混沌としていくヨーロッパからの提言
世界には、五大医学誌と呼ばれるものがありまして、その中でもランセットは広く知られている医学専門誌だと思われます。
そのランセットの 11月20日号に、「コロナの感染拡大は、ワクチン未接種者とは関係がない」とする記事が掲載されていました。
以下にあります。
記事の主旨は、「差別や非難そして社会的分断が、科学的な見解によって広がるようなことは良くない」という主張です。
いわゆる五大医学誌の中では、医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル (BMJ)が、最初にファイザー社ワクチンに異議を唱えていまして、臨床試験書の段階で、「問題が多すぎる」と指摘していました。
以下は、今年 1月の記事ですが、ファイザー社 mRNAワクチンの臨床試験の結果からは、「有効率が最低で 19%にまで落ちる」という解釈もできることを伝えていました。
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルは、その後も、
「製品ロットによる mRNA の安定性が著しく異なる」
ことを提起していました。
ロットにより最大で 45%のワクチンが、完全な状態ではない、つまり「まともに抗体を作らない mRNA 」であることを問題としていました。
半分が効果のない(しかし害もあまりない)ものであるという可能性が高いという、いわゆる「水ワクチン問題」です。
以下の記事で取りあげたことがあります。
この水ワクチン問題は、日本の厚生労働省部局によるモデルナ社ワクチン特例承認報告書にも出てきますので、ファイザー社、モデルナ社共にワクチンにその問題があるということなのかもしれません。
モデルナ社ワクチンの特例承認報告書については以下の記事で取りあげています。
厚生労働省部局の特例承認報告書は以下にありますが、その 10ページの「 2.R.4 製剤の不純物等の管理について」という箇所にそれについての記載があります。
COVID-19 ワクチンモデルナ筋注 武田薬品工業株式会社 特例承認に係る報告書
この水ワクチン問題は置いておくとして、今回ランセットの記事で指摘されたのは、各国当局などが言い続ける、「感染拡大は、ワクチンを接種していない人たちのせいだ」というのは、データ上からは「それはない」ということを書いています。
それどころか、
「感染を拡大させているのは、ワクチン接種者である可能性がある」
ことにふれています。
書いたのは、ドイツの衛生環境医学研究所と、グライフスヴァルト大学医学部の疫学者であり衛生および環境医学部の准教授であるギュンター・カンプ (Günter Kampf)さんという方です。
ランセットに掲載された記事そのもはの長いものではないですが、ランセットのこの号が出る以前に、カンプ准教授は、ウェブ上でこの論文に記したことについて、すべてのデータを添えて、一般の方にもわかりやすく詳細にそれを伝えていたことを知りました。
今回はその論文をご紹介いたします。
まあ……そこで書かれていることについては、今までの経緯の中で、私たちが十分に知ってきていたようなデータなのですけれど、それでもご紹介しようと思いましたのは、「ランセットに掲載された内容だから」です。
これは、ランセットが優れた医学誌だから、ということではなく、
「五大医学誌に次々とワクチンとその効果についての嫌疑が出始めている」
ということです。
医学誌ランセット側から見れば「その記事の掲載を認めない」という方向はあったはずです。
しかし「掲載された」。
このあたりに、現在の世界の方向性が…まあ、楽天的すぎる考えかもしれないですが、少なくとも「医学の権威筋から変化していく」という方向に少しでも進んでいけば、今の医療サイドの認識全体が少しでも転換していくこともあり得るのかなと思いました。
日本も含めて世界中の医療関係者の中には、このワクチンについて、「本当に効果的だと思っている方」もいらっしゃるでしょうし、あるいは、最初から嫌疑を持ってらっしゃった方もいると思います。
しかし、もしかすると多いかもしれないと思うのは、
「最初はその効果を信じていたが、次第に信じられなくなってきた」
という医療関係者も多いのではないかなとも。
実際のところはわからないですけれど。
いずれにしましても、その論文をご紹介させていただきます。
