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「人間性を破壊するロボトミー手術がノーベル賞をとった理由」
(川勝康弘 ナゾロジー 2021/10/15)
https://nazology.net/archives/98256
前頭葉の神経を脳のその他の部分から切り離すロボトミー手術。
現在では禁忌とされていますが、開発された当時は極めて先進的な医療と考えられており、開発者のモニス氏は1949年のノーベル生理学賞・医学賞を受賞しています。
しかし当時であっても、ロボトミー手術を受けた患者の多くに、人格・感情・意思・思考が奪われるという副作用が知られていました。
にもかかわらず、ロボトミー手術は20年以上にもわたり続けられてきました。
いったいどうして、ロボトミー手術は止められなかったのでしょうか?
■ ノーベル賞を受賞したロボトミー技術はいかにしてうまれたか
脳に物理的な影響を与えて精神状態を変化させる、という試みは、古くから行われてきました。
記録に残る最も古いものは、1888年にスイスの医師、ブルクハルトによって行われたものです。
ブルクハルトは慢性的な精神病にある6人の患者に対して頭蓋骨を切開し、大脳皮質の一部を取り除きます。
結果、5日後に1人の患者が死亡したものの、手術によって患者の精神が落ち着いたと報告しています。
しかし、6人中1人が死んだという事実は重く、ブルクハルトに続こうとする機運は起こりませんでした。
しかし20世紀になり、進化論の受け入れが進むと同時に、チンパンジーなど人間に近い動物に対る実験が盛んに行われるようになると状況は変わってきました。
1935年、イェール大学の研究者たちはチンパンジーの前頭葉を切断した結果を学会に発表します。
手術前、ベッキーと名付けられたメスのチンパンジーは、研究者が与えた課題に対して、実行を拒否したり、失敗してかんしゃくを起こすといった行動をみせていました。
そこでイェール大学の研究者たちはベッキーの前頭葉を脳のその他の部分から切り離してみることにしました。
すると驚いたことにベッキーの性格は一転し、研究者の支持に対して協力的にふるまうようになったのです。
この実験に興味をもったのが、政治家であり医者でもあったモニスでした。
モニスはチンパンジーに起きた変化を人間で再現することができれば当時、治療方法がなかった精神病を治療できると考えます。
モニスは自らの説を確かめるために、うつ・不安・妄想・幻覚・不眠に苦しむ63歳の女性患者の頭蓋骨を切開してエタノール(純度100%に近いモノ)を流し込み、前頭葉につながる神経を全て破壊しました。
するとチンパンジーの場合と同様に、女性の精神が安定し、妄想的な特徴も失われていきました。
結果に自信を得たモニスは1935年の終わりにかけて19人に対して手術を行いました。
また手術方法も改善され、アルコールではなく、ワイヤーを用いたものに変化します。
ロイコトームと命名された新たな手術器具は、ワイヤーを用いて前頭葉とその他の部位を接続している神経を、物理的に切り離すことが可能でした。
モニスはこの方法に/>して「ロイコトミー」と名をつけます。
ただ手術によって精神的な落ち着きを得た場合ても、尿や糞便を自力で行えなくなったり、意欲や意思がなくなったり、異常な空腹を覚えるといった症状が現れました。
前頭葉は人格・感情・意思・思考を担当する脳の領域であり、その部分を脳から切り離してしまえば、人間的な要素に劇的な影響が出るからです。
それにもかかわらず、前頭葉に対する手術は世界中の医師によって行われるようになりました。
そして1937年になるとフリーマンによってワイヤーの代りに、回転するナイフで前頭葉を切り離す新たな技術を開発されます。
この前頭葉分離技術に対してはじめて「ロボトミー」と名がつけられました。
フリーマンは精神病は同じ考えを何度も繰り返すことで発症すると考えており、前頭葉を分離することで悪循環を神経線維ごと断ち切れると考えていたようです。
さらに1940年代になると、頭蓋骨を切開する方法から、眼窩(目の奥)の骨に穴をあけ、そこに細いメスを刺し込んで前頭葉を分離する、跡が目立ちにくい方法が開発され、その後に続くロボトミー手術の標準的方法となりました。
1949年にロボトミーの生みの親であるモニスにノーベル生理学賞・医学賞が授与されるとロボトミーはより一層、盛んに行われるようになります。
しかしノーベル賞のブランドを得ても、やっていることは前頭葉の切り離しであることは変りません。
そのためロボトミー手術を受けた人々の多くで、人格・感情・意思;思考が失われ、時には介護なしには生きていけなくなるケースもみられました。
1937年の段階でも既に、多くの医師がロボトミーの危険性に気付いていたと、記録が示しています。
