http://www.asyura2.com/21/kokusai30/msg/206.html
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1月25-29日に完全オンラインで開催されたダボス会議で主導的な基調演説をした
のは中国の習近平主席だった。このバーチャル会議で、習近平の次に注目された
のはロシアのプーチン大統領だった。そしてその次に、インドのモディ首相や、
EUの独メルケル・仏マクロン・EU委員長フォンデアライエンのトリオ。その
次のレベルで演説が注目されたのが、南アフリカのラマポーザ大統領、イスラエ
ルのネタニヤフ首相、日本の菅首相、韓国の文在寅、シンガポールのリシェンロ
ン首相だった。その他、イタリアやスペイン、ギリシャといった欧州諸国、ガー
ナやアルゼンチンなど中南米アフリカ諸国などの首脳もバーチャル演説を配信し
た。これが、今回のバーチャルダボス会議での国家指導者群の序列である。
http://www.wsj.com/articles/xi-jinping-wows-them-at-davos-11611617879
Xi Jinping Wows Them at Davos
http://www.weforum.org/agenda/2021/01/whos-who-davos-agenda/
These are the global figures taking part in digital Davos
ダボス会議は、今の国際社会を代表する会議である。世界中の財界人や政治家、
固い業界の有名人たちが参加を切望してきた。ダボス会議での序列は、世界の政
治的な序列でもある。今回から、中国が世界のトップになった。そして、それに
続くのがロシアやインド、南アというBRICS諸国。その横にEUがいる。米
国から中国の傘下に移りつつある東アジアの日韓やシンガポも呼ばれた。これは
まさに、08年のリーマン危機後に示された多極型世界の構図だ。
http://neonnettle.com/news/14010-chinese-communist-party-leads-at-davos-pushes-the-great-reset-
Chinese Communist Party Leads at Davos, Pushes 'The Great Reset'
今回のダボス会議のもうひとつの画期的な特徴は、誰が欠席したか、である。最
大の欠席者は、米国と英国の首脳だった。米英だけでなく、アングロサクソン諸
国として米英の親戚筋であるオーストラリア、ニュージーランド、カナダの首脳
も欠席した。戦後の世界を率いてきたファイブアイズのアングロサクソン5か国
の首脳は、全て出てこなかった。欠席の理由は語られていない。米国はバイデン
政権ができたばかりで出席する余裕がなかった、という考えは間違いだ。今回の
会議は完全オンラインなので、首脳が執務室や官邸の部屋で、空き時間に、側近
が作った原稿を読んで録画したものを会議主催者のWEFに送信すれば良いだけ
だ。とても簡単。ユーチューバーなら一人でやれることだ。それなのに、戦後の
世界を率いてきたアングロサクソン5か国の首脳は誰も出てこなかった。米国か
らは、温暖化対策担当のジョン・ケリーが温暖化対策について演説した。だが、
ケリーはバイデンの代わりでない。あくまで温暖化担当として話をした。
http://www.state.gov/remarks-at-world-economic-forum-davos-2021/
Remarks at World Economic Forum, Davos 2021
今回のダボス会議では中国が主役で、ロシア、インド、南アのBRICS諸国が
準主役だ。BRICSの5か国うち、ブラジルはボルソナロ大統領がトランプび
いきで、BRICSや中国と距離を置いているので不参加だった。だが他の4か
国は、ふだん中国と仲が悪いインドも含め、今回のダボス会議に出てきて、協調
的な世界を作ることについて演説した。BRICSは、米英覇権を代替する多極
型世界を構築する方向性の5つの非米大国の集まりだ。今のブラジルのように消
極的な国もあるし、インドと中国は対立しているが、それでも米英覇権がドル崩