論文では、データはすべてにおいて参考文献や参考資料データが添えられていますが、インターネット上にある参考文献については、すべてリンクいたします。
ここからです。
これはワクチン未接種によるパンデミックではない
This Is Not a Pandemic of the Unvaccinated
GÜNTER KAMPF 2021/10/29
政治家たちの一部が「ワクチン未接種者によるパンデミック」という概念を語ることがある。
しかし、二度の完全なワクチン接種をされた個人でさえも、高いウイルス量を抱え、 SARS-CoV-2 を拡散し、重篤で致命的な Covid-19 を引き起こす可能性があり得る。
疫学的状況の誤った狭い見方のために、社会的な結束が危険にさらされるべきではない。
中国の資料によると、パンデミックの初め、中国の多数の Covid-19 患者たちは差別されていると感じていた(79.8%が感じていた)。感染者は他人への脅威と見なされていた。しかし、ワクチン接種が利用可能になると、おそらくワクチン接種が安全であると感じたためなのか、脅威と見なされる頻度は低くなったことが示されている。
しかし現在、ワクチンを接種していない人々は、ますます感染拡大のせいにされている。
2021年7月、米国のバイデン大統領は次のようにコメントした。「見てほしい、私たちの唯一のパンデミックはワクチン未接種者の中にある」(AP通信の報道)。
ドイツのシュパーン保健相は 2021年8月に、以下のように述べた。「現在ワクチン未接種者のパンデミックが発生している。集中治療室にいる Covid-19 患者の 90%から 95%はワクチン接種を受けていない人たちだ」。そう述べた(報道)。
オーストリアの首相セバスティアン・クルツ氏は、2021年9月にドイツの保健相と同じ言葉を使用した(報道)。
ドイツのテレビチャンネル ZDF でさえ、この言葉をニュースの見出しとして使用していた。高位の政治家たちが公の場で使用するためにこの単語の選択を発表した後、個々の科学者たちはしばらくその意見に従った。
ゴールドマンは最近、ワクチン未接種者たちが変異種の貯蔵庫として機能し、ワクチン未接種者たちがワクチン接種者たちを脅かしていると非難した。彼がワクチン未接種者たちを「ウイルス変異体を生成し続けるための繁殖地」と説明し、「封鎖とマスクが再び必要になる」と推測した。「多くのワクチン接種を受けていない人たちがいるため、特に脆弱な人は死に至るだろう」と(米国科学アカデミー紀要 2021; 118)。
これらは、社会の一部に対する科学者たちからの深刻な告発だが、しかし、彼らが述べていることは正当化されるのだろうか。
パンデミックとは何か?
国際疫学会(IEA)の疫学辞典(Dictionary of Epidemiology)は、パンデミックを「世界中で、または非常に広い地域で発生し、国際的な境界を越え、通常は多数の人々に影響を与えるエピデミック」と定義している。
この定義が、ワクチン未接種者、高齢者、肥満の人々など、人口の特定の部分に限定されたことはない。したがって、「ワクチン未接種者のパンデミック」という用語は、疫学的または科学的な用語ではなく「政治的な用語」でしかない。
「ワクチン未接種者」への非難の増加
ドイツのワクチン未接種者の市民たちは、社会の他の部分からの非難と分離の増加を経験している。
多くの連邦州では、レストランで、Covid-19 に陰性であるとテストされた場合でも、ワクチン未接種の人々が屋内で食べることを禁止することを許可する法的根拠が確立されている。
ドイツの一部の都市では、地方自治体が主催する文化イベントへの参加はワクチン未接種の人々には許可されていない。ただし、ワクチンを接種した人たち、および感染から回復した市民は、社会的距離を保つ必要はなく、マスクを着用する必要もない。
ドイツ当局の意思決定者たちは、ワクチンを接種した人たちが感染源になることはないと実際に考えている。ニーダーザクセン州とヘッセン州の連邦州では、州政府は現在、検査結果が陰性であってもワクチン未接種者の買い物をスーパーマーケットが拒否することを許可している。
ワクチン接種は部分的な保護しか提供しない
Covid-19 ワクチンの第 3相試験は、ワクチン接種が Covid-19 の部分的な防御のみをもたらし、完全な防御をもたらさないことを明確に示している(ランセット、N Engl JMedなど 4つの資料より)。ワクチン接種された人たちが部分的な保護のみの疫学的証拠を提供する報告がますます公開されている。
