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「STOP! インボイス」署名18万筆を提出 10月施行でどうなるか? 知れば知るほど影響は深刻 各業界の代表が語る現実
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/25901
2023年2月26日 長周新聞
「STOP!インボイス」の業界横断記者会見(13日、東京)
今年10月からインボイス制度が導入される。フリーランスや個人事業主など、多くの業種の小規模零細事業者から消費税をとりたてる同制度の導入準備が進行するなか、中止を求める声が広がり続けている。その中心となって署名運動などの行動を展開してきた「インボイス制度を考えるフリーランスの会(通称STOP! インボイス)」は2月13日、18万162人分のインボイスの中止を求める署名を財務省に手渡すとともに、インボイス制度見直しを求める業界横断記者会見を開いた。フリー編集者や漫画家たちが、さまざまな職業のイラストを描いて18万162人の声を表現した箱に、署名を納めたUSBを入れて提出。記者会見では弁護士や経営士、自営業者、フリーランス、文化・芸術業界などから6人が登壇し、それぞれの立場から問題点を訴えた。
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「STOP!インボイス」発起人の小泉なつみ氏は、政治や社会活動から縁遠い、フリーランスの編集者・ライターとして活動していたが、インボイス制度を知り、約1年前の2021年12月にオンライン署名「《#STOPインボイス》多様な働き方とカルチャーを衰退させるインボイス制度に抗議します」を立ち上げた。開始から1週間で約3万筆が集まった署名は、今月13日までに約6倍の18万162筆に達し、現在も増え続けている。
反対世論が広がるなか、政府は昨年11月30日に「激変緩和措置」を発表。これを受けて発した声明「『激変緩和措置』でなくインボイス制度の『中止』を求めます」(昨年12月5日)には6081人の個人、30の団体から賛同が寄せられている。
このなかで、声優有志でつくる「VOICTION(ボイクション)」や「インボイス制度の中止を求める税理士の会」「小規模事業者に寄り添いインボイス制度に反対する士業の会」「アニメ業界の未来を考える会」「インボイス制度を考える演劇人の会」「インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会」など、さまざまな有志の会が立ち上がり、その声は大きく広がっている。
記者会見で運動の経緯について話した小泉氏は、賛同や行動が広がっていることについて、「知れば行動せざるを得ないほど制度が危険なのだと思う。フリーランスやクリエイターだけでなく、経営者、会社員など立場や業種をこえて危機感を持った人々が声を上げ始めている」とのべ、自身も「制度を知れば知るほど、この国に生きるすべての人に関係する制度だと認識するに至った」と話した。1年間でのべ約100人の国会議員に陳情をおこない、制度を推進する立場の与党議員ですら諸手をあげて賛成する議員はいないことがわかったという。
小泉なつみ氏
小泉氏は、政府が出した「激変緩和措置」について、制度の問題の根幹である「民間(小規模な免税事業者と課税事業者の間)で税負担を押しつけ合うデスゲーム構造」を何一つ解決していないと指摘。売上300万円のデザイナーがインボイス発行事業者になった場合、14万円の消費税が発生し、社会保険料と消費税を合わせると手元に残るのは90万円という試算で考えた場合、激変緩和措置で当面納税額が軽減されても、もともと0円だったものが6万円になり、負担が重くなることに変わりないとのべた。
小泉氏の実家は野菜の卸売業を経営しており、父親は仕入れ先や外注の配送事業者にインボイスを求めない方針だという。消費税負担が増加する分は、野菜の価格に転嫁せざるを得ない。値上げしてこれまで通りレストランが購入してくれるのか? 継続した場合でもレストランがメニューを値上げせざるを得なくなって消費者の足が遠のくのではないか? といった不安が常につきまとう。「たとえ一時的に助かったとしても、自分を助けてくれた相手が負担に耐えきれず倒れてしまえば、自分も早晩同じ目にあう。制度が始まればいつか来るかもしれない負担に怯え続けなければならない」と語った。