壊などで崩れたとすると、その後の世界を構成できる5か国だ。ここにEUと、
単独覇権でない北米が入ると、多極型世界になる。今回のダボス会議に、米英な
どアングロサクソン諸国が欠席し、その代わりに、非米大国群であるBRICS
が中国を筆頭に主役を演じたことは、世界が米国覇権体制から多極型体制に転換
したことを物語っている。
http://tanakanews.com/201204reset.htm
「大リセット=新常態=新しい生活様式」のからくり
ダボス会議には国家の指導者たちのほかに、世界の大企業経営者群、国連など国
際機関の指導者群、欧米などのNGO活動家群も参加する。そのため、国家でな
く企業やNGOも重要でないかという反論がありうる。「今の世界を支配してい
るのは米国や中国といった国家(政府)でなく、グーグルやアマゾン、マイクロ
ソフトといった米国製のネット大企業群だよ。国家しか見ていないあんたは頭が
古いね」と、したり顔でいってくる人々もいる。ネット大企業群は、米諜報界
(=軍産複合体、深奥国家)の主要部分を握る勢力になっているのは事実だ。
だが、中国やロシアは、米諜報界に入り込まれていない勢力として台頭している。
ネット大企業群は、既存の米国覇権の世界体制を牛耳っているが、今回のダボス
会議は戦後の米国覇権を体現してきたアングロサクソン諸国が全員不参加だ。ネッ
ト大企業群の経営者たちは今回のダボス会議に参加して演説もしているが、米国
覇権勢力は全体として今回のダボス会議で舞台の袖の方に追いやられ、主役を中
国主導のBRICSに奪われている。日韓も、米国傘下の国としてでなく中国傘
下の国としての出場だ。ネット大企業は、米国覇権の後ろ盾がないと、政治的な
強さを失い、ただの企業群になってしまう。
http://tanakanews.com/210108trump.php
トランプ排除やコロナは米欧覇権とエスタブ支配を破壊する
米欧や日本など「自由主義諸国」では、企業が国家から完全に独立している。だ
が、中国や、その他の中国型の権威主義の新興諸国では、国家が企業を支配して
いる。最近の中国はとくにそれが強く、習近平独裁の中共が、党や政府をしのぐ
力を持ちかねない「中国製ネット大企業」のアリババに独禁法違反の罪(濡れ衣?)
をかぶせて解体し弱体化している。今後の中国では事実上、中共が唯一最大の
「企業」であるといえる。中国の主要企業にはすべて共産党の細胞があり、党が
経営を監督する「党営企業」だ。中国ではNGOも党営だ。香港などに、そうで
ないNGOがあったが、国家反逆勢力として潰されつつある。学者や言論人も党
の傘下で、そうでない人々は反逆者として潰される。ダボス会議や国連のような
国際社会の場で、中共(やその他の社会主義、全体主義、権威主義諸国の政権党)
は、政府にも企業にもNGOにも化けられるゾンビだ。政府と企業NGOが、
往々にして利害の相反する勢力として国際社会に登場する欧米日の自由主義諸国
と対照的だ。
http://tanakanews.com/200922reset.php
近づく世界の大リセット
中共は、アマゾンやグーグルなどの米ネット大企業群の機能を代替できるものを、
すでに国内に持っている(対照的に、日本や欧州などは米ネット企業群の支配
から離脱できない)。中共は、アリババの解体に象徴されるように、国内ネット
機能を自分の権力下に押し込めている。トランプの米中経済分離策などのおかげ
で、中共は、米覇権領域の経済システムから独立した「非米経済圏」を世界に確
保している。ドルの代わりに人民元で国際決済できる。中国とその傘下の国々は、
経済面でも米国覇権に依存する必要がない。軍事的にも、中露が力を合わせれば
米国に負けない。米国から経済制裁や米中分離、冷戦を起こされても、中国は
非米経済圏を率いて一帯一路に象徴される「もうひとつの世界経済システム」を
運営して世界的に繁栄していける。コロナの閉鎖状態のおかげで、米英の諜報機
関が中国に入り込んで政権転覆を画策することもできなくなった。
http://www.washingtontimes.com/news/2021/jan/9/great-reset-corporate-communism-and-its-coming-ame/