マサチューセッツ州では、2021年7月のさまざまなイベントで合計 469件の新しい Covid-19 症例が検出され、そのうち 346件が二度のワクチン接種あるいは一回のワクチン接種を受けた人で発生した(74%)。
これらの影響を受けた人たちのの 274人は症候性だった(79%)。Ct値はすべてのグループで比較的低く(中央値:21.5〜22.8)、完全にワクチン接種された場合でもウイルス量が高いことを示している(CDC の医学誌 MMWRより)。
これまでのブレイクスルー感染の最大の評価は米国からのものだ。
そこでは、2021年4月30日までに合計 10,262件の Covid-19 症例がワクチン接種を受けた個人で報告され、そのうち 27%が無症候性、10%が入院、 2%が死亡した(CDC の医学誌 MMWRより)。ドイツでは、完全にワクチン接種された(ブレイクスルー感染)の症候性 Covid-19 の割合は、2021年7月21日以降毎週報告されており、60歳以上の患者では 16.9%だったが(ロベルトコッホ研究所)、この割合は週ごとに増加しており、2021年10月20日には、ブレイクスルー感染の割合が 57.0%となった。これは、感染源の可能性として二度の完全なワクチン接種を受けた場合との関連性が高まっていることの明確な証拠を提供している。
英国からも、二度の完全にワクチン接種された中での Covid-19 症例の数に関する同様の発見が報告された(英国健康安全保障局)。
もう 1つの例は、ドイツのプロサッカーチームで、最近 12件の新しい症例が検出された。一部のプレーヤーは、Covid-19 の関連する症状を示した。10人のプレーヤーがワクチン接種を受け、そのほとんどが二度の完全なワクチン接種を受けており、1人だけがワクチン接種を受けていなかった。サッカークラブは当惑し、発生を実際に説明することができなかった。
公開討論は、ワクチン未接種の 1人のプレーヤーがウイルスの蔓延の原因であると疑われる方法で行われた。しかし、彼はすべてのプレイヤーたちの中で「最もウイルス量が少なかった」。彼の 2つのサンプルでは、未接種のプレーヤーからはウイルス RNA はほとんど検出されなかったため、接種した他のプレーヤーが発生の原因である可能性がはるかに高いことが示唆された(報道)。
最近、ドイツのミュンスターで、完全にワクチン接種されたか、Covid-19 から回復した 380人の集団感染が発生した。彼らはクラブに参加しており、少なくとも 85件の新しい Covid-19症例が発生した(資料)。
ワクチン接種レベルが異なるさまざまな米国の郡における新しい Covid-19 症例数に関する最近のデータは、二度の完全にワクチン接種された人口の割合と新しい Covid-19 症例との間に識別可能な関係がないことを示している。
完全にワクチン接種された人口の割合が最も高い上位 5つの郡(99.9〜84.3%)のうち、米国疾病予防管理センター(CDC)は、そのうちの 4つを「高」感染郡として特定している(European Journal of Epidemiology. 2021:1-4)。
イスラエルでは、16人の医療従事者たち、23人の曝露した患者たち、2人の家族が関与する Covid-19 の院内感染が報告された。感染源は、Covid-19 を持っていると診断された二度の完全なワクチン接種をした患者だった。
すべての曝露した個人( 151人の医療従事者と 97人の患者)のワクチン接種率は 96.2%だった。完全にワクチン接種された 14人の患者が重症または死亡し、ワクチン未接種の 2人の患者は軽度の疾患を発症しただけだった(EuroSurveill。2021; 26)。
Covid-19 感染症の完全ワクチン接種を受けた人は、半数の症例で症状の発症後 6〜7日で感染性 SARS-CoV-2 を排出することができる(Clinical Infectious Diseases)。
完全にワクチン接種された Covid-19 感染者からの感染も報告されている(EuroSurveill)。
CDC は、デルタ変異体がワクチン未接種者とワクチン接種者の両方の個人で同じ高レベルのウイルスを産生するように見えることを報告した(CDC)。