また、免税事業者の排除という根本的な問題も解消されないことにふれた。「インボイスが発行できないと取引しない」と理由を説明する事業者はおらず、ある日突然仕事の発注がなくなるか、「ご縁がなかった」といわれて終わり。ライターなど免税事業者はなぜ仕事を切られたのか知るすべもない実態を明らかにし、「公正取引委員会がどう取り締まるのか理解に苦しむ。全国に相談拠点は数十カ所しかないそうだ。インボイスに関係する事業者は1000万社ともいわれているが、私たちの不安やトラブルを受け止める体制が整っているとは思えない」とのべた。個人事業主の本名が国税庁のホームページから一括ダウンロードできる問題も解決されないままであり、制度の中止を訴えた。
続いて「STOP!インボイス」メンバーでライターの阿部伸氏が今後の活動を報告した。現在、「お手紙大作戦」として、地方議会に陳情書を送る準備を進めており、近く第一弾として47都道府県の議会と20の政令都市の議会に「国に対し、適格請求書等保存方式(インボイス制度)の延期・見直しを求める陳情書」を送付する予定だという。
これまでに分かっているだけで127の地方議会でインボイスの延期や中止を求める意見書(シルバー人材センターに関するものを除く)が採択されており、全会一致で採択した議会や、自民・公明の与党議員から提出された地方議会もあることを明らかにし、「インボイスは国政にかかわる問題といわれるが、実際は地域社会に影響を及ぼすもの。陳情書が春の統一地方選の争点となるきっかけに結びつけばいいと思う」とのべた。
小泉氏は報告の最後に、大阪で秤屋がインボイス対応をできず廃業を決めたり、2人の子どもを持つシングルマザーのフリーランスがすでに仕事を失ったこと、免税事業者と取引のある会社員が取引先にインボイス登録の依頼をすることが苦しいと吐露していたことなどを話し、「実施前から傷ついている人があまりに多い。生活と仕事と生きがいのために、われわれは一歩も引き下がれないと思っている」とのべ、慌てて登録申請せず、まずは制度を知ることを呼びかけた。
この後、6人が登壇し、各業界の視点からインボイスの問題を訴えた。以下、発言の要旨を紹介する。
高所得者の課税強化し、税制面から格差是正を
公正な税制を求める市民連絡会共同代表 宇都宮健児
宇都宮健児氏
零細業者である免税事業者が課税業者となれば負担が増えて収入が激減する。課税事業者にならなければ仕事が減ってしまう大変矛盾した立場に置かれる。そうした業者の多くは弱い立場にある。コロナ禍や物価高でフリーランスや個人事業者は困難を抱えている人が多く、インボイスはそれに追い打ちをかける制度だ。
岸田首相は総裁選で、新自由主義が広げた貧困や格差を是正するために新しい資本主義を提案し、金融所得課税の見直しにも言及した。株譲渡益や配当などの金融所得に関しては所得税が15%、住民税が5%、計20%と税率が低く抑えられている。高額所得者の多くは働いた収入よりも株の配当や譲渡益の収入が多くなっているので、高額所得者に有利な税制だ。今回の税制大綱でようやくこの問題にふれたが、所得が30億円をこえる超富裕層に対してだけ、若干の税率を上乗せするのみだ。インボイス制度で増える税収は約2480億円といわれているが、金融所得課税を見直し、税率を10%上げると約3兆円の増収になるという試算もある。
適格請求書でしか仕入税額控除が認められないインボイス制度は、帳簿方式など、それ以外の税額控除の方法を否認することになり、仕入税額控除の権利を奪うことになる。これは税制改革法一〇条二項に違反する、法律的にも問題のある制度だと考えている。
コロナ禍や物価高で生活に困っている人が多くいるなかで、ますます多くの国民に困難な生活を強いる制度だ。税制の面からも格差の是正をおこなう必要があると考えている。(弁護士)
大企業の効率化の裏に中小企業の犠牲
経営士 堺 剛
堺 剛氏
中小企業を中心にパートタイムで経理部長を務めている。
今の日本では大きな誤解が生じている。中小企業の利益率が悪いのは努力が足りないからという風潮がインターネットなどでも見られるが、現場で見ていて必ずしもそうでないと感じている。2月7日の日経新聞にもあったが、エネルギー代をはじめさまざまな物が値上がりし、コストが増加しているなかで、売値に反映できない、交渉のテーブルにすら乗っていない中小企業が多いことが原因であり、買い手が強すぎることが一番の問題だと思っている。買い手が交渉に応じ、値上げしなければ中小企業の利益率向上は難しく、給料も上がらない。岸田政権が掲げている賃上げ政策も、大企業や官公庁が中小企業から公正な値段で買わなければ絵に描いた餅に終わる。
