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間違った警告でパニックを作り出そうとするなとウクライナ大統領が発言
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202201310000/
2022.01.31 櫻井ジャーナル
ジョー・バイデン米大統領は1月27日、ロシア軍が来月にもウクライナへ軍事侵攻する可能性があると主張、それをロシア政府は否定した。その前日にロシア、ウクライナ、フランス、ドイツがパリでウクライナ情勢について討議、事態を平和的に解決することで合意している。
こうした和平の動きをアメリカは壊したいのだろうが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーは西側の記者に対し、侵略が差し迫っているという間違った警告はウクライナの経済を危険な状態にすると発言、パニックを作り出そうとしないように求めた。すでにウクライナ国防省はロシア軍の軍事侵攻が迫っているという話を否定、ドミトロ・クレバ外相も軍事侵攻するために十分な兵力は集結していないと語っている。
アメリカがネオ・ナチを使って実行した2014年2月のクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権は倒されたが、ネオ・ナチ体制への反発からゼレンスキー政権は生まれた。そのゼレンスキー政権もこれまではアメリカの命令に従ってきたが、その好戦的な政策がウクライナの存続を危うくする事態になり、アメリカ離れを始めたということだろう。
ロシアがアメリカに求めているのは、アメリカの軍事的支配地をこれ以上拡大させるなということ。それはロシアを奇襲攻撃で破壊する準備になるからだ。ドイツが1941年6月に始めた「バルバロッサ作戦」でソ連は大きなダメージを受け、1991年12月に消滅するまで完全に立ち直ることはできなかった。その二の舞は御免だというわけだ。
アドルフ・ヒトラーはソ連への侵攻作戦に約310万人を投入した。西側には約90万人しか残していない。西側から攻められたらひとたまりもなかったのだが、そうしたことは起こらなかった。西部戦線でドイツ軍と戦っていたのは事実上、レジスタンスだけだ。
イギリスとアメリカが動き始めたのは、ソ連へ攻め込んだドイツ軍が1943年1月にスターリングラードでの戦いで敗北した後。その年の7月にアメリカ軍とイギリス軍はマフィアの協力を得てシチリア島へ上陸した。レジスタンスの主力はコミュニストだが、シチリア島でもコミュニストの影響力は大きかった。コミュニスト対策でマフィアと手を組んだのである。それ以降、マフィアはアメリカの情報機関と同盟関係にある。
同じ頃、アメリカとイギリスの情報機関はレジスタンス対策で「ジェドバラ」というゲリラ部隊を編成する。戦後、その人脈が軍の特殊部隊やCIAの破壊活動部門を作り上げた。1949年に結ばれた条約に基づいて作られた「NATO(北大西洋条約機構)」の主要な目的はヨーロッパを支配することであり、加盟国には破壊活動を行う秘密部隊が編成されている。中でも有名な部隊がイタリアで爆弾テロやを繰り返し、クーデターを試みた「グラディオ」だ。
アメリカやイギリスの金融資本から資金を提供されていたナチスがソ連へ攻め込み、その時にイギリスは動かなかった。そのほかにも米英の私的権力とナチスとの連携を示す事実は少なくないが、アメリカやイギリスを「善玉」ということにしたい「親米派」はこれを認められない。
この幻影を世界に広めるためのプロジェクトをCIAは第2次世界大戦が終わって間もないころから行っている。「モッキンバード」だ。このプロジェクトについてデボラ・デイビスが『キャサリン・ザ・グレート』という本で詳しく書いている。このプロジェクトを指揮していたのは4人で、第2次世界大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、ダレスの側近で戦後に極秘の破壊工作機関OPCを率いていたフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine the Great,” Harcourt Brace Jovanovich, 1979)
ワシントン・ポスト紙はCIAと緊密な関係にあるわけだが、その新聞の記者としてウォーターゲート事件を取材したカール・バーンスタインは同紙を辞めた後、1977年に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌で書いている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)
また、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出し、世界各国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。ウルフコテは2017年1月、56歳の若さで心臓発作のために死亡した。
そうした情報操作はソ連が消滅した後、1990年代から露骨になる。ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビアを先制攻撃する前にも偽情報を流していたが、シリアの場合は有力メディアの「報道」から事実を探す方が難しくなる。
例えば、リビアの体制転覆に成功した後、アメリカなど侵略国はシリアへ戦力を集中させる。その際にダーイッシュ(ISIS、ISIL、IS、イスラム国とも表記)の種を蒔き、DIA(国防情報局)から危険だと警告されているが、この事実は無視された。この話を取り上げると、ダーイッシュを作り上げたのがバラク・オバマ政権だと知らせることになる。その政策を警告したマイケル・フリン中将を有力メディアは後に攻撃したが、それも難しかっただろう。
2012年5月にシリア北部ホムスで住民が虐殺されたが、西側の政府やメディアは政府軍が実行したと宣伝する。イギリスのBBCはシリアで殺された子どもの遺体だとする写真を掲載したが、これは2003年3月にイラクで撮影されたもの。オーストリアのメディアは写真を改竄し、背景を普通の街中でなく、廃墟に変えて掲載したことも発覚した。
西側の有力メディアは自分たちで取材せず、現地の情報源を使う。嘘が発覚した場合、責任を回避することが目的だろう。そうした情報源のひとりがシリア系イギリス人のダニー・デイエムだったが、デイエムの「情報」が作り話だということが発覚する。撮影スタッフと演出の打ち合わせをしている場面が2013年3月にインターネット上へ流出したのだ。
2012年の前半、メルキト東方典礼カトリック教会の修道院長、フィリップ・トルニョル・クロがシリアへ入って調査、その報告をローマ教皇庁の通信社が伝えている。
この人物は「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている」と報告していた。虐殺しているのは外国から侵入したサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)の戦闘員で、資金や武器はカタールやサウジアラビアから得ているとしていた。これは事実だが、アメリカ、イギリス、フランス、トルコなども侵略に加担していた。
フィリップ・トルニョル・クロの報告は2012年のシリアだけでなく、現在の世界情勢全てに当てはまる。西側の有力メディアが流している話を鵜呑みにすることは犯罪的である。
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