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恫喝がロシアに通用しないことを理解したバイデン政権はロシアの脅威を宣伝
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202202120001/
2022.02.12 櫻井ジャーナル
アメリカは「ロシアが攻めてくる」とお叫びながらウクライナへ軍事物資へ運び込んでいる。ジョー・バイデンは大統領に就任して間もない昨年3月10日にNATO加盟国の軍艦をウクライナ南部の都市オデッサへ入港させ、同じ頃にキエフのボロディミル・ゼレンスキー政権は大規模なウクライナ軍の部隊をウクライナ東部のドンバス(ドネツクやルガンスク)やクリミアの近くへ移動させている。
そのゼレンスキーは今年に入り、ロシアの侵略が差し迫っているという間違った警告はウクライナの経済を危険な状態にすると主張、パニックを作り出そうとしないよう西側の記者に求めた。バイデン政権の動きを危険だと感じたのだろうが、ウクライナ政府の治安や軍事の部門ではネオコンを後ろ盾にするネオ・ナチが影響力を持っている。それでもアメリカの宣伝に反する発言をせざるをえなかったのだろう。
バイデン政権も国際的な問題や軍事的な問題ではネオコンをはじめとするシオニストが主導権を握っている。シオニストは「シオニズム」を信奉する人々で、シオニズムとはエルサレム神殿があったとされる「シオンの丘」へ戻ろうという運動である。
シオニズムという語句を最初に使ったのはナータン・ビルンバウムなる人物で、1893年のことだとされている。近代シオニズムの創設者とされているセオドール・ヘルツルが『ユダヤ人国家』という本を出版したのはその3年後だが、1905年まで「建国」の地をパレスチナだとは定めていない。ヘルツルを含む主要なシオニストは当初、聖書には言及していなかった。
ビルンバウムが「シオニズム」なる用語を使い始める前、1891年にキリスト教福音派のウィリアム・ブラックストーンなる人物がアメリカでユダヤ人をパレスチナに返そうという運動を展開、ベンジャミン・ハリソン米大統領に働きかけていた。イギリス政府は1838年にエルサレムで領事館を建設している。
イギリスは1837年からビクトリア女王の時代に入る。女王が1840年に結婚したアルバート公は1861年に死亡。1890年代からイギリスの政策はネイサン・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット、そしてセシル・ローズらが「アドバイス」することになる。
イギリスは海賊行為で財宝を奪い、侵略戦争を進めて東アジアへ到達したが、1840年から42年にかけてアヘン戦争、56年から60年の第2次アヘン戦争(アロー戦争)を中国に対して仕掛けて勝利する。
しかし、内陸部を支配するだけの戦力はなく、足りない戦力を補ったのが日本にほかならない。「明治維新」で実権を握った薩摩や長州をはじめとする勢力は明治体制を樹立するが、その背後にアメリカやイギリスが存在していたことは本ブログでも繰り返し書いてきた。その新体制は琉球を併合し、台湾へ派兵、李氏朝鮮の首都を守る江華島へ軍艦を派遣して挑発、そして日清戦争、日露戦争へと進んだ。
ところで、ローズは1871年にNMロスチャイルド&サンの融資を受けて南部アフリカでダイヤモンド取引に乗り出して大儲けした人物。1877年には「信仰告白」を書き、その中で彼はアングロ・サクソンを世界で最も高貴な人種だと表現している。アングロ・サクソンが支配地域を広げることは義務だというのだ。
優生学的な考え方だが、そうした思想の持ち主は彼に限らない。トーマス・ハクスリーが1864年にイギリスで創設した「Xクラブ」もそうした考え方をする人々の集まり。メンバーには支配階級の優越性を主張する社会ダーウィン主義を提唱したハーバート・スペンサー、チャールズ・ダーウィンの親友だったジョセフ・フッカー、このダーウィンのいとこであるジョン・ラボックも含まれていた。
こうしたグループとつながっているハルフォード・マッキンダーという学者は20世紀初頭、アングロ・サクソンが支配地域を広げる長期戦略をまとめた。ユーラシア大陸の周辺部を支配して内陸部を締め上げ、最終的にロシアを制圧して世界の覇権の握るというもので、この長期戦略をその後も放棄されていないように見える。ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」につながった。そうした戦略にとって日本列島から琉球、台湾、フィリピンへ連なる島々は重要な意味を持つ。
この長期戦略は1991年12月にソ連が消滅した段階でほぼ達成されたように見え、イギリスと同じアングロ・サクソン系のアメリカが「唯一の超大国」になったと少なからぬ人が認識したようだ。その認識を覆したのがロシアのウラジミル・プーチンを中心とするグループだ。そのグループとアングロ・サクソン系の国を支配する人びとが現在、ウクライナでつば迫り合いを演じている。
ロシア政府はアメリカ/NATOに対し、NATOをこれ以上東へ拡大させないこと、モスクワをターゲットにできる攻撃システムをロシアの隣国に配備しないこと、ロシアとの国境近くで軍事演習を行わないこと、NATOの艦船や航空機をロシアへ近づけないこと、定期的に軍同士の話し合いを実施すること、ヨーロッパへ中距離核ミサイルを配備しないことなどを保証する文書を1月23日までに提出するよう求めたが、事実上無視された。
アメリカ/NATOが軍事的な支配地をウクライナへ拡大してロシアの安全を脅かすなら対抗措置をとるとプーチン政権は警告、それに対してバイデン政権は「防衛のため」と称して軍隊や兵器をロシアとの国境近くに配備しつつある。
こうした動きを正当化するため、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は1月14日、ロシア政府がウクライナの東部にあるドンバス(ドネツクやルガンスク)の周辺で「偽旗作戦」を行おうとしているとする情報があると発言、アメリカ国務省の報道官を務めているネッド・プライスは2月3日の記者会で、ロシアの偽情報をモスクワが計画しているかもしれない偽旗作戦に強い関心を持っていると口にした。
そのプライス発言に対し、APのマット・リー記者は主張を裏付ける証拠を示すように求めたが、プライスはアメリカ政府の情報機関が機密解除した情報だという言うばかりで、結局、証拠は示せない。主張と情報は違うと言われ、イラクを攻撃する前にアメリカ政府が宣伝していた「大量破壊兵器」の話を持ち出されても答えられなかったプライスはCIAの「元高官」だ。
その翌日、アメリカの有力メディア、ブルームバーグはロシア軍がウクライナへ侵攻したとする記事を掲載した。そうした事実はなかったが、インターネット上で指摘されるまで30分にわたってホームページに掲載されていたようだ。「ミス」だとされているが、そうした記事が存在していたことは間違いない。
ゼレンスキーが言っていたように、ロシアの侵略が差し迫っているというアメリカ政府やその手下の宣伝は事実に反している。パニックを作り出そうとているのだろう。アメリカ離れが世界的に起こっている今、ロシアの脅威を演出することで求心力を回復させようとしているのかもしれないが、難しそうだ。このままバイデン政権が軍事的な緊張をエスカレートしていくと、アメリカとロシアが軍事衝突、核戦争が始まる可能性はある。
そうした中、イギリスのリズ・トラス外相はモスクワを訪問、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談した。彼女はその際、ロシア領であるボロネジやロストフからロシア軍は撤退しろと脅している。ロシア政府はロシア領で主権を行使できないと彼女は主張したのだ。バルト諸国が黒海に面しているともトラスは発言している。
この程度の人間がイギリスでは外務大臣を務め、ロシアを恫喝する一員になっている。バイデン政権や岸田文雄政権がトラスよりマシだと言い切る自信はない。そうした政治家が人類の運命を握っている。
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