そのような背景で、中小企業は利益を生まない管理部門にコストを割けない傾向にあり、私のような外部やパートタイムの者が経理を助けている現状がある。中小企業の管理部門はだいたいワンオペで、経理、総務、労務などを少人数で回していることが多いため、守備範囲が広くスキルが高い人が多いと感じる。
そんななかでインボイス導入が経理に与える影響についてお話する。
大企業が進めている業務効率化は中小企業が負っている現実がある。各大企業の専用伝票や独自システムで発注することなどが求められるが、すべての企業が同じではないため、企業ごとに対応するのに時間が割かれる。大企業の業務効率化成功の裏には中小企業の多大な犠牲があることを理解していただきたい。
それが、インボイス制度でさらに業務負担が増す。インボイス番号の確認など、国税庁が示す請求書にあったものかどうかを検索する時間が必要だ。仕入れ先が100社、確認する時間を1社3分と仮定すると、100社で300分。約5時間の付加価値を生まない仕事が押しつけられる。
さらに電子帳簿保存法で、PDFで受けとったものを請求日、社名、金額など、国税庁が指定したファイル名に書き換えて所定の場所に保存する必要が生じている。こちらもファイル名を書き換える時間を1社3分と仮定して計300分。2つあわせて10時間もの付加価値を生まない業務が発生する。国は中小企業に「付加価値を生む努力をしなさい」といいながら、付加価値を生まない業務を押しつけている。
消費税の費目についても細かい税率があり、経理業務はどんどん煩雑になっていく。実際に税理士から「簡易課税であれば簡単なのでやるが、本則は手間がかかるので値上げします」という話も出ている。税務署員のなかにも「手間だけだから深掘りするつもりはない」という声もある。だれにとっても得にならない制度だ。
そのなかで経理担当者が考えることは「個人事業主への発注を控えるよう社内にお願いする」ことだ。この動きが実際に出てきている。大企業になればなるほど、その動きが出てくると思う。岸田政府は「フリーランス活用」や「スタートアップ企業が生まれる環境を」といっているが、逆行する流れをつくっている気がしてならない。インボイス制度の中止を強く強く願う。
農家支えるために起業負担求めたくないが…
群馬・草木堂野菜店代表 甲田崇恭
甲田崇恭氏
当店は群馬県の小規模農家、年間約80軒、常時約40軒から直接野菜を仕入れ、自社便で東京まで毎日運んでいる。夏場は朝採りが昼頃に買えるということで喜ばれている。食べる物をつくる人が増えるような、地に足をつけた事業がしたいと思い、2009年に開業してもうすぐ14年になる。
インボイス制度について税理士から対策を考えるよういわれたが、当店か農家が払うかしかなく困っている。少なくとも3年間は当店で負担し、農家にインボイスを求めないつもりだ。農家の事務負担を考えてのことでもあるが、うちも農家が値上げするときは10円単位なので、それよりはいいからだ。
おそらくインボイスに対応するのは80軒のうち8軒程度だ。昨年度のベースで考えると2349万円が免税事業者からの仕入になると試算している。集荷効率の意味からもまとめて注文しているため、1万円以上の仕入が多く、激変緩和措置も適用されない。年間30万円程度、負担が増加すると見込んでいる。そのためこの3年間が勝負になり、その後成長していなければ廃業も考えなければならなくなる。しかし、販売を当店に依存している農家も多く、やめたくてもやめられない実情もある。
昨年の営業利益で3万円の赤字。経費も税理士に心配されるほど切り詰めていて、私の手取りもここ15年で最高15万円ほど。それでも昔よりよくなっている状況だ。
取引する農家は高齢化が進んでいて、現実問題として電話注文、FAX注文が今も現役だ。年配の農家が経理をDX化したり、事務負担が増えるインボイス登録することは現実的ではないと思っている。また、物価高のなかでも生鮮食料品に関してはなかなか値段が上がらない現状がある。当店は農家の生活を支える目的でスタートしたので、農家の言い値で仕入しており、野菜が増えて価格が下がる夏場などは売れ残って赤字が続くことも多い。
インボイス制度の廃止を望む。消費税は価格の一部であるはずなのに、輸出戻し税があることも理解できない。租税3原則に「簡易の原則」があるにもかかわらず、これほど難解になることも理解できない。今この制度を見直し、のちに「政治家や財務省のみなさんの決断が、閉塞した世の中を打破する転換点だった」となるような勇気ある決断をしていただきたい。
コロナの次はインボイス。文化・芸術を潰すな!