Great Reset is corporate communism, and it's coming to America
米国は昨秋の大統領選以降、国内政治対立が激化し、政治社会的な不安定が増し
ている。この状態はずっと続く。コロナ大恐慌への経済対策で財政赤字が増え続
け、QEが行き詰まってドルが崩壊することがいずれ不可避だ。米国は弱体化し
つつある。対照的に、中国は習近平の独裁で安定している。中国は世界の諸大国
の中で唯一、経済成長している。コロナは米欧経済に大打撃を与える半面、中国
と、その傘下の日本など東アジア諸国にはあまり打撃を与えない。コロナの愚策
な都市閉鎖は、米欧だけを自滅させ、相対的に中国の台頭を加速させる。「中国
はいずれ経済破綻する」という日本人が好む予測は、出来の悪い妄想だ。国際社
会では今後ずっと中国が台頭し、米国が衰退する状況が続く。今回のダボス会議
は、こういった米中逆転的な覇権の状態を踏まえて、中国に主導役をやらせた感
じだ。ダボス会議は今後もずっと、中国が主導役をやるだろう。国連も同様だ。
http://tanakanews.com/210121reset.htm
大リセットで欧米人の怒りを扇動しポピュリズムを勃興、覇権を壊す
覇権放棄屋のトランプから(不正に?)政権を奪ったバイデンは、米国の覇権体
制を蘇生したいと考えている。その目標のためには、バイデンがダボス会議の主
役として基調演説し、会議の主催者WEFが立案した「大リセット」のシナリオ
に沿った話を展開すべきだった。大リセットのシナリオは(表向き)「人類が仲
良くしてコロナ危機を乗り越え、温暖化対策など地球環境に配慮した、格差や差
別のない協調的な世界を作っていくこと」を語っており、バイデン政権が掲げた
(表向きの)目標や戦略と齟齬がない。習近平でなく、バイデンがダボス会議の
主役として基調演説をしていたら、トランプからバイデンに代わった米国が覇権
国の座に戻ったことの象徴として世界に認めてもらえたはずだ。だが実際にWEF
が立案した大リセットのシナリオに沿ってダボス会議の基調演説を行ったのは、
中共の習近平だった。これは中国が世界の頂点に立ったことの象徴だった。習
近平は中国語で演説し、中国では全人民がそれを見るよう奨励された。
http://tanakanews.com/210117bank.php
米大都市の廃墟化・インフレ激化・銀行やドルの崩壊
習近平は演説の中で、人類が仲良くできないのは米国がバイデン政権になっても
中国を敵視し、単独覇権をふりかざして(イランやロシアなど)非米諸国を経済
制裁し続けているからだ、という趣旨を展開した。バイデンが習近平を押しのけ
て主役になって基調演説していたら「(中露イランなど)問題がある国も含め、
世界が協調してコロナを乗り越えて事態を改善していこう」とか、米国=善・中
露=悪の構図を喧伝できたのに、米国が欠席して習近平が主役をやるのを黙認し
たために、正反対の、米国=悪・中露=善の構図が喧伝されてしまった。
http://www.investmentwatchblog.com/you-know-we-are-screwed-when-xi-jinping-is-giving-an-opening-speech-at-davos-2021-talking-about-the-great-reset/
You know we are screwed when Xi Jinping is giving an opening speech at Davos 2021
バイデンはなぜダボス会議に出なかったのか。それは多分、会議主催者のWEF
が、主役として基調演説するのは習近平だと決めたことをくつがえして主役をバ
イデンに替えることを拒否したからだ。バイデンが出ると言ったら、ダボス会議
の事務局は、米中が仲良く共同主催する構図にするつもりだったかもしれない。
だがバイデン政権は、米単独覇権体制を蘇生したい。ブリンケン国務長官が、そ
のような趣旨のことを言っている。バイデンの米国は、中国が米国と肩を並べて
いる、もしくは中国が米国より上段にいる状態の国際会議に出席するわけにいか
ない。
