http://www.asyura2.com/21/idletalk42/msg/207.html
Tweet |
2022年12月25日 07時44分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/221981?rct=editorial
モンシロチョウはなぜ、いつも同じぐらいの数が飛び交い、大量発生することがないのでしょう。不思議じゃありませんか。
津市美杉町の高原で自然農園を営む村上真平さん(63)に、そう問われました。
チョウは一度に百個ぐらい卵を産むそうです。幼虫(アオムシ)は畑のキャベツを食べ、一カ月ほどで羽化します。半分がメスだとして、この五十匹がまた卵を産んでということを繰り返してネズミ算式に増えると、半年もすれば計百五十億匹を超えるチョウが高原一帯を舞うはずです。
しかし、自然界ではそうはなっていません。なぜなら、寿命はもちろんありますが、それだけではなく、天敵のクモなどが適量のアオムシを食べてくれるからだと村上さんは言います。
◆生態系バランス崩さぬ農
村上さんの畑には、農薬も、化学肥料も、機械もありません。農薬や化学肥料を使えばアオムシだけでなく、クモも死に、土中の微生物も減ってしまう。だから村上さんはアオムシを見つけてもほうっておきます。食物連鎖という生態系のバランスがきちんと保たれていれば、アオムシにかじられてもキャベツ全体の5%ほど。出荷になんの問題もないと言います。
村上さんは福島県の農家に生まれました。有機農法の普及で知られる愛農学園農業高校(三重県伊賀市)で学んだ後、インドやバングラデシュ、タイで十年余、有機農法を指導しました。現在は母校に近い津市美杉町の高原で、季節に合わせてナスやキュウリ、スイカなど五十種類ほどの野菜や果物を育て、生活の糧としています。
村上さんのような自然と調和した農法をアグロエコロジーと呼びます。アグリカルチャー(農業)とエコロジー(生態学)を組み合わせた造語で、有機農業や、家族で営むような小規模農業に加え、地産地消の暮らし、循環型の経済システムなども指します。
◆国連「家族農業の10年」
日本ではあまり知られていませんが、国連は二〇一九〜二八年を「家族農業の十年」と定めています。持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためにはアグロエコロジーの担い手である小規模な農業、林業、漁業、畜産こそがあるべき姿だと言うのです。
なにやら奇異にも聞こえませんか。日本では、家族農業は非効率だ、いずれなくなると言われてきたのですから。わが国は戦後、集約化や法人化、モノカルチャー(単一栽培)化など、農業の「工業化」を推し進めてきました。米国流と言いましょうか、農薬や化学肥料、大型機械を使い、広大な土地で単一の作物を大量生産することが世界の食料不足を解決する道だと信じられてきたのです。
しかし、工業化は生き物たちの多様性を奪い、土地を枯らし、病害虫の大量発生や環境汚染をもたらしたり、気候変動にも脆弱(ぜいじゃく)なことが分かってきました。時代遅れと目されてきた「家族農業」がいまや、持続可能なアグロエコロジーの代表例として、国連食糧農業機関(FAO)や国連貿易開発会議(UNCTAD)が工業型からの転換を促しているのです。
FAOの元客員研究員である関根佳恵・愛知学院大教授(農業経済学)は、手間暇をかけて多品種を育てる家族農業は、土地あたりの生産総量やエネルギー効率の比較で、大規模農業を上回ると指摘します。加えて林業や漁業、畜産も含めた家族経営こそ、地域の雇用や経済、社会を支え、治山治水や景観維持、文化の継承にも貢献していると言います。
紹介が遅れましたが、村上さんは、国連の「家族農業の十年」に賛同する団体や研究者らでつくる「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」の代表者です。そして、東日本大震災で故郷を奪われた一人でもあります。
津市美杉町に来る前の話です。タイから帰国した〇二年、実家に近い福島県飯舘村の荒れ地に入植しました。十年近くをかけ、自然農園や農家レストラン、バンガローやパン工房を整え、理想の「エコビレッジ」は完成しつつありました。さあ、これからという一一年春のことです。福島第一原発事故で全てを失いました。
母校を頼って避難し、津市美杉町の高原で一・六ヘクタールの耕作放棄地を借りました。自力で切り開き、妻と四人の子ども、「自然を収奪しない農業」を学ぼうとする若者たちと、再び、エコビレッジづくりに挑んでいます。そのたくましさ、強さに、アグロエコロジーの光を見る気がします。
▲上へ ★阿修羅♪ > 雑談・Story42掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > 雑談・Story42掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。