しかしロボトミー手術は続けられました。
それはロボトミー手術が行われた目的の多くが「病院の都合」にあったからです。
■ ロボトミーは一部では「お金」のために行われていた
精神病院など、患者を管理する側にとっては、攻撃的で世話がかかる患者に対処するには警護員を雇うなど、多くのコストがかかりました。
一方、ロボトミーによって患者の攻撃的な人格が消失したり植物状態になれば、少ない人員でも管理がしやすかったからです。
そのためアメリカでは1970年代までに2万人以上がロボトミー手術を受けさせられました。
ですがなかには、患者の同意をとらずに手術が行われた例や、囚人に対して命令に従いやすくするために行われたと疑われるケースも存在しました。
患者の健康から病院の都合に目的が移動したことで、ロボトミーの乱用がはじまったのです。
日本においてもロボトミー手術が取り入れられていた時期もあります。
全国で523件のロボトミー手術を行った廣瀬貞雄氏の記録によれば、
優れた効果があったものは8%
良好な効果があったものは11%
軽度の改善があったものは27%
僅かな改善があったものは27%
全く効果がなかったものは20%
悪化が4%
死亡が3%
とのこと。
廣瀬貞雄氏はロボトミー手術については、次のように述べています。
「ロボトミーの本質が人格の変化にあるならば人道的問題がある。
しかし手術から時間を置いた印象では、極端な病状の患者や爆発的(極めて危険)な患者に対しては、変化後の人格にかんして本人がそれほど問題にしていないことからも、人道的に許されてもいいと思う」
ただ患者が気にしていないとの意見については、疑問が残ります。
日本においても、ロボトミー手術の後に、創造性が奪われたとして患者が執刀医とその妻を殺害した「ロボトミー殺人事件」が有名です。
またロボトミーの生みの親として1949年にノーベル生理学賞・医学賞を受賞したモニス氏も、65歳のときに自らの患者に銃撃を受けて半身不随になり、その後の人生を障がい者として過ごしました。
現在、前頭葉全体を対象にするようなロボトミー手術は、非人道的として行われていません。
しかし当時の医学水準からすれば、ロボトミー手術にノーベル賞が与えられたのは、わからなくもありません。
当時の精神病は、日本ならば「狐憑き」西洋であれば「悪魔付」きなどの言葉に代表されるように、人間に手が出せない領域だと考えられていました。
ですがロボトミーの開発によって、精神病は神や悪魔の領域から人間が操作し得る「医学」に変化し、人々の意識は大きく変わったのです。
ロボトミー手術が現在だけでなく当時であっても人道的に問題があると認識されていたのは事実です。
また医学的効果意外に、患者を管理する病院の意向がロボトミー手術を押し広めたのも間違いないでしょう。
ただ、一面的にロボトミーを全否定していては、当時の人々がなぜ重大な副作用を無視してまで、ロボトミー手術に熱狂したのかは理解できないままです。
誰もが称賛するノーベル賞をとった素晴らしい技術が、重大なリスクをかかえているかもしれない可能性は、現代にも当てはまるからです。
ロボトミーへの熱狂的支持から熱を奪った冷静さを学んでいなければ、人類は同じ過ちを繰り返す確率は格段に高くなるでしょう。
一方で、近年、脳に対して影響を与えて精神状態を改善するというアイディアは再び見直されるようになってきました。
もちろん、過去のロボトミーのような人格を破壊する手術ではありません。
てんかんなど命にかわる激しい脳の症状に対して、脳に埋め込んだ電極から電気刺激を行うことで、症状を抑制するのです。
また最新の研究では、うつ病患者の脳で快楽と喜びを発生させるポイントに電極を刺し込み、うつ病の兆候を察知する制御チップによって自動的に電気刺激することで、患者のうつ病をほぼ完璧に抑え込むことに成功したと報告されています。
-------(引用ここまで)---------------------------------------
古い映画ですが、ミロス・フォアマン監督の名作「カッコーの巣の上で」で、
ジャック・ニコルソンが演じた主人公マクマーフィーを思い出します。
ロボトミーを新型コロナワクチンに置き換えれば、現在起きていることそのものです。
支配者にとっては、反対・反抗者は邪魔であり、何とか従順な羊にしてしまいたい。
科学技術が進歩した現在では、ロボトミーのような手のかかる手術は不要です。
最新のナノテクノロジーを利用(悪用)したワクチンを打てば、人間の行動を
自由に遠隔操作できるのです。
われわれは、知らないうちにロボトミー手術と同じことをされているのです。
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