ライフハウス・ロフトプロジェクト代表 加藤 梅造
加藤 梅造氏
議員会館には3年前にコロナが問題になったとき、ライブハウス業界、エンタメ業界で陳情に来ていた。コロナ禍でエンタメ業界は全体で8割の収入減といわれ、飲食や旅行業界よりも被害が甚大だった。ライブハウスは休業規制が長く、解除後も時短や入場規制も長くあり、厳しい期間が続いてきた。多くの店が廃業したが、みんな借金してやりくりし、なんとか生き延びてきた。ようやく規制が緩和され、これからだというところで新たにインボイスという問題が出てきた。
当初、あまり関係ないと思っていたが、勉強すると適格請求書がなければ仕入税額控除ができず会社側の負担が増えるという。ライブハウスはフリーランスに支えられている業界だ。出演するアーティスト、裏方の音響、照明、舞台スタッフ、カメラマン、メイクなどから毎月請求書を受けとっており、すべてインボイス対応するのは現実的に難しい。自分で経理をしている人が多く、今でも請求書のやりとりは大変だ。ライブハウスもほとんど中小企業なので経理負担は大きく、さらに大変になると考えただけで目眩がする。
多くのフリーランスは免税事業者のままだと思う。だが、それでライブハウス側は出演させないとか、カメラマンに写真はいらないとはいわない。私たちの仕事の性質上、高いか安いかではなく、作品が優れているかどうかが価値の判断基準だ。それによって不利益を被る人が出てくるとは、とんでもない制度だと、怒りがふつふつと湧いてくる。
文化・芸術分野はフリーランスが多く、だからこそおもしろい表現や未来を担うアーティストが生まれてくる。それをつぶすような制度は間違っている。コロナ禍で打撃を受けた文化・芸術界が一緒に声を上げて政府に対して要請したとき、この国は文化・芸術をあまり重く見ていない、商売にしか見ていないと感じた。文化を育てようという気があるのか? と。 インボイス制度も同じように感じる。日本は文化・芸術面で世界から遅れをとっている。このままではさらに遅れをとることになるのではないかと思う。
日本の映像文化の優れた人材を流出させてよいか
映像クリエイター ブンサダカ
ブンサダカ氏
CGがメインの映像クリエイターで、BOØWYのジャケットなどを手がけている。アシスタントや学生アルバイトを雇いながら、フリーランスとして仕事をしている。
昔はメーカーや代理店から直接依頼があったが、今は広告代理店からプロダクションを経由して仕事が来る。アニメ映画や実写映画もよくつくるが、2019年の「映画制作現場実態調査」によると、業界の76・2%がフリーランスだ。「契約社員」といわれる人もいるが、どちらかというとサッカー選手や野球選手に近い契約形態が多く、国民健康保険だったりするのが現状だ。
私個人としてはすでに消費税を払う課税事業者で、売上は多い。しかし、500万円のCMを500万円かけてつくるような感じなので利益は非常に少ない。ただ、アニメや映画をすべてビジネスとして制作しているかというと、必ずしもそうではなく、作品としてつくるケースが多い。文化として捉えている側面がある。
しかし、インボイス制度が始まった場合、個人からインボイス番号をもらえなければ私の負担になる。すでに赤字すれすれで経営しており、コロナ禍でオリンピックの仕事を失うなどして借金が数千万円ある状態だ。インボイス制度が始まると負担が増えすぎると感じる。
声優やフリーのクリエイター、デザイナーなどには安い金額で我慢してもらっている。私たちの支えになるのは、その仕事にかかわれたことの名誉や、それが次の仕事につながることだ。「食えていれば、いい作品をつくればいいじゃないか」という旗の下に仕事をしていたりする。音楽や映像も、もうけることがすべてでやっていないと思う。