ワクチン接種を受けた人々は、 SARS-CoV-2 の蔓延を加速させる可能性さえある
ワクチン接種の利点の 1つは、Covid-19 の重度の経過が起こりにくくなるため、ワクチン接種を受けた個人の感染症の症状が軽度になることだ。したがって、ワクチン接種を受けた患者の中には、ワクチン接種なしで重度の症状を経験したであろう軽度の症状しか持たない人もいる。
ワクチン接種を受けた人々は通常、よりリスクを冒す方法で行動するようになり、より多くの外出先を持ち、コンサートやパーティー等に頻繁に赴く。ドイツではワクチン接種者は検査されず、隔離もされない。感染した場合も、症状がまったくないか軽度であることが多く、感染を認識しないか、認識が非常に遅くなる。
結果として、ワクチン接種された人々の間で予想される感染の波はほとんど見えないかもしれない。そのため、ドイツでの感染が接種者から現在 60歳以上のワクチン未接種の 340万人に波及することが懸念されている(Heinze S. Alexander Kekulé)。
アストラゼネカ社ワクチン AZD 1222を用いた第3相試験では、無症候性の Covid-19 症例の割合が、ワクチン接種を受けた研究参加者とワクチン接種を受けていない研究参加者の両方で類似していることがすでに示されており(1.0%対1.0%)、感染の潜在的な原因としての無症候性のワクチン接種を受けた個人の関連性が強調されている(ランセット。2021; 397)。
ワクチン接種レベルが高い国でのブレイクスルー感染の割合の増加は、さらに、コロナウイルスがワクチン接種済みの人たちと非ワクチン接種の人たち両方で増殖することを示している。
ワクチン接種は変異に寄与する可能性がある
バクテリアのほうの世界では、適者生存のダーウィンの原理からは、抗生物質と殺生物剤によって引き起こされる選択圧が耐性を高め、最終的に細胞がかなり敵対的な環境で生き残ることを可能にする細胞適応応答をもたらすことが知られている(KampfG) 。
この原則がウイルスに適用された場合、Covid-19 の部分免疫でワクチン接種されたほうが、ヒトの免疫応答を少なくとも部分的に回避できる変異体の進化に貢献した可能性がある(N Engl JMed。2021; 385)。ワクチンが広く展開される前でさえ免疫回避変異体が出現していたことを考えると、ワクチンまたはワクチン展開戦略を免疫回避の主要な推進力として関係づけることは困難だ(N Engl JMed。2021; 385)。
そのため、ワクチン接種を受けた感染者も亜種の貯蔵庫となり、それによってパンデミックの拡大に影響し続ける可能性がある。
汚名の影響の副作用
人々に非難を着せることは、ひどく信用できないか、望ましくない。それは、分離、切り下げ、および差別につながり、ラベル付け、ステレオタイプ化、および偏見の社会的プロセスとなる。
これはまた、助けを求めることへの障壁かもしれない。人々は、非難を避けるために、診断、予防、および治療などのサービスを使用することができない。 したがって、偏見や差別に関連する恐怖は、公衆衛生を著しく損なうことになる。影響を受けた人、その家族、健康プログラム、社会の生活の質に悪影響を与える可能性がある。
アムネスティは、政策、法律、または待遇において不当な区別がなされたために、人が他人と平等に人権またはその他の法的権利を享受できない場合に差別が発生すると書いている。この原理は、現在の世界の一部の地域では「ワクチン未接種者」に該当するようだ。
結論
ワクチン接種者は重篤な疾患のリスクは低いが、それでもパンデミックの関連部分だ。
したがって、「ワクチン未接種者のパンデミック」と話すのは誤りだ。しかし、この説明は、一方ではワクチン接種への意欲をさらに高め、他方では不便な措置のために接種を受けていない人々を非難するために、さまざまな国の政治家たちにとって歓迎すべきメッセージのようだ。
結果として、異なる視点の代表者たちの、すでに時には困難な対話をさらに複雑にし、その後、社会的分裂の増加につながる可能性がある。
歴史的に、米国とドイツの両方が、肌の色や宗教のために人口のサブグループに汚名を着せるという悪い経験をしている。
そのため、「ワクチン未接種者のパンデミック」という用語は、高レベルの政治家たちや科学者たちによって使用されるべきではない。社会的結束は高い価値であり、疫学的状況の誤った狭い見方のために社会的結束が危険にさらされるべきではない。