http://www.asyura2.com/21/kokusai31/msg/598.html
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直観だが、45日以上続いてきた「ウクライナ争乱」の戦闘は今月いっぱいでほぼ終わり、本格的な和平協議の段階に移っていくと考えている。
国際政治的な「ウクライナ争乱」の意味や意義などの大局的な見解はもっと落ち着いてから投稿するつもりなので、今回は、これまでの戦況や東部ドンバスの戦況について思うところを書きたい。
1ヶ月近く前に投稿した
「「ウクライナ争乱」その1 和平停戦交渉:最大の困難はウクライナの内政と合意遂行保証措置」
http://www.asyura2.com/21/kokusai31/msg/530.html
投稿者 あっしら 日時 2022 年 3 月 18 日
の内容に即しながら説明していきたい。
1.ロシア軍がキエフ周辺で敗北もしくは失敗という話は虚妄
日本を含む西側メディアは、キエフ北方及び周辺の戦闘でロシア軍が負けたとかウクライナ軍が力でロシア軍を押し返したと解説しているが、このような言説は事実を無視したものでしかない。
まず、ロシアが、キーフ(キエフ)の占領やゼレンスキー大統領の排除=傀儡政権樹立を戦略的目標にしていたとする西側の見方は間違っている。
(ロシアとの協議を訴えて2019年春に当選したゼレンスキーの大統領任期は来年春までである。このような時間軸も、ゼレンスキー政権に“期待”を寄せるロシアがこの2月末に侵攻した理由である。プーチンも再来年は再選をめざす)
ウクライナに侵攻したロシア軍は、ミサイル攻撃は行っても、ゼレンスキー政権が恐れおののくような(これまで米軍が“衝撃と畏怖”と称して様々な侵攻作戦でやってきたような)大規模空爆を行っていない。
ゼレンスキー大統領は、ロシア軍侵攻後も市街地に出て身体を晒した状態で、国民を鼓舞しロシアを非難するメッセージを何度も発した。
また、ロシア軍が北部から撤退した後のキーフ市街の映像でわかるように、中心部はほぼ無傷であり、瓦礫と化したのは周縁部の高層住宅などである。
ロシア軍侵攻後の北部地域戦況も不可思議なものであった。
北方(ベラルーシ)から侵攻したロシア軍の装甲車両は、長い期間、防御力を高めるための散開もせず60数キロにわたり一列でとどまっていたという。
これは、キーフ北方でぶつかったはずのロシア軍とウクライナ軍のあいだで“ガチンコ”の戦闘が行われなかったことを意味する。
横っ腹をさらしたまま滞留していたロシア軍の装甲車両は、地の利で優位のウクライナ軍対戦車砲の格好の餌食だからである。
何より驚いたのは、ロシア軍の侵攻初日のものとして、キエフの上空でロシア軍のものとされる戦闘ヘリが低空で飛行している映像が流れたことである。
首都上空を低空で飛行する敵の戦闘ヘリを撃墜しない(できない)ウクライナ軍の対応は、この戦争が、“ガチンコ”でないこと、もしくはウクライナ軍の戦闘能力欠如を物語るものである。
「「ウクライナ争乱」その1」で、
「悲劇は、ロシアが攻撃を徐々に強めていくことで、クライナ国民ないし政治勢力の多数がロシアとの合意を受け容れるのもやむなしに傾いていくことという厄介な状況である。
プーチンとしては、男を上げた(差別用語かな)ゼレンスキー大統領への求心力が、ゼレンスキーが合意を受け容れるのならそれもやむなしという動きにつながっていくことを期待しているだろう。
(このような考えが、ロシア軍の“停滞している軍事作戦”につながっているのである)
と書いた。
ロシアとウクライナのあいだで停戦協議は、ロシア軍の侵攻からわずか4日で始まった。
そして、第一ラウンドの停戦協議で、ウクライナは、中立化(NATO非加盟)を受け容れるとか、ロシアによるクリミア半島併合の問題は15年の協議を経て解決するといった“譲歩”をみせた。
西側メディアが言うように、ウクライナが有利な戦いを進めていた(いる)のなら、ウクライナがこのような譲歩をする必要はない。