http://tanakanews.com/210131biden.php
トランプの自滅的な中国敵視を継承したバイデン
ドイツやEU上層部も、今回のダボス会議の開催前、バイデンに対して参加を要
請していたようだ。ドイツのメルケル首相は、ダボス会議での演説の中で「米国
は(中露などを敵視せず)協調姿勢に戻ってほしい」という趣旨を述べている。
メルケルは対米従属で軍産傀儡の人だが、米国の覇権衰退と中国の台頭を見て、
米国が中国を押しのけて単独覇権国であり続けるのは無理だと思っているのだろ
う。米国が覇権を蘇生するには、まず中国と和解し、ある程度多極型の覇権構造
を容認するしかない。メルケルなどEUは、ダボス会議事務局とともにそう考え
て、バイデンになった米国がダボス会議に参加して、中国の台頭と多極化を容認
しつつ、米国覇権の蘇生を演出してほしかった。だが、米国はそのシナリオを拒
否した。英国や豪州などアングロサクソン全体が米国の欠席に追随した。
http://www.zerohedge.com/economics/xi-warns-globe-biden-against-new-cold-war-davos-opener-pundits-tout-great-reset
Xi Warns Biden & Globe Against 'New Cold War' In Davos Opener As Pundits Tout "Great Reset"
ダボス会議は、EUが中国を呼んで世界の主役に据え、中国主導のBRICSと
EUが仲良くし、そこに日韓など中国傘下に移った国々も入るという「非米同盟」
の会合になった。この新たな隠然同盟体は国連を牛耳っており「新たな連合国」
と呼べる。対照的に、ダボス会議を欠席した米英アングロサクソン諸国は負け組
であり、「新たな枢軸国」である。世界は第2次大戦の状況から、75年後の今、
見事に逆転した。
http://tanakanews.com/190708eurasia.htm
ユーラシアの非米化
今回のダボス会議は完全バーチャルだったが、今年8月には対面式のダボス会議
をシンガポールで開く予定だ(コロナで再延期される可能性が大だが)。会議事
務局は、シンガポール会議でバイデンと習近平が会談して米国と中国が和解する
シナリオを構想し、発表している。だが今回、単独覇権体制の再建に固執して中
国と同格で肩を並べることを拒否し、ダボス会議を欠席したバイデンが、6か月
後の8月に、中国と和解しつつ多極化したダボス会議に参加する可能性があるの
か??。バイデンの米国が、単独覇権国でなく多極型世界の「極」の一つに成り
下がることでかまわないなら、今回のダボス会議に出てきていたはずだ。
これからの6か月で、中国はさらに国際台頭を進めるだろう。米国は、国内の政
治対立やコロナ対策に追われ、国際的な覇権蘇生の根回しがほとんどできないと
予測される。下手をしたら金融危機が再燃する(米国の金融市場は最近、おかし
な動きが加速している)。米国は、覇権が低下するほど、多極型の新たな覇権体
制内での優位が得られなくなり、多極型に参加するより孤立を許容して様子見し
た方が良いと考える傾向を強める。もしくは「中国はいずれ崩壊する」とか「中
国を制裁して崩壊させる」といった妄想を軽信し続け、単独覇権に固執し続け、
しだいに世界から相手にされなくなっていく。バイデンが習近平との和解に踏み
出す可能性は、今のところとても低い。米中和解がない以上、中国の台頭と世界
の非米化が進行する。
ダボス会議では「大リセット」が語られているが、大リセットは表向きの意味と
裏の意味が全く違う。今回のダボス会議では表向きの話(市民社会の融和や差別
の解消、コロナの乗り越え方)だけが論じられ、話の内容は建前論ばかりでほと
んど無意味なものだった。何が話されたかでなく、誰が主役で誰が欠席したかが
重要で、それが大リセットの裏の意味(米国覇権の崩壊と多極化、中国の台頭)
を示すものだった。
この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/210205davos.htm
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