ただ、コストは高い。私の場合、仕事があってもなくても、サーバー代やハード代、電気通信費などで毎月50万円ほどのコストが発生する。電気通信費は8万円ほどだったのが、今15万円ほどに上がっている。聞きしに勝る労働環境で、月の労働時間が600時間をこえることもしばしば。賃金五万円という新人もいる。そのなかで私たちは個人事業税五%をすでに払っている。
「消費税をもらっているんだから払え」とよくいわれるが、私たちは消費税導入当時に、消費税分の値下げを強要され、消費税が上がるたびに値下げを要求された現実がある。だいたいCM1本を800万円でつくっていたのが最近は30万円ほど。20年間で賃金は26分の1に下がった。これは衣料品や食料品も同じだ。私たちにはまだ海外に行くという選択肢がある。私たちは半ば脅迫されながら文化を守る仕事をしていたが、このままインボイスが施行されるなら、クルーを連れて海外に行くかもしれない。日本の映像文化は海外で認められており、すでに好条件で海外のスタジオに多くの人材が流出している。日本のやり方は一番嫌いだが、日本の文化は世界で一番好き。こういう人材を逃していいのか?
この状態でインボイスを続けるなら、官僚も政府も日本の文化が大嫌いのようなので、僕らは日本を捨てる。人材の流出はさらに深刻になるだろう。
弱い立場のフリーランスを沈めるような行為
ヨガインストラクター 塙 律子
塙 律子氏
ヨガ、ピラティスの講師をしている。個人でも生徒を持っているが、フィットネスクラブやヨガスタジオと業務委託契約を結んでの仕事が基本だ。一日中一つのクラブにいられればいいが、1、2コマしか与えられないので、1コマ終わると次のクラブに移動するという働き方をしている。
契約先はいくつかあるが、一部から「インボイス登録しない場合は報酬から減額する」という通知が来ている。昨年の収入は100万円に満たない。減額されるとあり得ないほど収入が減る。しかし、インボイス登録して事務に時間がかかると、身一つで稼いでいるので働けなくなり、収入が減ってしまう。2人子どもを育てていて共働き。この状況でインボイス制度をするのか? と思う。「辞めれば?」といわれるが、フィットネスクラブの会員は全国で420万人、ヨガ人口は500万人といわれており、私たちの仕事は需要があるはずだ。
2020年の緊急事態宣言明けに、契約先の一つであるスタジオヨギーからレッスン数をゼロにされ、収入がほとんどなかった。眠れない、食べられない状況からなんとか這い上がり、2022年に新しい契約先と契約して、ようやく歩き出したところだ。インボイス制度は浮き輪に乗ってようやく泳ぎ出した私を沈めるような行為だと思う。
スタジオヨギーでは毎年有料の認定講習を受けなければならないうえ、昨年、今年にかけては全員、報酬の2割減をいい渡されている。「2割減を受け入れるか、辞めるか」しか私たちに選択肢はない。ヨガインストラクターはオーディションでフィットネスクラブなどに入っている。合格率は1割、2割の狭き門だ。簡単に「他のところに行く」選択はできない。
フリーランスは対等な立場で交渉ができない。「フリーランスは自由で高級取り」という時代はとっくに終わっており、その考えを見直す必要がある。昨年5月に仲間とフリーランスユニオンを立ち上げて、より状況が見えてきた。パワハラや一方的な契約の解除、不利益変更など、つねに契約先に左右され、収入が高いわけでもない。そのうえでさらにインボイスなのか? という状況だ。
私たちを守る法律もない。病気や障害を持っているためにフリーランスという働き方を選んだ人も多くいる。私たちのような働き方をしている仲間がいることを知ってほしい。
インボイス制度で生活を逼迫させないでほしいと切に願う。
(フリーランスユニオン共同代表、ヨギーインストラクターユニオン執行委員長)
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