに精神を浸すような満足を得られず、なんとなく物足りないまま終わってしまう。比較対象が無ければ感動できたのかもしれないが、私としてはあまり聴く価値を感じなかった。 交響曲第14番ハ長調作品37(1933年 5楽章) 交響曲第15番ニ短調作品38(1935年 4楽章) 交響曲第16番ヘ長調作品39 (1936年 4楽章) 交響曲第17番嬰ト短調作品41(1937年 4楽章) 交響曲第18番ハ長調作品42(1937年 3楽章) 3.0点 1楽章と3楽章は短くて少し祝典的な雰囲気がある音楽で特にどうということはない曲だと思う。2楽章がこの曲この価値の大半を占めている。1回聴いた時は素朴な民謡的な味の中に歴史的な悲しみとか孤独を忍ばせて非常によい曲に聴こえたが、すぐにもう一度聴いたらその良さの多くが消えてしまい、あまり感動できなかった。 交響曲第19番変ホ長調作品46(1939年 4楽章) 交響曲第20番ホ長調作品50(1940年 3楽章) 交響曲第21番嬰ヘ短調作品51(「交響幻想曲」)(1940年 単一楽章) 2.5点 幻想曲と銘打たれているのだが、本当にとりとめもなく音楽が進み、何をしたいのか理解が出来ない。暗かったりするだけでストーリーが構成されないと、クラシック音楽がは面白くないという例だと思った。特にステキな場面もないし。 交響曲第22番ロ短調作品54「大祖国戦争についての交響バラード」(1941年 3楽章) 2.8点 バラードというだけあってある程度の物語的な説得のある音楽なのは良いところ。しかし長すぎる。特に中間は緩徐楽章の場面のつなぎの経過みたいな音を延々と続けていて、これが本気の作曲的思考の結果なのだとしたら酷すぎる笑。キワモノの類の音楽といえよう。 交響曲第23番イ短調作品56「北コーカサスの歌と踊りの主題による交響組曲」(1941年 3楽章) 3.5点 1楽章はミャスコフスキーらしい暗すぎない陰鬱さの場面が土臭い民族音楽ふうのウキウキするようや楽しい場面を挟んでいる構成。やや長い楽章だが、中間がとにかく楽しいのと強烈なコントラストが楽しくて飽きない。2楽章の丁度よい暗さとモヤモヤした気分の表現は、長さの適切さもあって個人的にはツボである。ただひたすら気分に浸って満足したところで終わってくれる音楽。3楽章は再び土臭くて能天気で、前の楽章と気分的にイマイチ繋がらないのだが、そのまま高揚感を演出してフィニッシュまでもっていかれる。これは間奏にして後ろに4楽章がほしかった。 交響曲第24番ヘ短調作品63(1943年 3楽章) 交響曲第25番変ニ長調作品69(1946年 3楽章) 交響曲第26番ハ長調作品79「ロシアの主題による」(1948年 3楽章) 3.3点 1楽章は軽快さがあり聴きやすいが、展開が弱くて変化が少なく長すぎるため飽きてくる。2楽章は変奏曲でなかなか秀逸で、途中に挟まれるロマンティックなパートも楽しめて、いい曲だったと聴き終わって満足できる楽章である。3楽章は最終楽章らしい高揚感とゆったりした感じを両立している点では好きだが、明らかに冗長で間延びする。各楽章を2割カットするとよい曲になると思う。 交響曲第27番ハ短調作品85(1949年 3楽章) 4.0点 何曲か聴いた中ではこの曲が圧倒的に素晴らしいと思った。重々しい響きは雄渾なロシアの大地を感じさせる。厳しい中に温かみがあり、そして感動的な名曲。旋律の良さも素晴らしく、一つ一つの部分が真実味を伴っていて聴き応えがある。ロシアの広大な大地とそこに脈々と息づく人間達の営みを連想させる。1楽章と2楽章はチャイコフスキーの3大交響曲にも匹敵するほどの名作に聞こえる。この作曲家は最後まで完全に後期ロマン派の枠の中の作品であったというのがまた感慨深い。 協奏曲 チェロ協奏曲ハ短調 作品66 (1944年) 室内楽曲 弦楽四重奏曲 弦楽四重奏曲 ヘ長調(1907年) 弦楽四重奏曲 第1番 イ短調 作品33-1(1930年) 弦楽四重奏曲 第2番 ハ短調 作品33-2(1930年) 弦楽四重奏曲 第3番 ニ短調 作品33-3(1930年) 弦楽四重奏曲 第4番 ヘ短調 作品33-4(1937年) 弦楽四重奏曲 第5番 ホ短調 作品47(1938〜39年) 弦楽四重奏曲 第6番 ト短調 作品49(1939〜40年) 弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調 作品55(1941年) 弦楽四重奏曲 第8番 嬰ヘ短調 作品59(1942年) 弦楽四重奏曲 第9番 ニ短調 作品62(1943年) 弦楽四重奏曲 第10番 ヘ長調「古いノートから」作品67-1(1945年) 弦楽四重奏曲 第11番 変ホ長調「思い出」作品67-2(1945年) 弦楽四重奏曲 第12番 ト長調 作品77(1947年) 弦楽四重奏曲 第13番 イ短調 作品86(1949年) チェロ・ソナタ 第1番 (1911年) 第2番 (1948年) ピアノ・ソナタ 第1番ニ短調作品6(1909年) 第2番 嬰ヘ短調作 品13(1912年) 第3番 ハ短調 作品19(1920年) 第4番 ハ短調 作品27(1925年) 第5番 ロ長調「古いノートから」作品64-1(1944年) 第6番 変イ長調「古いノートから」作品64-2(1944年) 第7番 ハ長調 作品82(1949年) 第8番 ハ長調 作品83(1949年) 第9番 ハ長調 作品84(1949年) https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%281889%E5%B9%B4%E3%81%BE%E3%81%A7%29
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