戦況はともかく、ウクライナが短日の内にそのような譲歩ができるということは、「「ウクライナ争乱」その1」で書いた「ロシアがウクライナに要求した内容は、政権担当者レベルで協議すれば落としどころが見つかるものだろう。(軍事侵攻なしでも!!)」の妥当性を裏付けているとも言えるだろう。
ロシア軍がキーフ周辺など北部地域から撤退したのは、戦況が不利で多大な損失を蒙ったという理由ではなく、ウクライナ政権との協議で侵攻目的が達成できる見通しが立ったからなのである。
2.ゼレンスキー政権はドンバスで戦う「アゾフ大隊」を見捨てロシアにその殲滅を委ねた
現時点で西側メディアが報じている「ウクライナ争乱」の主な内容は、キーフ周辺でのロシア軍の“民間人虐殺問題”とロシア軍が東部で大攻勢を仕掛ける構えと言えるだろう。
(民間人虐殺や化学兵器使用といったウクライナの対露批判主張は、それが事実でなくても戦争プロパンガンダなので非難はしないが、ウクライナの主張をそのまま事実のように報じている日本のメディアは犯罪的である)
徹底抗戦を呼びかけてきたウクライナ政権は、あとからでも調査できる“民間人虐殺問題”よりもやるべき緊急課題がある。それは、マリウポリなどの東部地域に対する戦闘支援である。
しかし、ウクライナ政権は、首都及びその周辺で戦闘していた(はずの)ウクライナ軍部隊を東部地域に派遣し、大攻勢を準備しているとされるロシア軍に対峙させる動きを見せていない。
「アゾフ大隊」など東部で戦う人々を愛国者で同志とほんとうに考えているのなら、ウクライナ政権は、最低でも、東部地域で包囲されている部隊の退却路を確保するためにウクライナ軍部隊を派遣しなければならない。
キーフは、英国のジョンソン首相、ドイツのシュタインマイアー大統領(08年のウクライナNATO加盟要望に難色を示し、14年と15年の「ミンスク合意」(ウクライナ不利)を進めたときの外相)は訪問を拒否されたがポーランドやバルト三国の大統領がキエフを訪問できるほど“平穏”なのである。
昨日は、補給もなくマリウポリの製鉄所に立て籠もっていたウクライナ軍の海兵旅団兵士千名超がロシア軍に投降したとされる。
海兵旅団の他にウクライナ正規軍がどれほどドンバス地域にいるか不明だが、東部に残る戦闘部隊は、「アゾフ大隊」を中心とした内務省管轄準軍事組織「国家防衛隊」に限られてきた可能性が高い。
国防省管轄の正規ウクライナ軍は深手を負わないうちに投降し、今後は、強硬派「国家防衛隊アゾフ大隊」に戦いを任せるという“逃げ”の状況なのである。しかも、補給もないまま...。
ロシア軍が東部に大攻勢を仕掛ける準備を進めていると報じられているが、東部ドンバス地域は、ロシア軍が大攻勢を仕掛けなければ打開できないという戦況ではなく、血で血を洗うWW2スターリングラード攻防戦のような市街戦白兵戦が必要な状況なのである。
ロシア軍にとってこれから必要なのは、ミサイルや強力な砲弾ではなく、立て籠もっている戦闘部隊を殲滅するため、施設や住宅をしらみつぶしに探索するという危険な任務を遂行する部隊である。
そのため、ロシア軍も、市街戦や白兵戦に強いチェチェン人部隊を主力として「アゾフ大隊」殲滅に臨んでいる。
「「ウクライナ争乱」その1」で、「穿った言い方になるが、ゼレンスキー政権も、ロシアとの係争が高まってきたなかで国内世論的に自らが解体ないし制御できなかった「国家防衛隊」(民族主義勢力の武装勢力)をロシアが解体してくれることを期待しているかもしれない」と書いたが、それに近いことが起きて(起きようとして)いる。
昨日夕方放送された米国PBSでインタビューに応じていたウクライナのクレバ外相は、和平合意の調印は、ウクライナとロシアがドンバスの結末を共有できたときになると話していた。(和平合意の内容はすでに固まっているらしい)
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