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バイデン米大統領がサウジを訪問する背景にサウジのBRICS接近
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202207060000/
2022.07.06 櫻井ジャーナル
アメリカのジョー・バイデン大統領は今月、サウジアラビアを訪問すると伝えられている。アメリカ政府の政策で石油価格が暴騰していることから、この問題が議題になるという見方もあるが、ここにきて注目されているのはサウジアラビアの動向。BRICSへの参加に前向きの姿勢を見せているのだ。
BRICSの現加盟国はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカだが、ここにきてイランとアルゼンチンが加盟の意思を示していた。そしてサウジアラビアだ。
言うまでもなくサウジアラビアは世界有数の産油国であり、OPECのリーダーとして石油取引の決済をドルに限定するように誘導、ドル体制を支えてきた。いわゆる「ペトロダラー」の仕組みだ。この仕組みと投機市場の大幅な規制緩和によって実世界からドルを吸い上げ、新たにドルを発行する余地を作っている。新たにドルを発行できなければアメリカの支配システムは崩壊する。
ドルを実世界から回収する作業に協力する代償として、体制を守り、支配者の地位と富を維持することになっているようだが、イラクのサダム・フセインやリビアのムアンマル・アル・カダフィのようなアメリカの協力者をアメリカは自分たちの都合で暴力的に排除し、国自体を破壊してきた。やり口は犯罪組織に似ている。アメリカの支配者に対する信頼が大きく低下したことは間違いないだろう。
サウジアラビア国王のサルマン・ビン・アブドラジズ・アル・サウドは2017年10月にロシアを訪問、防空システム「S-400」を含む兵器の取り引きについて話し合ったという。この頃からサウジアラビアとアメリカとの間に隙間風が吹き始めている。
その翌月、モハメド・ビン・サルマン皇太子はライバルを粛清する。48時間の間に約1300名を逮捕させたのだが、その中には富豪や少なからぬ王子や閣僚が含まれていたとされている。その際、イスラエル軍は皇太子を守るため、F-15やF-16を含む軍用機をサウジアラビアへ派遣したとも報道された。
その前、2017年4月にアメリカ軍は地中海に配備されていたアメリカ海軍の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル「トマホーク」59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したのだが、その6割が無力化されている。ロシア製の防空システムが有効だということが証明されたわけだ。
この攻撃に合わせ、アメリカの傭兵、つまりアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)がシリアで一斉に攻勢をかける手筈になっていたとも言われているが、そうした展開にはならなかった。
2017年4月のミサイル攻撃失敗のリベンジのつもりだったのか、ドナルド・トランプ政権は2018年4月、アメリカ軍だけでなくイギリス軍やフランス軍も使って100機以上の巡航ミサイルをシリアに対して発射。ところがこの時には7割が無力化されてしまった。前年には配備されていなかった短距離用の防空システムの「パーンツィリ-S1」が効果的だったと言われている。
バラク・オバマ政権が軍事攻撃の準備を進めていた2015年9月、ウラジミル・プーチン政権はシリア政府の要請で軍事介入、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュを敗走させてしまった。単に軍事力の強さを示しただけでなく、兵器の性能が高いことも世界に知らせた。
2015年10月にはカスピ海のコルベット艦から発射された26機の巡航ミサイル「カリブル」は約1500キロメートルを飛行し、シリアのターゲット11カ所を正確に攻撃、破壊している。この性能にアメリカ側はショックを受けたと言われている。
1991年12月にソ連が消滅して以降、世界の少なからぬ人々はアメリカは唯一の超大国になり、その軍事力は圧倒的だと信じていた。その信仰がシリアでの戦争で崩壊したとも言える。西側の有力メディアがウクライナで「ロシア軍が負けている」と事実を無視して必死に宣伝、「ロシア軍は弱い」というイメージを広げようとしている理由のひとつもそこにあるのだろうが、世界的に見た場合、その宣伝を真に受ける人が多いとは思えない。
2019年9月にもサウジアラビアで大きな事件が引き起こされた。サルマン国王が最も信頼していた警護責任者、アブドル・アジズ・アル・ファガム少将が射殺されたのだ。ジェッダにある友人の家で個人的な諍いから殺されたとされているのだが、宮殿で殺されたとする情報がある。サウジアラビアを苦境に陥らせる原因を作り出した皇太子に関する情報を国王へ伝えていたのはアル・ファガムだけだったと言われている。
アル・ファガム殺害の翌月頃からサウジアラビアはイランに接近している。イラン側のメッセンジャーを務めていたガーセム・ソレイマーニーはイスラム革命防衛隊の特殊部隊とも言われているコッズ軍の指揮官だったが、2020年1月3日、PMU(人民動員軍)のアブ・マフディ・ムハンディ副司令官と共にアメリカ軍の攻撃で暗殺された。
この攻撃はイスラエルも協力していたというが、イラクのアディル・アブドゥル-マフディ首相によると、緊張緩和に関するサウジアラビアからのメッセージに対するイランの返書をソレイマーニーはその時、携えていた。
ソレイマーニーの喪が明けた直後の1月8日、イラン軍はアメリカ軍が駐留しているイラク西部のアイン・アル・アサド空軍基地やエル・ビルを含も2基地に対して約35機のミサイルで攻撃、犠牲者が出ているとも伝えられている。50分後にエルビル空港近くの米軍基地などに対して第2波の攻撃があったという。
その月の下旬、アフガニスタンではCIAのイラン工作を指揮していたと言われているマイケル・ダンドリアが乗ったE11Aが墜落、ダンドリアは死亡した。
サウジアラビアのBRICS接近は唐突に起こったわけではない。アメリカの妨害にもかかわらず、サウジアラビアは確実にロシアやイランへ接近してきた。BRICSに興味を示すのは必然だが、これはアメリカにとって大きな打撃になる。
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