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2022年1月15日 22時30分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/154453
【パリ=谷悠己、ロンドン=加藤美喜】新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」がまん延中の欧州で、インフルエンザのように一定の地域や周期で繰り返し発生する「エンデミック」への移行を見据えた動きが出始めている。オミクロン株はワクチン接種者の重症化例が少ないとされるためだ。各国の規制策にも経済活動や学校の維持を優先する方針が目立つが、世界保健機関(WHO)は慎重な姿勢を崩していない。
「新型コロナがパンデミックからエンデミックに変わる可能性を評価する時に来ている」。ワクチン接種率の高いスペインのサンチェス首相は10日のラジオ番組でこう語った。11日には欧州連合(EU)欧州医薬品庁の幹部が記者会見で「人々の免疫力が高まっており間もなくエンデミックに近いシナリオへ移行するかもしれない」と述べた。
◆流れつくった英国
先月下旬からオミクロン株が急拡大した欧州諸国。オランダが都市封鎖に踏みきりベルギーやデンマークも冬休みを拡大し学校を閉鎖するなど従来型の厳しい規制策を取ったが、対策の柱をワクチン追加接種の促進に置いた国の方が多い。
流れをつくったのは、いち早くオミクロン株がまん延しながら行動規制の強化を避けてきた英国の対応だ。
英保健当局は昨年末、同株感染者の入院リスクがデルタ株に比べ最大7割低いとの初期データ分析を公表。ジョンソン首相は今月4日に新規感染者が21万人超と過去最多に達した時にも「このウイルスと共存する方法を見つける」と強調した。14日時点で12歳以上が約63%と、欧州でも特に高いワクチンの追加接種率が背景にある。
新規感染者数は4日をピークに下降気味で、14日には10万人を切った。イングランドでの規制は交通機関でのマスク着用や大型イベントでのワクチン接種証明提示などにとどまり、順調にいけば今月下旬にはさらに緩和される見込みだ。
◆規制緩和に弊害も
一方で、規制緩和の弊害も出ている。30万人台の新規感染が続くフランスでは学校が感染源に。仏政府は相次ぐ学級閉鎖が経済活動の停滞につながる恐れから、感染者が出た学級の児童らが従来のPCRや抗原検査ではなく自宅でのセルフ検査で陰性を証明すれば登校できる制度に変更。教員らが「安全の軽視だ」と反発し、13日に大規模なストライキが起きた。
「授業よりコロナ対応に追われてばかりだ」。パリでのデモに参加した高校教諭エティエンヌさん(27)は憤るが、仏政府は教員への高機能マスク提供などの対応強化によって規制緩和は維持する考えだ。
規制緩和に動く西欧諸国とは対照的に、ワクチン接種率が低い東欧諸国ではオミクロン株の感染拡大で医療体制が逼迫ひっぱくする危険性は依然高い。WHOの技術責任者はツイッターで「新型コロナはエンデミックではない。警戒を緩める時ではない」と警鐘を鳴らした。
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